05:名前で呼んで!
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「酒場の町」は、夜明けの頃には静けさに包まれていた。
そんな中、人知れず、日の出とともにログも溜まり、ビックトップ号の帆が張られる。
「いざ眠れる宝を目指し、ハデに出航だァ―――っ!!!」
バギーの掛け声とともに船は前進する。
目的地は、海図が指し示す場所だ。
あくまで可能性だが、宝が眠っているかもしれない。
クルー達は、宝の可能性に胸をはせる者や、寝不足で眠そうな者もいる。
前者であるルビーは、甲板でバギーとアルビダと一緒に海図を囲んで見下ろしていた。
「これが宝の地図?」
「そ。他の海賊が持ってたのをあたしが奪ってきた!」
腕を組んで胸を張って言うルビーだが、アルビダは怪訝な目をしている。
「宝の地図ってのはあまりアテにならないんだよ。この“グランドライン”においてはね。ニセモノの地図だってよくあるってのに…。いや、地図が存在してるだけで、すでに盗まれてる可能性だって…」
「アルビダ、夢のねェこと言ってんじゃねーよ」
「けどさ…」
「見習いを見ろ」
バギーはあごで指し、アルビダはそちらに目を向ける。
ルビーは欄干に腰掛けて遠くの空を眺めていた。
その周りだけ冷たい冬風が吹いているようだ。
「ニセモノ…。あたしのお宝への情熱が…ニセモノ…」
空気がとても重い。
「か…、可能性の話だよ。あるといいね、お宝……」
見兼ねたアルビダがさり気なくフォローすると、ルビーが纏った空気が少しだけ軽くなった。
「そう!? あたし、最悪なニセモノつかまされたわけじゃない!?」
「はいはいはい」
詰め寄るルビーをなだめるアルビダ。
本当にニセモノだったら、きっと船もろとも重い空気に包まれるだろう。
「バギー、ここは気紛れな海だ。海図だけで探せるのかい?」
「そこで見習いが奪ってきた、エターナルポースだ。行く先は『ドランクリゾート』から近い無人島―――『ウーヴァ島』。地図で見ると、途切れた赤線の先にその島がある。つまり…」
「その島を目指していけば、途中で宝のあるポイントに到達するかも!?」
ルビーが言葉を紡ぐと、バギーは決めポーズのように指をさした。
「その通り!!“グランドライン”の宝はすべておれ様のもんじゃ―――っ!!!」
「もんじゃ―――っ!!」
2人は腕を組み合い、「おっ宝♪ おっ宝♪」とくるりくるりと回りながら踊った。
まだ手に入れてないというのに、宴が始まりそうである。
「ちょっと待ちな。ちゃんとその赤線通りに行けるとは限らないだろう? いい加減に進んでも宝には…」
現実的な問題を言いかけている途中で、すっかり乗り気のルビーはその場でサンダルを脱いで欄干に飛び乗り、右手を挙げた。
「っってことで、海賊見習いルビー、行ってきます!!」
「よーし行って来い!!」
「聞きなっ!! 頭の中まで宴会コンビ!!」
つっこむアルビダだったが、ルビーは欄干から飛び降り、水柱を上げた。
「“赤鱗(グルナ)”!!」
両脚はたちまち人魚の尾へと変化し、泳ぎやすくなる。
船からはバギーの他に、ルビーファンのクルーたちも集まって見守っている。
エターナルポースを頼りに船は進み、春風が吹いたかと思えば雪が降り始めてきた。
一度海面から出たルビーは、空から降ってくる粉雪を仰ぐ。
「雪だ…。この辺も天候が気紛れすぎる…」
海も先程より冷たくなっている。
「見習いー、一度上がったらどうだ?」
「あまり長く浸かってると凍死すんぞー!」
「見てるこっちが寒い!」
クルー達が声をかけてくれるが、はっとしたルビーは手を振って言い返す。
「嵐じゃない限りは大丈夫! あたし、もうちょっと深くまで潜ってみる!」
再び海面を潜り、真っ暗な中でも目を凝らし、宝らしきものを探し始めた。
1時間を過ぎると、次の天候は快晴。
気温は真夏の暑さだ。
毛皮で覆われているリッチーはアイスクリームを思い浮かべながら、モージにホースで水をかけてもらっていた。
甲板の椅子に腰かけるバギーは、『UVA』と刻まれたエターナルポースの指針に注目していた。
「宝に関して具体的なことは何もわかってないってのに、あんた達は…」
もうどうにでもすればいい、と投げ出すように、アルビダは欄干に腰かけてぼやいた。
依然、×印の正体は不明のままだ。
これで見つからなければ、一番ショックを受けるのは、嬉々として海図とエターナルポースを持ってきたルビーだろう。
「なーに、探してみねェことには何も始まんねーからな。ああいう活気盛んなところを見ると、昔を思い出す…。懐かしいぜ…。そう…、海図を独り占めして、悪魔の実を奪ってとんずらしようとしたらあいつのせいで……」
回想中、徐々にバギーの頭が項垂れていく。
「……落ち込んでんのかい?」
「ハデに腹が立ってきた」
.