04:楽しく飲まれるはずだった
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一方、こちらはバギー達が宿泊している宿から遠く離れた場所にある、酒場。
奥のテーブル席で食事をしていた男は、ビーフを咀嚼をしながら片手の新聞を読み、舌打ちした。
記事の見出しには、“アクターズ現る!! 軍艦を襲撃!!”と、海軍の軍艦が撃沈された写真が掲載されていた。
新聞の日付は一昨日だ。
男は眉をひそめ、汚物を拾ってしまったかのように新聞を床に投げ捨てる。
「これで何十件目だ。こいつら…、子牛にのりやがって!!」
「船長、「調子」です」
その傍に立っていた別の男がそう訂正して、ぴんとした背筋を曲げて床に捨てられた新聞を拾い上げた。
六角形のサングラスをかけ、ドクロの蝶ネクタイをつけた、バーテンダーのような格好をした細長い身体の年配の男だ。
六角形のサングラス越しから記事に目を通す。
「“アクターズ”が起こした事件は、これで…」
「ちょうど、25件目だ。……今年でな。サポーレ、何度も言ってるが、その名を口に出すな。さらにムラムラする! ムラムラするとぉ! 腹が減る! 追加だ! 同じの! あとオムライスも!」
「船長、「イライラ」です」
赤いソースで縁まで汚れた皿を差し出され、サポーレと呼ばれた男は嫌な顔ひとつせず、忠実な態度で皿を受け取り、追加の料理を注文しに行った。
そこへちょうど、酒場の出入口から勢いよく数人の男達が駆け込んでくる。
「船長!!」
「パッローネ船長―――っ!!」
どたどたと木造の床を鳴らし、男達は真っ直ぐに奥の席に座る男の元へ駆けつけ、床に手をついた。
すでに謝罪の態度だ。
加えて男達は見るからに満身創痍であり、嫌な予感を覚えたパッローネ船長と呼ばれた男は、手下達をたしなめる。
「おれはここにいるから騒ぐな!」
そこへちょうど、サポーレが追加料理を持ってきてテーブルに置いた。
パッローネは懐から取り出したビンの中身を、ジュージューと音を立てる牛肉にどっぷりとかける。
ビンの中身はイチゴジャムだ。
肉といちごの混ざった匂いに包まれながら、手下のひとりが経緯を話し始めた。
「…なんだと!!?」
パッローネは血相を変え、イチゴジャムにまみれた牛肉にナイフの先を突き立てた。
「海図を盗まれたァ!!?」
口から食べかすを飛ばしながら怒号を上げる。
「うっ…」
「も、申し訳ありません…。パッローネ船長…」
膝をついて頭を下げているのは、ルビーに絡んで痛い目をみた3人組の男達だ。
「バカみてェに強い女に奪われてしまい…」
「バカはてめェらだ!!!」
投げつけられたフォークが、ルビーにテーブルをぶつけられた男の頬をかすり、床に突き刺さった。
「ヒッ…!?」
腰が抜ける男。
他の2人も恐怖で体を震わせた。
「クッソ、どこの馬の肉だ。苦労して手に入れたおれの宝の地図を奪ったやつァ…」
「船長、「馬の骨」です」
副船長のサポーレがすかさず訂正を入れる。
パッローネはクチャクチャと牛肉を咀嚼して飲みこみ、スプーンをつかんでグラニュー糖に埋もれたオムライスを口に突っ込んだ。
その隣には積み上げられた皿とカラの酒瓶があった。
「た、確か…、女は、バギー海賊団…と名乗っておりました…」
最後にルビーにブッ飛ばされた男が思い出して口にする。
「バギー海賊団~? 知らんな。しかし、どこでこっちのまずい話を聞きつけてきやがったんだ…」
「船長、「美味い話」です。…ああ、でも一応懸賞金がかかってるみたいだ」
自前の手配リストからバギーの探し出し、パッローネに手渡した。
「道化のバギー…。プフフ、1500万ベリーか。いるいる、懸賞金が低いくせに、こーんな調子に乗った田舎海賊ヤロウは…」
懸賞金の額を見たパッローネは嘲笑う。
「そーんな小物、おれがクッチャクチャにしてやるよ!! プフフフ!!」
バギーの手配書を宙へ放り、懐から取り出した短銃を撃った。
ベチャッ!
ひらひらと床に舞い落ちる手配書のバギーの顔には、粘着質なものが張り付いていた。
「“アルバヴィーノ”はおれの物だ!! 開ける事さえ許してなるものか!! からい思いをするのはおれだけだ!!」
「…「美味しい思い」です」
パッローネが上機嫌であれ不機嫌であれ、船員の中で唯一サポーレだけが訂正することができるのだ。
「いくぞヤロウ共!!!」
最後の酒瓶のコルクを口で開け、パッローネは手下たちを引き連れて酒場を出るのだった。
.To be continued