00-2:赤髪と赤鼻
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赤い船には見張りが何人かいる。
少し離れた茂みから窺ったが、あの2人の子どもの姿はなかった。
地面には村へと向かった大人たちの足跡がついている。
走れば、村に入られる前に追いつくこともできるけど、途中で足跡の群れから飛び出した足跡を見つけた。
周りの足跡よりも少し小さいのが2人分。
あたしがさっきいた岬の反対側だ。
あたしは足跡の道を外れてそれを追いかける。
木々の間を走り抜け、崖が見えてきたところで足を止めた。子ども2人が絶壁付近で何かしている。
「あと、もう少し…ッ」
「気をつけろよ」
赤鼻が四つん這いになり、崖の先に身を乗り出して手を伸ばしていた。
その先は10メートル以上の高さだ。
赤髪は赤鼻の後ろに立って前屈みで赤鼻の様子を見下ろしている。
(何をしているの…?)
声を掛けようか迷った。
好奇心がムズムズと身体を震わせる。
生まれてずっとこの島で暮らしているのに、手を伸ばすほどのものが、あんなところにあっただろうか。
首を傾げた途端、ガラッ、と岩が崩れる音が聞こえた。
「「あ」」
あたしと赤髪の声が重なる。
赤鼻の姿が消えた。
「うわああああ!!?」
崖の下から赤鼻の叫び声が上がる。
「バギー!!」
赤髪が慌てた様子で崖から身を乗り出して手を伸ばしたが、叫び声は落下し続けた。
赤鼻をつかめなかったようだ。
気が付けばあたしは全力で駆けだしていた。
崖の先が怪物の巣窟だと知っているからだ。
崖から真っ逆さまに飛び降り、両腕を伸ばして指先から海面へと着水した。
赤鼻はすぐに見つかった。
浮いてこない。
海賊は誰でも泳げるものだと思っていた。
赤鼻はもがく動きも鈍い。鎖で縛って海に叩きこまれたみたいだ。
「!!」
早速、海王類が迫ってきた。
運が良い事に中型だ。
小さな目を持ってるくせに口端からはみ出るくらいの大きくてギザギザの歯を持ったピンクのコイみたいなやつだ。
赤鼻丸ごとあたしを食べようと大口を開ける。
呑まれて死ぬのは、どっちだ。
数秒後、ゴパッ、と海王類が口から大きな水泡を吐き出し、白目を剥いて裏返り、そのまま浮上していった。
あたしは泳いで未だに沈んでいく赤鼻の右腕をつかんで自身の肩に回し、海面を目指して浮上する。
無反応だと思ったら、赤鼻は気絶していた。
溺れて気を失ったのか、海王類に仰天して気を失ったのか。
途中、何かが飛び込んだ音が聞こえたかと思えば、背中に悪寒が走り、はっと振り返ると、赤髪がこちらを凄い形相で睨んでいた。
思わず睨み返しそうになるのを堪え、あたしから海面を指さすと、赤髪は殺気立った空気を解き、小さく頷いて赤鼻の左腕をつかんで自分の肩に回してから、あたしと共に海面へと上がった。
理解が早くて助かる。
「「ぷはっ」」
あたしと赤髪は、海面から顔を出して息を吸い、急いで近くの小さな入江へと移動した。
「おい、バギー。起きろって!」
赤鼻はバギーという名前らしい。
仰向けに寝かせ、赤髪はペチペチとバギーの頬を叩いて雑な起こし方をする。
あたしは赤い鼻をつついてみた。
「へっくし!!」
飾りじゃなさそうだ。
くしゃみと共に体内の海水を吐き出したあと、「ゲホゲホッ」と激しく息継ぎした。
「あ…? 宝石は…?」
「お前なぁ…」
赤髪は呆れているが、小さな苦笑には安堵を含んでいた。
「バギーを助けてくれてありがとう」
「あたしが行かなくても…」
きっと赤髪が助けていただろう。
「おれはシャンクス。お前、この島の村のやつか?」
少し戸惑った。
名乗り合うなんて…。
「あたしは、『島守』」
「しまもり…?」
「赤い髪なんて初めて見た…」
あたしはそう言ってシャンクスの赤髪を指さした。
「珍しいか?」
「うん! こっちも凄く赤い鼻…」
ゼェゼェ、と息を荒くしているバギーの鼻をもう一度つつくと、シャンクスが「あ、それ言うと…」と止めようとしたが、
ゴチン!!
「赤鼻っつったかコラァァ!!」
「痛~~~…ッッ!!」
さっきまで溺れてたクセに勢いよく起き上がったバギーの容赦のないゲンコツを頭上に喰らってしまった。
コブが膨らんでいくのがわかる。
殴られるとは思わなかったから完全に不意をつかれた。
「やめろバギー! 助けてもらったんだぞ!!」
シャンクスはバギーを背後から羽交い絞めにして落ち着かせようとしている。
「最っ低ェ!! 助けてあげたのにー!! 赤いことのどこが悪いのよ! 褒めたじゃない!!」
あたしは涙目になってコブを両手で押さえながらバギーにがなった。
「また言いやがったなー!!」
あたしとバギーは互いの顔をつねり合う。
シャンクスは「おいおい…」と麦わら帽子に手を添え、傍らで呆れていた。
これが最初の最高で最悪な出会い。
きっと彼らに出会えてなければ、夢を持つこともなく、この島と共に、あたしは死んでいたかもしれない。
……たぶんね。
.To be continued