00-2:赤髪と赤鼻
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目が隠れるほどの長い前髪の隙間から船を見ると、先に込み上げてくるのは懐かしさだ。
『あたしも一緒に行きたい』
『海は大変だぞ。ガキには…、いや、お嬢さんにはまだ早い』
それでも、いつか連れてってやる、と約束してくれた。
だけど、その人はもう2度と帰ってくることはなかった。
『ウソつき…!!』
懐かしさの次にやってくるのは、いつも、怒りと痛みだ。
叔母は、あたしが岬から帰ってきたあとや食事中、寝る前などに、時に思い出したように言い聞かせてくる。
『あの人みたいに、海の向こうに興味を持ったらおしまい。お前の母親がやって来てから海の向こうに魅せられてしまったの。私達は本来ならこの島から出ちゃいけないんだ。この“名もない島”から…』
外の世界を必要としない島。
だから、本来なら、ここに流れ着いてくる船なんてあってはならない。
もう2度と。
海賊船なんてもってのほかだ。
ドクロを持つ船は危険だということは物心ついた時から教わっている。
赤い海賊船との距離は、あたしがいる岬から船の甲板が見えるところまで近づいてきた。
人より視力のいいあたしの目は、甲板に立つ人間達の姿を捉える。
手の指だけでは足りない人数がそこにいた。
島の村人より多いのではないか。
ほとんどが大きな男の大人たちだ。
砂浜に上陸される前に潰しに行こうかと身構えた時だ。
「……あれ?」
大人たちの周りを忙しなく動き回る、小さな2つの人影があった。
あたしと年が近そうな子どもが2人いる。
興味を引かれたのはそれだけじゃなかった。
ひとりは赤い髪の上に麦わら帽子を被り、もうひとりは赤く丸い鼻を持っている。
「同じだ…!」
まだまだ短い人生だが、2度とないかもしれない珍しい来訪者だ。
船を沈めるなんてとんでもない。
村への言い訳を考えるのもあとあと。
(ザクロ、ごめん!)
内心で叔母に謝り、踵を返して駈け出した。
最高の好奇心があたしの心を再び躍らせている。
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