02:みたいなもの?
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見た目は、目がデカいメダカ。
黒い鱗と死んだような目が不気味だ。
ビッグトップ号と同じくらいの大きさである。
大きな目がギロリとこちらを見た。
「……………」
睨んでいるのか、元々そういう目つきなのかわからない。
ダラダラと冷や汗を流した白目のバギー達は、両手を真上に上げたまま硬直している。
「目…デカ…」
バギーが呟いたあと、メダカの海王類はゆっくりと海面に潜った。
「……ど…、どっか行ってくれたんでしょうか…?」
カバジが刺激を恐れて小声で尋ねる。
バギーは唾を呑み、おそるおそる欄干に近づいた。
「そ…、そ~っと覗いてみてごらん~?」
恐怖を誤魔化すように歌って欄干から海面を覗く。
船の下には、ぬぅ、と動く影があった。
「つかまれ~~~~っ!!!」
同時に、メダカの尾が船に当てられ、船は嵐の時より大きく揺れた。
「うわぁあ!!」
「ぎゃあああ!!」
悲鳴を上げながらもクルー達は欄干やマスト、テントにしがみついた。
振り落とされればメダカのエサだ。
「うッ!!」
しがみつけないルビーは甲板を転がって欄干にぶつかった。
今度は右に大きく傾く。
「あ゛~~~~っ!!!」
両手を切り離して欄干にしがみつこうとしたバギーだったが、足は飛べないので甲板を転がり、欄干の向こうへと放り出されてしまいそうになる。
「おれの足っ!!!」
バギーのパーツは足を中心に空中をふわふわと浮くことができる。
その中心に磁石のようにつられ、バギーの身体が海に落ちそうになった。
「バギー!!」
たまたま近くの欄干につかまっていたアルビダが手を伸ばした。
体を元に繋げたバギーもその手を取ったが、誤算が起きる。
“スベスベの実”を食べたアルビダの肌は、石鹸以上にあらゆるものを滑らせる。
すなわち、『しっかりつかむ』ことができないのだ。
つるりん、とバギーの手がアルビダの手から滑り落ちた。
アルビダも自身の肌の事を思い出したのか、「あ」という顔になる。
そして、ドボーンッ、と海面に水しぶきが上がった。
「船長~~~っ!!!」
「バギー船長~~~!!!」
カバジとモージ、他のクルー達が泡を食って欄干に駆け寄った。
海面には気泡しか浮かんでいない。
海に嫌われてしまう“悪魔の実”を食べたバギーの体は、浮くことなく沈むのみだ。
「ふぅ。忘れてたよ、アタシの美肌(はだ)の事…」
アルビダは反省の色がまったくない。
「言ってる場合ですか、アルビダ姉さん!!!」
「船長が!! 助けに行かないと!!!」
「バカ言ってんじゃないよ。アタシも能力者だ。ミイラ取りになるつもりはないね! あんた達が助けに行きな」
言う事はもっともだが、クルー達はたじたじだ。
この状況下で普通の人間が飛び込んでも、バギーの次に海王類の餌食になってまさにミイラ取りだ。
「船長…」
生死の選択を迫られるクルー達。
海面にぷくぷくと浮かんでいた気泡がついになくなった。
「うわああああ!! バギー船長~~~~!!」
「ううっ!! そんな…っ! 志半ばで…」
「せめて盛大に弔うしか、おれ達にできることは…」
クルー達は泣きながら葬式の準備に入ろうとした。
「諦め早いよっ!!」
つっこんだのはルビーだ。
「あ、の、最っっバカ!!」
歯を食いしばり、両手と両脚に力を込める。
すると、ブチブチィッ、とロープが荒く千切れた。
「こいつ!!」とモージ。
「自力で縄を…!!?」とカバジ。
「会って早々こんなところで死なれてたまるかっ!!!」
立ち上がったルビーは、驚くモージとカバジの間を走り抜けて欄干に飛び乗り、両腕を真っ直ぐ上に伸ばして迷わず海の中へと飛び込み、大きな水しぶきを上げた。
「おい!!」
「あの女、海に飛び込んじまったぞ!!」
「逃げる気か!!?」
「海王類がいるってわかってんのにか!!?」
海面を覗くクルー達が騒然とする中、アルビダは呆れた表情を浮かべ、「バカな女だよ」と鼻を鳴らす。
「武器も持たずに、“グランドライン”の海に飛び込むなんて…」
その時、船が軽く揺れた。
大きな波が立ったようだ。
「今度は何だ!?」
海面の下にいた影が、まるで逃げるように海の向こうへと移動していく。
波はその際に起きたようだ。
「あのメダカ…」
「まさか、船長と女を食ったから、満足して帰ってったのか?」
「ああ、船長…。せっかくここまで来たのに、海の星になっちまって…」
絶望して葬式の続きを始めようとした途端、ひとりのクルーがあるものに気付き、指をさした。
「お、おい!! 見ろ!!」
「あ!!?」
海面から何かが出てくる。
「ぶはぁ!!!」
「ハァ、ハァ…」
バギーとルビーだ。
死にかけたバギーは空気を荒く吸い、バギーの右腕を肩に回して支えているルビーは、海王類が去った方向を見て安堵した顔をしている。
「バギー船長~~~っ!!!」
「ご―――ぶ―――じ―――で―――っ!!!」
バギーの無事に、クルー達は涙を流しながら喜び、バギーが戻ってくる前に遺影と線香とお供え物を片付ける。
アルビダ、カバジ、モージは目を疑うように2人を凝視した。
「あの海王類…、船だけ襲って2人は食べなかったってこと?」
「そんなことより、あんな目に遭わされておきながら、あの女、船長を助けた!!?」
「まさか本当に知り合いだというのか? けど…、船長は覚えてないって……」
モージとカバジは顔を見合わせ、「とにかく先にロープだ!!」と取りに行こうとする。
「いい! 自力で上がる!!」
声をかけたのはルビーで、海面を弾くように飛び出し、宙で弧を描いて甲板に身を打った。
「うっ!」
「ぶふっ!」
バギーも体の前面を打つ。
「いたた…。やっぱり綺麗に着地できない」
「「「「「!!!??」」」」」
その場にいる全員の目が飛び出した。
ルビーの両脚が、先程とは明らかに違う形状になっていたからだ。
アルビダも口をぽかんと開ける。
「あんた…、人魚だったのかい!?」
ルビーの両脚は魚の赤い鱗で覆われ、両足の横からはキラキラと輝く尾ひれが出ていた。
尾は2つに分かれ、交互に揺らされる。
「ん―――…。みたいなもの? うん。それでいいや」
ルビーは横に倒れたまま、考え込むような顔をしてから頷いた。
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