06:Forever as a child
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10月8日月曜日、午後13時。
運動場に入ると、まるで示し合わせたかのように、森尾が他の収容者達に囲まれて運動場の隅へと連れていかれる。
足立は刑務官に目を向けた。
訝しそうに目を細めていたが、動く様子はない。
「いい加減態度悪いぞ、クソガキ」
「21だ。クソガキの年じゃねーよ」
「知るか。何やらかしたか知らねーが、露骨にこっちを睨んできやがって」
「やかましいな。目付き悪ぃのは生まれつきだっつの」
「こいつ…。刑務官がいるからって俺らが手を出さないと思ってんのか? 俺の前科を教えてやろうか?」
「馬鹿じゃねーか? きちんと更生できなかった恥ずかしい自慢話に俺が興味持つかよ。よそで話して陰で笑われてろよクソ野ろ」
「う」と言い切る前に、背後から伸ばされた手に口を塞がれて後ろに引きずられていく。
「あーもー、うちの連れがすんませんねぇ! 礼儀知らず世間知らずなもんで。よーく言い聞かせとくんで穏便にお願いしますねぇ。ははは…」
愛想笑いを浮かべ、足立が森尾を反対側の隅へと移動させる。
森尾は不服そうに顔を歪ませて抵抗するが、ヘラヘラした緩みきった表情に反してがっちりと羽交い絞めにされていた。
足立が大きめの声を出したこともあり、収容者達も睨みつけて見送っただけで、それ以上絡んでこなかった。
「おい、何すんだよ、足立! ヘラヘラしやがって…」
安全な場所へ移動させられ、足立が腕を緩めた隙に振りほどいた森尾は、足立の胸倉をつかんで詰め寄った。
背中を金網に押し付けられた足立は平然とし、たしなめるような口調で言う。
「君こそ、刑務官のいる前で何をおっぱじめようとしてんのさ。世渡りがヘタだねぇ…。適当に愛想振りまいときなよ。ここは血の気が多い奴の巣窟だよ? みんな窮屈な生活にストレス溜まってんのに…」
「やかましいッ。落ちぶれた犯罪者共に、んなマネ死んでもできるかっ」
歯を剥き、軽く突き飛ばすように足立の胸倉から手を放す。
今の言葉はおそらく収容者には聞こえただろう。
皆、眉間に深い皺を刻んでこちらを睨んでいる。
目を合わせないようにしながら、足立は森尾の左肩に触れ、小さく言った。
「自分は違うって言い方してるけど、君もここにいる以上は犯罪者扱いなんだよ?」
「…っ!!」
歯を噛みしめた森尾は、足立の手を乱暴に払いのけた。
「一緒にすんじゃねぇよ…!」
唸るような声だ。
見兼ねた刑務官が「おい」と足立と森尾のいる方向に足を向けるが、足立はここでも愛想笑いを浮かべ、「ああ、なんともないんで」と手を控えめに振った。
「う…ッ」
「!」
痛みに呻く声に、足立ははっと森尾に振り返る。
わずかに前のめりになり、傷痕がある右手を、反対の左手で押さえていた。
「森尾…君?」
「なんでも…ねぇ…ッ」
汗を滲ませ、苦痛に耐えているのか微かに身体を震わせていた。
足立は背中に触れようと伸ばした手を、ゆっくりと引っ込める。
(いないわけないよね…。心に傷が…闇がない人間なんて……)
.To be continued