05:Shape of heart
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ツクモが、宝飾が施されたバズーカを都口の傷痕から引きずり出し、大口でかじりながら咀嚼し、呑みこんだ。
赤い傷痕は閉じられ、都口は無抵抗でウツシヨへと帰る。
言葉には出なかったが、口元が「ありがとう」と動いた。
夜戸、足立、ツクモの3人は、床に座り込んだ。
「物凄く暴れたけど…、どうするの? これ…」
夜戸は、壊れた壁やガラスケースを見回した。
足立はバラバラになった首飾りだったものをつまみあげる。
「僕も、高~いネックレス壊しちゃったし……。何してんの? 夜戸さん」
夜戸はメガネの上から両手で目を覆っていた。
「アタシハナニモミテマセン」
ロボットもびっくりの棒読みだ。
器物破損を見逃そうとしている。
「……久々に見た」
苦笑する足立。
「心配ないさ。ウツシヨに出る影響は時間差があって、ある程度はツクモが直しておくさ…」
捜査本部を作ったり、空間を移動したりできるツクモの事だ。
領域を取り戻せば多少の事は可能なのだろう。
「あー、疲れた…。結局、原因はわからずじまい…。割に合わないにも程があるよ」
足立はそう言って天井を仰ぎ、夜戸に振り向く。
「そう言えば、夜戸さん…、あのオバさんと知り合い? お互い知ってるふうだったけど…」
「知り合いと言いますか…、彼女のダンナさんの相談を請け負ったのが、あたしの父でして…。調停だと成立しなかったので、父のアシスタントとして離婚裁判に出廷した時、初めて彼女を見ました。頑なに、離婚成立を拒んでましたよ…」
都口は、その時も宝石という名の愛を身に着けていた。
法廷ではあるまじき身なりだったが、彼女なりの愛の証明だったのだろう。
「……鹿田の場合は本人の弁護…、都口の場合はその旦那の弁護…。夜戸さんのお父さん…、ちょっと無視できないなぁ…」
鹿田と都口、そして夜戸の共通点は、夜戸法律事務所が関わっていることだ。
「……………」
自身の父親が疑われているが、夜戸は表情を変えず、「父…ですか…」と呟く。
「元凶かは断定はできないけどね。『裁判所』ってのも関係あるかも…。傍聴席にはマニアだっているわけだし…」
夜戸の父親が関わっているのはたまたまだ、という前提で口にした。
夜戸もさすがに当時傍聴席にいた人間までは覚えていない。
「それよりもまず…、人間の手で引き起こされているのかもわからないしね…」
人間でないモノ。
足立は、自身のペルソナが人間でない何かによって手に入れたことを思い出す。
「ツクモちゃんもペルソナに目覚めちゃったわけだし…。びっくりだよ…」
足立と夜戸の視線がツクモに移された。
ツクモは「えへん」と自身の胸を叩き、威張った態度をとる。
「ツクモだってやれば出来るさ。何かあったら、2人を守ってあげるさ!」
「あーあ、すっかり調子取り戻しちゃった…」
足立は面倒くさそうに言った。
夜戸は気になっていたことを尋ねる。
「ツクモは、いつからこの場所にいるの? 背中の縫い目も、いつ…」
「つい最近の話じゃないさ。ツクモはずっと前からここにいるさ…。ここで、トコヨに流れ着いたウツシヨの人間の小さな欲望を食べて、生きてきた…。背中の傷だって、生まれた時からあるさ。君たちが生まれた時から目や耳があるのと同じように…。まさかペルソナが生まれるとは思わなかったけど!」
ペルソナの召喚を思い出して興奮が蘇ったのか、ツクモはリズムよく跳ねた。
「アダッチーも、明菜ちゃんの次に守ってあげるさ」
「はいはい、調子乗り過ぎ」
足立は座ったまま右脚を突き出し、器用にツクモをリフティングする。
「あ、ちょ、ヒドいさ! せっかく助けたのに扱い雑いさ!」
「僕なりの感謝と愛だよ、愛」
「胡散臭いさーっ!!」
夜戸は、ずれかけたメガネを指先で押し上げて口にする。
「愛って色々あるんですね…」
.To be continued