05:Shape of heart
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9月6日木曜日、午前0時。
夜戸、ツクモ、足立は『捜査本部』のカウンターテーブルに突っ伏していた。
室内の空気はうっすらと淀んでいる。
「ツクモさーん、犯人つかまんないんだけど~」と足立。
「モタモタしてるからさ…」とツクモ。
「走ったり、戦ったりばかりですね…」と夜戸。
3人は顔を上げる気力もなく会話している。
あれから犯人は捕まらないままだ。
駆けつけた時には、すでに宝石が奪われたあとだったことが続いた。
「! 侵入をキャッチしたさ…。今日こそは…」
ツクモは疲れ切った体で立ち上がる。
「今度こそ…現場に急行できるようにしてよね」
頬をカウンターにつけたままだった足立は顔を上げる。
「行きますか…」
頭を起こした夜戸は手ぐしで前髪を適当に整えてから席を立った。
3人は奥の扉から外へ出る。
扉の先は、繁華街に続いていた。
夜戸が背後に振り返り、自分達が出て来たのがスナックのドアからであることを確認する。
「この辺の宝石店は…」
足立は様々な店が立ち並ぶ風景を見回した。
「まず、ここどこなの?」
「足立さんがいる拘置所から1駅分の距離にある、繁華街です。この辺だと、確か3店舗ほどあった気が…」
夜戸は頭の中の地図を広げながら言った。
犯人が捕まらない間、捜査本部でできるだけ地図で宝石店がある場所を記憶しておいた。
「! なんか来るさ!」
気配を察知したツクモが、足立と夜戸の後ろに回る。
「なんかって、決まってるでしょ…」
ツクモが察知した方向を見ると、何体かがこちらにやってくる。
人型のガラス細工に見えるが、壊れたブリキ人形のように不気味に動き、顔には苦悶の表情の仮面が付けられていた。
「シャドウ…!」
ガシャ、ガシャ、と割れそうな音を立てながら迫ってくる。
最初に足を一歩踏み出したのは、夜戸だ。
「ペルソナ!」
声を上げれば赤い傷痕からナイフの柄が出現し、鞘から抜くように刃を引き抜いた。
傷痕は疼く程度で痛みは感じなくなっていた。
「イツ!」
夜戸の背後に召喚されたイツは、夜戸の動きに合わせて逆手持ちで曲刀を振るい、シャドウ2体を同時に横に切り裂いた。
仕留められたシャドウは、仮面の破片を残して溶ける。
その後ろにもう1体いた。
夜戸に向かって突進してくる。
「明菜ちゃん!」
ツクモは声を上げ、足立は腰に挟んだリボルバーに手をかけた。
イツを消した夜戸は、自身のナイフを構え、怯む様子を見せずに迎え撃つ体勢をとる。
夜戸より大きなシャドウが右手を上げ、勢いよく振り下ろした。
夜戸は身体を右に反らしてかわし、シャドウが前のめりになった体勢を狙い、右手のナイフを真っ直ぐに突き出して胸を貫く。
すると、胸の中心にヒビが入り、シャドウはガクガクと身体を震わせてから溶け、先程の2体と同じく仮面の破片を落としていった。
「ふぅ…」
「凄い! 凄いさ明菜ちゃん!」
駆けつけたツクモは、はしゃいで夜戸の周りをぴょんぴょんと跳ねまわる。
それから、「いただきまーす、処分処分♪」とシャドウが落とした仮面の破片を食べた。
「この世界じゃ、身体能力が上がるってツクモちゃんが言ってたけど、それでも動きが良すぎない?」
「護身術を少しやってましたから…。仕事柄、恨まれることもありますし」
逆恨みを買うこともあり、気乗りではなかったが、父親の影久に言われるままに身に付けた。
「僕も見習って運動しないとなぁ…。それにしても、あの数なら、ペルソナ出さなくてもよかったんじゃないの?」
「いえ…、身体に馴れさせないと、また肝心な時に動けなくなりますから」
鹿田の時もそうだった。
乗り切ったピンチは一瞬だけで、足立がいなければやられていただろう。
この数日、シャドウと出くわしては短時間でもイツを召喚し、身体に馴染ませていた。
そのおかげか、先程のように召喚してもすぐには息が上がらなくなっていた。
ナイフもまさに自身の一部となって手に馴染んできている。
「あ、反応をキャッチしたさ!」
「どこ?」
尋ねる足立に、ツクモはすぐ横を向いてビルを見上げた。
「こっち!! このビルの3階!!」
バァンッ!!
足立と夜戸が見上げると同時に、2階の窓が爆発し、ガラスの雨が降ってきた。
「うひゃー!」
爆発した直後に足立と夜戸はすぐさまビルから離れ、ガラスから腕で頭を庇い、ツクモも遅れて2人を追いかけた。
「ば…、爆発しましたよ…。今まで、こんなの…」
「なかったねぇ。犯人、調子に乗っちゃってるんじゃないの? 3階じゃなくて2階にいた犯・人・は」
責めるように強調する足立。
ツクモは言い返すことができずにうつむいていた。
「また…、逃げられた…」
夜戸も肩を落とした。
ツクモは項垂れる2人をじっと見つめ、内心で呟く。
(ツクモは…、役立たず…)
不意に、チクリ、と針で背中を刺されたような痛みが走った気がした。
「…?」
なぜなのか、ツクモにはわからない。
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