24:Let's go back
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ヒハヤビ。
ツクモに名を呼ばれて召喚されたのは、ミカハヤヒと同じつぼ型のペルソナだ。
だが、両サイドは取っ手ではなく白い翼が生えて空中を旋回し、全長約2mある壺の陶器は以前の水色のままだが、壺の口縁、首、肩、腰、裾部分は金が、銅部分中心には大きなハート型の赤い宝石が装飾されていた。
そして、壺の口から顔を出したのは、丸みのある白い頭だ。
つぶらな黄色の両目を持ち、頭にはヒマワリの花冠を被っている。
本体の近くには大輪の花が大きく描かれた、水瓶の蓋と思われる6枚の大きな円盤が飛んでいた。
「新しいペルソナ!?」と森尾。
「飛んでる!」と落合。
魔女のシャドウが放った黒い球体はヒハヤビに向かって飛んでいく。
ヒハヤビは翼を羽ばたかせて身軽に飛び回り、追尾してくる黒い球体と距離をとった。
「速ぇ!」
「けど、振り払えない!」
森尾と落合が必死にヒハヤビを目で追う中、姉川は水のイルカを放ってクラオカミの能力で分析する。
「速すぎて全部の分析に時間がかかるけど、あのペルソナは…!」
急停止したヒハヤビが黒い球体と向き合った。
当たれば力を吸引されてしまう。
黒い球体に当たる直前、ヒハヤビの目の前に1枚の円盤が割り込んだ。
「チャージ完了さ!」
円盤に描かれた花の中心には、光が集まっていた。
黒い球体から逃げていたのはその為の時間稼ぎだ。
「発射ぁ!!」
ツクモが叫ぶと、円盤の中心からまばゆい光線が放たれ、撃ち抜かれた黒い球体は弾け飛び、液状化することなく光の塵となって消えた。
「き、消えた!?」
月子も驚いて目を見張る。
「特殊攻撃の無効化…!」
姉川はヒハヤビを見上げた。
「みんなから離れるさー!!」
別の円盤が次々と、森尾達を取り押さえていたシャドウ達を跳ね飛ばしていく。
攻撃力も格段に上がっていた。
「すごい…!」
「サンキュー、ツクモ! お前、飛行できるうえにビームってかっこいいな! 羨ましいぜ!」
「2人とも、回復を!」
姉川は急いで森尾達に駆け寄り、少しでも動けるように、クラオカミの回復魔法を使用した。
「まだ! 月子とおねーちゃんは負けてない!!」
形勢逆転され、月子は焦りを内に押し込んだ。
ツクモは月子と向かい合って言い返す。
「君が勝っても、誰も幸せになれないさ!」
「おねーちゃんは幸せだよ! 自分が望む死に方ができるんだから!」
森尾達にとって無視できない言葉が飛び出た。
「死に…方…?」
落合は聞き間違えたかと疑う。
「おねーちゃんは今までのパートナーと違って、自分で死ぬことができない。だから…、おねーちゃんが自分で選んだ人間に殺されることが幸せなの」
「待てよ…。待てよ! じゃあ、夜戸さんの目的って…」
森尾が言いかけたところで、喋り過ぎたことに気付いた月子ははっとして吐き捨てる。
「どうせ、現実に帰ったらどうでもよくなる」
魔女のシャドウが動き出す。
月子にとっては最後の砦だ。
魔女のシャドウが周りのシャドウ達の防御力をさらに上げた。
「ツクモ、あなたなら出来る」
不敵な笑みを浮かべた姉川は、自信を持って言い切った。
「うん…!」
強く頷いたツクモは、3枚の円盤を魔女のシャドウに向けた。
6枚すべての円盤では時間がかかりすぎるからだ。
「ヒハヤビ!!」
円盤が光を集める。
周りのシャドウ達は一斉に魔女のシャドウの前に躍り出て守りを固めていった。
数ある限り、厚く、高い壁を作る。
その間に、魔女のシャドウが黒い球体を増やし始めた。
ヒハヤビが壁を破れず消耗したところを森尾達ごと狙い撃ちするつもりだ。
そうなれば勝機は一気に失われるだろう。
それなのに、先程よりも分厚くなった壁を前にしても、ツクモが臆している様子はない。
「発射ぁ!!」
3枚の円盤から光線が発射された。
集中した光線は防御力を無効化し、シャドウ達を消滅させる。
しかし、壁が破れただけで姿が見えた魔女のシャドウには届いていない。
何十個と作られた黒い球体を一斉に放とうとした。
「勝った…!」
月子は勝利を得た気になったが、
「まださ!!」
ツクモの前に、森尾と落合が出る。
「イワツヅノオ!!」
「ネサク!!」
召喚された2体は、ツクモがこじ開けた隙間に突っ込み、大鎌と戦槌を大きく振った。
ズバッ!!
大鎌によって切り離された首は燃え、残された胴体は氷漬けになって粉々に砕ける。
空間は魔女のシャドウの断末魔が響き渡り、やがて、炎とともに闇に融けて消えた。
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