00.運命の三叉路
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
…長かった。
漸く十祭司にまで上り詰めた。
あとは上手い具合に事が進めば、
こんな地とはおさらばだ。
その時まで、猫でも被っておいてやるさ。
僕の長きに渡る計画が台無しになる、
それだけはどうしても避けなければ。
500年に一度のSF、
僕の目標はその終着駅にある
精霊の王、GSただ其れだけだ。
各地を巡り、仲間を増やして…
その為にはパッチが護っていると訊く
五大精霊をものにする必要がある。
全て手に入れるつもりはない、
そのうちの一体でいい。
✯✯✯✯✯
また、くだらない一日が始まった。
SFを数年後に控え、集会、各々果たすべき
役目の確認など、十祭司になってからは
一族の掟に従い、あれこれ面倒な案件を
淡々と処理していく。
本当にくだらない事ばかりだ。
何か目新しいものでもないものか…
眉間に皺が寄る、正にそんな時だった。
あの光が現れたのは。
突然頭上から降ってきたと思えば
徐々に鮮明になってくるそれ。
ぼんやりとした視界が開けた先に居たのは
たった今まで居なかっただろう人物、
幼い顔立ちで12.3に見える。
「おや?アジア系とは珍しい…」
何処から来たのだろう、見た事もない格好で
間抜け面を晒し、僕にその視線を向けた。
『(髪が長い…美人…女性かな?)』
「まさか、女性と間違われるなんてね」
『…あ、すみません!』
声に出てたかな?、なんて
そんなちっちぇえ事はどうでもいい。
問題はどうやって今此処に来れたか。
「オラクルベルは…持ってないね。
観光かな?」
『(おらくるべる?)』
「こういう奴さ」
ま、持ってないのが当たり前だけど。
何せまだSFは始まってすらいない。
これで「持ってます」なんて言われたら
流石の僕もどう対処すべきか悩んだだろう。
「巫力700か…」
『え、すごい!
どうして分かったんですか?』
「パッチ伝統の業でね、
巫力を数値化出来る代物なんだ」
『へぇー…』
…これは、余り驚いていない顔だな。
「どうして分かったんですか」って、
まるで僕に訊く前に予め知っていた…
という反応だ。
彼女はシャーマンである、と断言した。
まだ弱いと自覚出来ている辺り、
これからやりようによっては
強くなる可能性だってあるだろう。
「自己紹介がまだだったね。
僕はハオ、このパッチ村で十祭司をしている」
『(パッチ村…十祭司…?)』
「短い間になると思うけど、
よろしくハルカ」
『え・・・あ・・・はい』
彼女は今まで出会った人間の中で
割りと澄んだ心の持ち主である、
というのは分かった。
頭の中に浮かぶ、沢山の疑問符。
それを声にせず、首を傾げるのみ。
面白い奴だな、と。
第一印象はこんな感じだ。
ただ何処から此処に来たのか、
生まれは?育った環境は?
一見どうでも良いような、
そんの疑問は尽きない。
彼女の心に雑音が入る。
聴き取れない時がある。
それはつまり「読めない」という事。
ーーーーー
「…という訳だ、ハルカを頼む」
あれから族長に「迷い人」だと話し、
滞在する許可を貰い、身寄りのない
彼女の保護を名乗り出た。
右も左も分からぬ土地での野宿は
流石に可哀想なので、女子供が待つ集落へ
連れて行き、妻に寝食の世話を頼んだのだ。
子供の世話もあるし、大変だろうが
妻は出来た女なので大丈夫だろう。
「ハルカ、用が済んだら村を案内してやるよ」
『えっと…お構いなく』
雨風凌げるだけ有り難い、なんて
「今」の彼女は分かるというのに。
何故心が読めない、なんて
聞くだけ無駄だろう。
どうせあと少しの辛抱だ。
時が来れば後は…
『何か…悪そうな顔してるね』
「…え?」
『何か欲しい物でも?』
「…そんな顔してたかい?」
『いや、正確に言えば顔には出てないよ。
セーフセーフ!』
顔には出てない、声にも出してない。
じゃあ、何故…
『あーごめん…つい何時もの癖が…』
彼女の能力は予知能力か、それとも…
いや、まさかボクと同じ…
『何するんか知らんけど、
あんま無理せんようにね?』
敬語が抜けた彼女の、素の言葉。
声を潜めたその言葉の意味を測り兼ねる。
周囲は動じない、それどころかその意味も
意図も分からない筈だ。
僕以外は。
口元が緩みそうになるのを我慢して
喉から出かかった声を押し殺して、
ハルカの耳に口を寄せる。
「ねぇ、ハルカ…
僕の仲間にならないか?」
『・・・はい?』
彼女が居たら、きっと
これからが楽しくなりそうだ。
2/2ページ