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act.01-③:振り回される-sideハオ
記憶が過去のものと化し、曖昧な残滓が塵となり空気中へと溶け出す頃、彼女が再び魅せた言動に僕は驚く事となる。それが先に放った一言から始まる。
『そう言えば。赤ちゃんの名前、決まった?』
…今、何と言った?何故、君と別れた後に立ち寄った場所で仲間にした赤子を知っている?
僕の仲間から聞いたのか?否、お互い情報を共有する程に近付いた記憶はない。
『また、河原でキャンプ?』
またって…君はその当時、海外に居た筈だ。電子機器を必要としないんだ、連絡の取りようも無い。ましてや彼女自身も、所謂アナログ派。確か前に「機械には疎い」と言っていた。
『む…そんなの言われても見えないんだもん、しゃーないでしょうよ』
『誰って、そりゃあ…って!言い逃げかよ!』
これも、可笑しな話だ。彼女自身「独り言」だと言った言葉だが、今までに相手の居ない会話で弁解したのはこれが初めて。 そして、ふと感じた自分以外の気配。自分じゃない誰か。なんて分かりきった答えが直ぐ傍らに現れて、消えた。
これが彼女の能力だとしたら、即戦力にはならないが酷く珍しく面白い。こうして行動を共にしていれば、何れ未知の能力が開花するかも知れない。
―――
「何故そんなにも貴船神社に拘るんだい?」
ずっと、願う理由が知りたいと思った。「憧れ」だと童子のように目を輝かせながら。そして「行くな」と言った僕を睨んだ理由を。
『雫様に逢いに』
「……?」
『何時でもおいでって言われたんだ』
貴船は水神を祀る。その本宮の祭神はタカオカミノカミという神で、ミツハノメノカミと共に日本を代表する神である。対して結社はイワナガヒメノミコト、縁結びの神として信仰される。嫁ぎ先から追い返され、恥じて意地になって今の形へと落ち着いたのだと訊いた。
『そっちじゃなくて、雨。クラオカミの方』
クラオカミノカミ。一説によればタカオカミノカミと同一視される神だ。雨を司る祭神。そしてクラは谷を意味する。
『声が、聞こえるんだ』
何も見えないけど。
そう続けたハル、次いで面白い言葉を発した。
『その辺に居るだろう幽霊?の声は聞こえないんだよ。ただ、何て言うの?あたしの能力に合わせられる、余裕のある者の声となら会話可能』
「それをシャーマンって言うんだよ」
『違うよ。あたし、シャーマンとして生まれてないもの。第一、シャーマンってなんか面倒くさい』
…面倒くさいって何だ、面倒くさいって。
生まれてないとかそれ以前に、何度も言うように君は僕の子孫なんだから、否が応でもシャーマンの血が流れている筈なんだ。
『やだ、そんなベタな設定!っていうか誰だ、陰陽師がシャーマンだって言い出しっぺは!』
「そういうものだろう?」
『いーや!可笑しい、絶対可笑しい!大体何時からシャーマンが主流になったのさ?それに昔はスリーマンセルじゃなくて…』
「…何の話?」
『…ん?あ、嗚呼ゴメン。飛躍し過ぎた』
彼女との会話は些か骨が折れる。意味を問い質した所で自分の欲っしている一番は返って来ないんだから。次いではぐらかされる。そうなれば、後は自然な流れで曖昧なまま有耶無耶にされてしまう。 霊視が効かないから、此方側が余計に混乱する。でもハル本人にしてみれば、取るにたらない…下らない内容ばかりなのだとか。全く…せめてもう少し、会話として成立してくれれば楽になるというのに。
『あ、そうだ。昨夜の…ラキスト作のカレー、美味しかった?』
…だから、何故君がそれを知っている。
記憶が過去のものと化し、曖昧な残滓が塵となり空気中へと溶け出す頃、彼女が再び魅せた言動に僕は驚く事となる。それが先に放った一言から始まる。
『そう言えば。赤ちゃんの名前、決まった?』
…今、何と言った?何故、君と別れた後に立ち寄った場所で仲間にした赤子を知っている?
僕の仲間から聞いたのか?否、お互い情報を共有する程に近付いた記憶はない。
『また、河原でキャンプ?』
またって…君はその当時、海外に居た筈だ。電子機器を必要としないんだ、連絡の取りようも無い。ましてや彼女自身も、所謂アナログ派。確か前に「機械には疎い」と言っていた。
『む…そんなの言われても見えないんだもん、しゃーないでしょうよ』
『誰って、そりゃあ…って!言い逃げかよ!』
これも、可笑しな話だ。彼女自身「独り言」だと言った言葉だが、今までに相手の居ない会話で弁解したのはこれが初めて。 そして、ふと感じた自分以外の気配。自分じゃない誰か。なんて分かりきった答えが直ぐ傍らに現れて、消えた。
これが彼女の能力だとしたら、即戦力にはならないが酷く珍しく面白い。こうして行動を共にしていれば、何れ未知の能力が開花するかも知れない。
―――
「何故そんなにも貴船神社に拘るんだい?」
ずっと、願う理由が知りたいと思った。「憧れ」だと童子のように目を輝かせながら。そして「行くな」と言った僕を睨んだ理由を。
『雫様に逢いに』
「……?」
『何時でもおいでって言われたんだ』
貴船は水神を祀る。その本宮の祭神はタカオカミノカミという神で、ミツハノメノカミと共に日本を代表する神である。対して結社はイワナガヒメノミコト、縁結びの神として信仰される。嫁ぎ先から追い返され、恥じて意地になって今の形へと落ち着いたのだと訊いた。
『そっちじゃなくて、雨。クラオカミの方』
クラオカミノカミ。一説によればタカオカミノカミと同一視される神だ。雨を司る祭神。そしてクラは谷を意味する。
『声が、聞こえるんだ』
何も見えないけど。
そう続けたハル、次いで面白い言葉を発した。
『その辺に居るだろう幽霊?の声は聞こえないんだよ。ただ、何て言うの?あたしの能力に合わせられる、余裕のある者の声となら会話可能』
「それをシャーマンって言うんだよ」
『違うよ。あたし、シャーマンとして生まれてないもの。第一、シャーマンってなんか面倒くさい』
…面倒くさいって何だ、面倒くさいって。
生まれてないとかそれ以前に、何度も言うように君は僕の子孫なんだから、否が応でもシャーマンの血が流れている筈なんだ。
『やだ、そんなベタな設定!っていうか誰だ、陰陽師がシャーマンだって言い出しっぺは!』
「そういうものだろう?」
『いーや!可笑しい、絶対可笑しい!大体何時からシャーマンが主流になったのさ?それに昔はスリーマンセルじゃなくて…』
「…何の話?」
『…ん?あ、嗚呼ゴメン。飛躍し過ぎた』
彼女との会話は些か骨が折れる。意味を問い質した所で自分の欲っしている一番は返って来ないんだから。次いではぐらかされる。そうなれば、後は自然な流れで曖昧なまま有耶無耶にされてしまう。 霊視が効かないから、此方側が余計に混乱する。でもハル本人にしてみれば、取るにたらない…下らない内容ばかりなのだとか。全く…せめてもう少し、会話として成立してくれれば楽になるというのに。
『あ、そうだ。昨夜の…ラキスト作のカレー、美味しかった?』
…だから、何故君がそれを知っている。
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