00.姉ちゃん
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act.00-③:見えない何かと出逢う
未だ通れない道が欠伸をした。私が鳥で在ったなら豪速球の如く、直ぐにでもあれに飛び込む事だろう。でもそれを良しとせず、知ってか知らずか此奴は私の邪魔をする。 今は間違いなく後者、彼は未だ何も知らない。
―――
和泉田ハル、それが今回の名前。改名したのは麻倉を出て東京に越して来た時。 物心つく前後の話だったので、家を出る前に祖父に言われた言葉も実は曖昧だったりする。何か言われた事は覚えているけど、今こうして思い出せないという事は、大した意味の無い言葉だったんだろう。多分。 因みにその様子を一部始終何処からか見ていたと話した彼は「その経緯を知っている」らしく、改名する前の本名をも把握しているという事。
だから私はハオをわざとこう呼ぶのだ、「愚弟」と。
それはそうと。ハオ曰わくの仲間から私は「変人」で通っている。「何の脈絡も無く、唐突に話し始めるから」という理由だとか。 残念、どうやら彼らには彼の声が聞こえないらしい。こんなにも近くにいるのに。
勝ツノハ、ハオ様ニ決マッテイル…
『確かに、ラスボスって感じだよね』
あ、まただ。また、あのイタい奴に向ける目。表には出さないようにしてるけど、ハオだって皆と同意見みたい。
我ラノ声、通常ノシャーマン…ハオ様ニモ聞コエヌ…
『あーねぇ…』
精霊王ことGS、そしてS・O・Fもとい五大精霊。彼らと会話できるのは、今この地上で唯一自分だけ。パッチ族にもそれは不可能だし、その前に先ず会話が可能だという概念自体が無い筈だ。
ハオ様ガ王ニナレバ或イハ…
話せるかも知れない、と。
嗚呼、なんて可愛い奴なんだ。だから昔の私に「スッピー」なんて愛称付けられるんだよ。
ソノ呼ビ名…五大精霊全テニ適応スル名ダト、以前キィバガ話シテイタ…
「ほら、行くよ?」
「此処も直に騒がしくなる」という彼の配慮というより、多分「用も無いのに、何時までも此処に留まる必要は無い」が本音らしい。うん、確かに。滅多に雪崩の起きない山で発生したとなれば、地元民が騒がない筈は無い。
アレハ知リ合イカ?
『うん、腐れ縁みたいな』
流石、元こっち側。良く見えていらっしゃる。精霊王の傍らに控え、守護してきた彼らだからこそ、シャーマンでは無い自分に合わせられる技量が在るのであって、他の…この山に存在する霊や精霊にはそれが出来ない。 つまり、何が言いたいかと言うと。 見えない自分の視界に、その存在を映し出せるのは、相応の技量を兼ね備えた…要するに器用な精霊しか出来ないって事。中には妖精や霊から精霊に進化した奴も在るみたいだけど、私自身では未だそれらに出逢った事が無いから分からないが。
「ハル」
災害が起きた場所に平然と佇む彼女を見れば、唇だけで「行っておいで」と言われたのを確認した。次いで「くれぐれも気をつけて、楽しんでおいで」とも。 私に「楽しめ」と言う割に、言った彼女自身が楽しそうではないか。嗚呼、これは後で色々冷やかされるパターンだ。きっと。
ハオ様ガ呼ンデイル、急ゲ…
『はいよー』
生まれて初めての彼女との邂逅を、もう少し分かち合いたい所だけど。遠巻き状態になっている仲間とハオが急かすので、後ろ髪を引かれる思いで彼女に別れを告げる。 一人なら愚痴含めた世間話でもするのだが、何故か今は一人では無いので…
って、あれ?私本来、一人で旅してた筈なんだけど…一体何時からこんな大所帯になったんだっけ?
未だ通れない道が欠伸をした。私が鳥で在ったなら豪速球の如く、直ぐにでもあれに飛び込む事だろう。でもそれを良しとせず、知ってか知らずか此奴は私の邪魔をする。 今は間違いなく後者、彼は未だ何も知らない。
―――
和泉田ハル、それが今回の名前。改名したのは麻倉を出て東京に越して来た時。 物心つく前後の話だったので、家を出る前に祖父に言われた言葉も実は曖昧だったりする。何か言われた事は覚えているけど、今こうして思い出せないという事は、大した意味の無い言葉だったんだろう。多分。 因みにその様子を一部始終何処からか見ていたと話した彼は「その経緯を知っている」らしく、改名する前の本名をも把握しているという事。
だから私はハオをわざとこう呼ぶのだ、「愚弟」と。
それはそうと。ハオ曰わくの仲間から私は「変人」で通っている。「何の脈絡も無く、唐突に話し始めるから」という理由だとか。 残念、どうやら彼らには彼の声が聞こえないらしい。こんなにも近くにいるのに。
勝ツノハ、ハオ様ニ決マッテイル…
『確かに、ラスボスって感じだよね』
あ、まただ。また、あのイタい奴に向ける目。表には出さないようにしてるけど、ハオだって皆と同意見みたい。
我ラノ声、通常ノシャーマン…ハオ様ニモ聞コエヌ…
『あーねぇ…』
精霊王ことGS、そしてS・O・Fもとい五大精霊。彼らと会話できるのは、今この地上で唯一自分だけ。パッチ族にもそれは不可能だし、その前に先ず会話が可能だという概念自体が無い筈だ。
ハオ様ガ王ニナレバ或イハ…
話せるかも知れない、と。
嗚呼、なんて可愛い奴なんだ。だから昔の私に「スッピー」なんて愛称付けられるんだよ。
ソノ呼ビ名…五大精霊全テニ適応スル名ダト、以前キィバガ話シテイタ…
「ほら、行くよ?」
「此処も直に騒がしくなる」という彼の配慮というより、多分「用も無いのに、何時までも此処に留まる必要は無い」が本音らしい。うん、確かに。滅多に雪崩の起きない山で発生したとなれば、地元民が騒がない筈は無い。
アレハ知リ合イカ?
『うん、腐れ縁みたいな』
流石、元こっち側。良く見えていらっしゃる。精霊王の傍らに控え、守護してきた彼らだからこそ、シャーマンでは無い自分に合わせられる技量が在るのであって、他の…この山に存在する霊や精霊にはそれが出来ない。 つまり、何が言いたいかと言うと。 見えない自分の視界に、その存在を映し出せるのは、相応の技量を兼ね備えた…要するに器用な精霊しか出来ないって事。中には妖精や霊から精霊に進化した奴も在るみたいだけど、私自身では未だそれらに出逢った事が無いから分からないが。
「ハル」
災害が起きた場所に平然と佇む彼女を見れば、唇だけで「行っておいで」と言われたのを確認した。次いで「くれぐれも気をつけて、楽しんでおいで」とも。 私に「楽しめ」と言う割に、言った彼女自身が楽しそうではないか。嗚呼、これは後で色々冷やかされるパターンだ。きっと。
ハオ様ガ呼ンデイル、急ゲ…
『はいよー』
生まれて初めての彼女との邂逅を、もう少し分かち合いたい所だけど。遠巻き状態になっている仲間とハオが急かすので、後ろ髪を引かれる思いで彼女に別れを告げる。 一人なら愚痴含めた世間話でもするのだが、何故か今は一人では無いので…
って、あれ?私本来、一人で旅してた筈なんだけど…一体何時からこんな大所帯になったんだっけ?
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