00.姉ちゃん
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act.00-②:意思疎通ならず-sideハオ
「だから言ったろ?此処は危ないって」
僕に首根っこを掴まれて、ゆらり揺れる奴を見下ろした。眼下には変わらず雪が斜面を転がり落ちる。本来ならS・O・Fに乗せる所だが、彼女にはそれも出来ない。 和泉田ハル。シャーマンの家系に生まれながら、生まれつき相応の能力が備わっていなかった娘だ。 「出来損ない」 麻倉現当主である葉明に、そう見限られて出雲を追い出された過去を持つ。
「ハル様、お怪我は?」
「心配無いよ、この僕に助けられて不貞腐れてるだけさ」
見えない・感じない・触れないの三重苦。何の力も無い癖に、一人で何でもこなそうとする。その姿勢は誉めたものだが、後先考えず、無謀にも突き進むだけしか能のない行動は頂けない。
「僕と関わりたくないのなら、せめて今後はちゃんと皆の言葉を聞く事だね」
気を抜けば肩まですっぽり埋まってしまいそうな雪面に、静かに下ろすと同時に彼女は眉を顰めた。
―――
「愚弟」
僕をそう呼称するのは、後にも先にも多分彼女だけだ。蔑みの眼差しで一瞥するのは、憎むべき存在だからだろうが、何しろ彼女には霊視を含む霊障が一切通用しないので、実際そうなのかは定かではないが。 そう言えば。何故か彼女は此処に来たがった。雪山なら何処でもいいという訳でもなく「此処に行きたい」と、数日前から騒ぎ始めたのだ。
元々、常に行動を共にしていた訳じゃない。ふらり気が傾いた場所で、意図せず妙に出会す事が多いというだけ。 「何かに導かれた」よりは「何者かに謀られた」とでも例えようか。そして、今も。誰か探すように忙(せわ)しなく眼球を動かし続けている。 君は何を見ている? 君には何が見える? 此処に存在しているのは、争いを好まない精霊ばかり。霊感の無い君の視界に入る者なんて皆無だと思うんだけど。せめて、精霊王-GSクラスになれば君の瞳にも映る筈だ。
『確かに、ラスボスって感じだよね』
唐突に。口火を切って、何を言い出すのかと思えば。会話が成り立たない台詞を吐き出すものだから、毎回ハルに向けられる周囲の視線が痛い。
「ついに可笑しくなったのか」と。いや「最初から可笑しい」とも。そもそも「シャーマンと人間は理解し合えない」とまで。随分酷い言い草だが、皆の音なき言い分は分かるつもりだ。僕も常にそう思っているから。
『あーねぇ…』
何かが欠落した変な人間。それは現代に生まれ落ちて、初めて出逢った時もそうだった。
「僕の子孫なのに見えないって本当?」
『いやぁ、良かった良かった』
「…良くないよ」
『万歳三唱』
「………」
思えばあの頃から既に可笑しかった。例えば質問を質問で返すし、聞いても無い事を急に語り出す。勝手に話して自己満足して何時の間にか終了。故に皆、ハルには近寄ろうとしない。
「ほら、行くよ?」
それでも。こうして僕が彼女に構う事を、敬遠する皆が何も言わないのは、単に僕が恐いからではなく。前に一度ハルが魅せた、あの言動が発端となっている。 だから思うんだ。もしかしたらハルに霊感自体が全く無い訳ではなく、その素質が惰眠を貪っているだけなのではないかと。 まぁ、僕の考え過ぎとは思うけどね。
「だから言ったろ?此処は危ないって」
僕に首根っこを掴まれて、ゆらり揺れる奴を見下ろした。眼下には変わらず雪が斜面を転がり落ちる。本来ならS・O・Fに乗せる所だが、彼女にはそれも出来ない。 和泉田ハル。シャーマンの家系に生まれながら、生まれつき相応の能力が備わっていなかった娘だ。 「出来損ない」 麻倉現当主である葉明に、そう見限られて出雲を追い出された過去を持つ。
「ハル様、お怪我は?」
「心配無いよ、この僕に助けられて不貞腐れてるだけさ」
見えない・感じない・触れないの三重苦。何の力も無い癖に、一人で何でもこなそうとする。その姿勢は誉めたものだが、後先考えず、無謀にも突き進むだけしか能のない行動は頂けない。
「僕と関わりたくないのなら、せめて今後はちゃんと皆の言葉を聞く事だね」
気を抜けば肩まですっぽり埋まってしまいそうな雪面に、静かに下ろすと同時に彼女は眉を顰めた。
―――
「愚弟」
僕をそう呼称するのは、後にも先にも多分彼女だけだ。蔑みの眼差しで一瞥するのは、憎むべき存在だからだろうが、何しろ彼女には霊視を含む霊障が一切通用しないので、実際そうなのかは定かではないが。 そう言えば。何故か彼女は此処に来たがった。雪山なら何処でもいいという訳でもなく「此処に行きたい」と、数日前から騒ぎ始めたのだ。
元々、常に行動を共にしていた訳じゃない。ふらり気が傾いた場所で、意図せず妙に出会す事が多いというだけ。 「何かに導かれた」よりは「何者かに謀られた」とでも例えようか。そして、今も。誰か探すように忙(せわ)しなく眼球を動かし続けている。 君は何を見ている? 君には何が見える? 此処に存在しているのは、争いを好まない精霊ばかり。霊感の無い君の視界に入る者なんて皆無だと思うんだけど。せめて、精霊王-GSクラスになれば君の瞳にも映る筈だ。
『確かに、ラスボスって感じだよね』
唐突に。口火を切って、何を言い出すのかと思えば。会話が成り立たない台詞を吐き出すものだから、毎回ハルに向けられる周囲の視線が痛い。
「ついに可笑しくなったのか」と。いや「最初から可笑しい」とも。そもそも「シャーマンと人間は理解し合えない」とまで。随分酷い言い草だが、皆の音なき言い分は分かるつもりだ。僕も常にそう思っているから。
『あーねぇ…』
何かが欠落した変な人間。それは現代に生まれ落ちて、初めて出逢った時もそうだった。
「僕の子孫なのに見えないって本当?」
『いやぁ、良かった良かった』
「…良くないよ」
『万歳三唱』
「………」
思えばあの頃から既に可笑しかった。例えば質問を質問で返すし、聞いても無い事を急に語り出す。勝手に話して自己満足して何時の間にか終了。故に皆、ハルには近寄ろうとしない。
「ほら、行くよ?」
それでも。こうして僕が彼女に構う事を、敬遠する皆が何も言わないのは、単に僕が恐いからではなく。前に一度ハルが魅せた、あの言動が発端となっている。 だから思うんだ。もしかしたらハルに霊感自体が全く無い訳ではなく、その素質が惰眠を貪っているだけなのではないかと。 まぁ、僕の考え過ぎとは思うけどね。