00.姉ちゃん
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act.00-①:「姉ちゃん」
オイラには姉ちゃんが居る。 …と言っても本当の姉ちゃんじゃなくて。母ちゃんの姉、実(みのり)伯母さんの娘だから、この場合は従姉妹って事になるんだけど。 ただ、仲が良い悪い関係なしに「姉ちゃんが居る」という認識しか、実際は知らない。
―――
「珍しいな、祖父ちゃんに電話とか」
「嗚呼…と言いたい所だがな」
「?」
珍しく祖父ちゃんの項垂れる姿を目撃した。受話器を置いて深い深い溜め息。昔あった、政治家かか金持ちかの依頼か何かがまた来たんか。そう思ったが、それにしては祖父ちゃんの態度が何となく変だ。
「ほれ、この間のニュースで雪崩云々と言っておったじゃろう?」
「ん?あぁ、旅行者が巻き込まれたっていう?」
海外にあるその山は、人里離れた山脈の一つで、山肌が険しい事もあってか、地元民は余り立ち入らない場所なんだそうで。 でも偶に無謀な登山家とか、テレビの取材とか何かの挑戦とか、無駄な意地張って結果、遭難するという意味でも有名な地形だという。 そして今回も。何も知らない旅行者が一人、何故か滅多に起こらないという雪崩に運悪く巻き込まれたと騒がれていたが、奇跡的に生還してたとかでつい数日前までニュースや新聞で大々的に報道されてたって話。
「…その旅行者だがな、どうやらハルらしいのだ」
「ハルって…まさか、姉ちゃんが?!何でまたそんな所に…」
和泉田ハル、それが姉ちゃんの名前。 万象高校在学中、突然休学届けを出して「世界史の勉強」と称した、一人海外旅行に出るという行動力が逞しい奴である。加えて好奇心旺盛で度胸もあるし、シャーマンには申し分ない性格をしている。…なのに
「全く、勿体無いったらないわい」
「まぁ、こればっかりは…」
なのに。姉ちゃんには生まれつき、在る筈のものが無かった。シャーマンの名門、この麻倉には致命的な霊感が。 見えない、感じない、触れないの三重苦。 一般人ならそれで問題無いかも知れないが、麻倉の家系がそれを許さなかった。だから姉ちゃんはこの出雲を出て、シャーマンとは全く関わりのないだろう東京で暮らしていたというのに。
「此方に呼び戻す訳にもいかんし…どうしたものか」
祖父ちゃんが唸る理由は多分、海外在住でシャーマン関係の仕事に就く伯母さん夫婦の事。自分が推薦し頼んだ仕事の手前、突然帰って来いとは言い難い。 要するに。 幾つになっても落ち着きのない姉ちゃんの監視役が欲しいのだ。そして偶には、何か遭った時じゃなくて何もなくとも連絡を寄越せと。そう言いたいのだそうで。 でも、それも難しい。何せ姉ちゃんが麻倉を出る際に、祖父ちゃんが言った一言。 勘当、とまではいかなかったみたいだが。勢いで言い放った当時の自分の言葉を悔いている、と前に話してくれた。そして謝りたいのだとも。
何時も一方的に切れる「未だ生きてるよ」以外の、まくしたてるような電話越しじゃなくて、ちゃんと向かい合って謝罪したいのだと。だから。連絡を貰う度に気が気じゃないこの感情を早く姉ちゃんに伝えて、あわよくば帰って来て欲しい。 自分勝手な事だと思う。それでも血縁者には変わりない。あの時を許してくれとは言わない。でも、それでも。それが祖父ちゃん含めた、オイラの、家族全員の願い。
オイラには姉ちゃんが居る。 …と言っても本当の姉ちゃんじゃなくて。母ちゃんの姉、実(みのり)伯母さんの娘だから、この場合は従姉妹って事になるんだけど。 ただ、仲が良い悪い関係なしに「姉ちゃんが居る」という認識しか、実際は知らない。
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「珍しいな、祖父ちゃんに電話とか」
「嗚呼…と言いたい所だがな」
「?」
珍しく祖父ちゃんの項垂れる姿を目撃した。受話器を置いて深い深い溜め息。昔あった、政治家かか金持ちかの依頼か何かがまた来たんか。そう思ったが、それにしては祖父ちゃんの態度が何となく変だ。
「ほれ、この間のニュースで雪崩云々と言っておったじゃろう?」
「ん?あぁ、旅行者が巻き込まれたっていう?」
海外にあるその山は、人里離れた山脈の一つで、山肌が険しい事もあってか、地元民は余り立ち入らない場所なんだそうで。 でも偶に無謀な登山家とか、テレビの取材とか何かの挑戦とか、無駄な意地張って結果、遭難するという意味でも有名な地形だという。 そして今回も。何も知らない旅行者が一人、何故か滅多に起こらないという雪崩に運悪く巻き込まれたと騒がれていたが、奇跡的に生還してたとかでつい数日前までニュースや新聞で大々的に報道されてたって話。
「…その旅行者だがな、どうやらハルらしいのだ」
「ハルって…まさか、姉ちゃんが?!何でまたそんな所に…」
和泉田ハル、それが姉ちゃんの名前。 万象高校在学中、突然休学届けを出して「世界史の勉強」と称した、一人海外旅行に出るという行動力が逞しい奴である。加えて好奇心旺盛で度胸もあるし、シャーマンには申し分ない性格をしている。…なのに
「全く、勿体無いったらないわい」
「まぁ、こればっかりは…」
なのに。姉ちゃんには生まれつき、在る筈のものが無かった。シャーマンの名門、この麻倉には致命的な霊感が。 見えない、感じない、触れないの三重苦。 一般人ならそれで問題無いかも知れないが、麻倉の家系がそれを許さなかった。だから姉ちゃんはこの出雲を出て、シャーマンとは全く関わりのないだろう東京で暮らしていたというのに。
「此方に呼び戻す訳にもいかんし…どうしたものか」
祖父ちゃんが唸る理由は多分、海外在住でシャーマン関係の仕事に就く伯母さん夫婦の事。自分が推薦し頼んだ仕事の手前、突然帰って来いとは言い難い。 要するに。 幾つになっても落ち着きのない姉ちゃんの監視役が欲しいのだ。そして偶には、何か遭った時じゃなくて何もなくとも連絡を寄越せと。そう言いたいのだそうで。 でも、それも難しい。何せ姉ちゃんが麻倉を出る際に、祖父ちゃんが言った一言。 勘当、とまではいかなかったみたいだが。勢いで言い放った当時の自分の言葉を悔いている、と前に話してくれた。そして謝りたいのだとも。
何時も一方的に切れる「未だ生きてるよ」以外の、まくしたてるような電話越しじゃなくて、ちゃんと向かい合って謝罪したいのだと。だから。連絡を貰う度に気が気じゃないこの感情を早く姉ちゃんに伝えて、あわよくば帰って来て欲しい。 自分勝手な事だと思う。それでも血縁者には変わりない。あの時を許してくれとは言わない。でも、それでも。それが祖父ちゃん含めた、オイラの、家族全員の願い。
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