07.開幕を告げる前夜
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act.07-②:彼女の気持ち(こえ)-sideハオ
『たいっへん、申し訳御座いませんでしたぁー!』
僕の顔を見るなり土下座する勢いで頭(こうべ)を垂れたのは、数日前に別れた筈のハル。毎回異なる場所で野営をしている僕の居場所を、どうやってか的確に捉え、こうして顔を突き合わせるのももう慣れた光景だ。
「今度は何事だ?」
基本、何らかのトラブルはハルが持ってくる。
本人は全く意に介していないようだが、その辺に漂う人間霊や悪霊、果ては地縛霊なんかを良くくっつけては何も感じないと笑うのだ。全く、毎回対処する僕の事も考えて貰いたい。
「…おや?姿が見えないと思ったら」
彼女の後方でSOFが姿を現した。
僕の持霊の筈だが、何故かハルの元へ顕現する。それに関して怒りこそないが、偶に持ち主以外の方を優先させるのもどうなんだ、とは思うね。
『ごめん、ほんっとーにごめん!!』
「…だから、何が」
『ラキストと…花組がぁー!』
SOFが、何かを抱えていたのは気づいていた。ハルが口にした件の連中を壊れ物でも触るかのように地面に降ろし、彼はその姿を消した。
「…ふむ」
息はある。騒ぐ程の事でもない。
…が、気になるのは此処に至るまでの状況だ。
「これ…僕に説明する気はあるかい?」
『説明、というか…』
花組と出会って、天使が、ラキストが…と辿々しく口にする。花組は僕の指示で動いていた。ハルがどんな反応を見せるのか気になったからだ。ラキストは単なる偵察、彼から見た意見も聞きたかった。ただ、あの頭のおかしい連中が既に来日しているとは思わなかったなぁ。
『ラキストは見てただけだし、花組は掠めただけだし、天使?に至っては自業自得だし…』
「掠めた?」
『うん、こう…おっきいやつをね』
「それは、SOFの事?」
『ううん、スッピーが来たのはラキストとほぼ同時刻だからスッピーじゃないよ』
大きな、巨大な……。そう喩えるばかりで一番知りたい事を言わない。意図して主語を避けている。回りくどいやり方だ。
「…ハル」
『ごめんってば!
あたしだってあの人との約束があるんだから
多くは語れないのよ!』
「…あの人?」
『あたしの言動の、根底となる人』
以前話していた"多くは語らない事にしている"や"多数決"は、どうやら此処に結びつくらしい。其奴がどんな奴かは今の段階では知り得ない情報、という。
「いつ話してくれる?」
『今回のSKが誕生した時?』
「それじゃ遅いよ」
『じゃあ、SF本戦二次トーナメント前日』
「もっと前」
『これでも譲歩してる方なんだけど…』
でも、それまで待ては流石の僕も無理かな。取り敢えず今はラキストたちが起きるのを待ってみようか。その瞳が捉えた状況を共有してもらわない事には。
『あ、オラクルベル持ってる?』
「あるけど…」
腕に着けているカバーを外して、興味深そうな顔を向けた彼女に見せてやる。
『それ、ちょっと貸してー?』
「…はいはい」
否定しても縋って来るだろうと予想して、SF参加資格であるそれを手渡す。シャーマンでないと豪語する君が持っていても、何の役にも立たないだろうに。
『えーっと、確かこの辺に……
あ、うん。ちょっとね』
雑談の域だろうが、何を話しているか相変わらず分からない。言いながら取り出したのは銀色に輝く何か。
『(…………………)』
不意にハルの口が動く。音は出ていない。
僕の、大嫌いな能力でさえ拾えない。雑音が響く。
『はい、ダウンロード終わり!』
次に見たのは僕に差し出さすオラクルベル、
特に変わった様子は見られない。
『ラキストと花組を倒しちゃったお詫び』
「へぇ、倒した…ね」
『不可抗力なんですけど』
「次は僕の相手をしてもらおうかな?」
『…え』
「怖ろしいか?」
『いや、それは全然。
ただ、どうやって逃げようかなぁって』
ははっ……逃げる前提か。
敵前逃亡は余り褒められたものではないんだけどね、まぁ…相手がハルだし、力の根源を知る為にも逃すつもりは更々ないんだけど。
『あんたには何度もお世話になってるから…
(敢えてこんな回りくどい言い方してるのよ)』
察して欲しい、そう声にせず。
けれど今までで真艫(まとも)に拾えたこの音は、
きっと嘘偽りない彼女の本音。
『たいっへん、申し訳御座いませんでしたぁー!』
僕の顔を見るなり土下座する勢いで頭(こうべ)を垂れたのは、数日前に別れた筈のハル。毎回異なる場所で野営をしている僕の居場所を、どうやってか的確に捉え、こうして顔を突き合わせるのももう慣れた光景だ。
「今度は何事だ?」
基本、何らかのトラブルはハルが持ってくる。
本人は全く意に介していないようだが、その辺に漂う人間霊や悪霊、果ては地縛霊なんかを良くくっつけては何も感じないと笑うのだ。全く、毎回対処する僕の事も考えて貰いたい。
「…おや?姿が見えないと思ったら」
彼女の後方でSOFが姿を現した。
僕の持霊の筈だが、何故かハルの元へ顕現する。それに関して怒りこそないが、偶に持ち主以外の方を優先させるのもどうなんだ、とは思うね。
『ごめん、ほんっとーにごめん!!』
「…だから、何が」
『ラキストと…花組がぁー!』
SOFが、何かを抱えていたのは気づいていた。ハルが口にした件の連中を壊れ物でも触るかのように地面に降ろし、彼はその姿を消した。
「…ふむ」
息はある。騒ぐ程の事でもない。
…が、気になるのは此処に至るまでの状況だ。
「これ…僕に説明する気はあるかい?」
『説明、というか…』
花組と出会って、天使が、ラキストが…と辿々しく口にする。花組は僕の指示で動いていた。ハルがどんな反応を見せるのか気になったからだ。ラキストは単なる偵察、彼から見た意見も聞きたかった。ただ、あの頭のおかしい連中が既に来日しているとは思わなかったなぁ。
『ラキストは見てただけだし、花組は掠めただけだし、天使?に至っては自業自得だし…』
「掠めた?」
『うん、こう…おっきいやつをね』
「それは、SOFの事?」
『ううん、スッピーが来たのはラキストとほぼ同時刻だからスッピーじゃないよ』
大きな、巨大な……。そう喩えるばかりで一番知りたい事を言わない。意図して主語を避けている。回りくどいやり方だ。
「…ハル」
『ごめんってば!
あたしだってあの人との約束があるんだから
多くは語れないのよ!』
「…あの人?」
『あたしの言動の、根底となる人』
以前話していた"多くは語らない事にしている"や"多数決"は、どうやら此処に結びつくらしい。其奴がどんな奴かは今の段階では知り得ない情報、という。
「いつ話してくれる?」
『今回のSKが誕生した時?』
「それじゃ遅いよ」
『じゃあ、SF本戦二次トーナメント前日』
「もっと前」
『これでも譲歩してる方なんだけど…』
でも、それまで待ては流石の僕も無理かな。取り敢えず今はラキストたちが起きるのを待ってみようか。その瞳が捉えた状況を共有してもらわない事には。
『あ、オラクルベル持ってる?』
「あるけど…」
腕に着けているカバーを外して、興味深そうな顔を向けた彼女に見せてやる。
『それ、ちょっと貸してー?』
「…はいはい」
否定しても縋って来るだろうと予想して、SF参加資格であるそれを手渡す。シャーマンでないと豪語する君が持っていても、何の役にも立たないだろうに。
『えーっと、確かこの辺に……
あ、うん。ちょっとね』
雑談の域だろうが、何を話しているか相変わらず分からない。言いながら取り出したのは銀色に輝く何か。
『(…………………)』
不意にハルの口が動く。音は出ていない。
僕の、大嫌いな能力でさえ拾えない。雑音が響く。
『はい、ダウンロード終わり!』
次に見たのは僕に差し出さすオラクルベル、
特に変わった様子は見られない。
『ラキストと花組を倒しちゃったお詫び』
「へぇ、倒した…ね」
『不可抗力なんですけど』
「次は僕の相手をしてもらおうかな?」
『…え』
「怖ろしいか?」
『いや、それは全然。
ただ、どうやって逃げようかなぁって』
ははっ……逃げる前提か。
敵前逃亡は余り褒められたものではないんだけどね、まぁ…相手がハルだし、力の根源を知る為にも逃すつもりは更々ないんだけど。
『あんたには何度もお世話になってるから…
(敢えてこんな回りくどい言い方してるのよ)』
察して欲しい、そう声にせず。
けれど今までで真艫(まとも)に拾えたこの音は、
きっと嘘偽りない彼女の本音。