04.ともだち
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act04.③:"こっち"サイド-sideヒロイン
神出鬼没で気紛れで、彼女そのものを体現しているかのような、そんな道が閉じた。欠伸みたいな、瞬間的なものだったらしい。 落ちる前の元居た場所に引き上げられたが、探していた物ごと消えてしまった。ハオが言うように「燃やした」のなら、それは其処に残る筈だったもの。無いという事は、やはり奴らは「逃げた」のだろう。 流石"こっち"サイド、速さだけはシャーマンすら凌駕する。
「探し物は見つかった?」
『ううん、残念』
「ははっ、加減すれば良かったかな」
『大丈夫、有り難う』
別に急ぎではないし、今必ず手に入れなければならない品物でもない。後回しにしても構わない、けど何時かは回収しなければならない物。
奴ラハ…?
『元右利き、今は左利き』
強制…シタノカ
『時代が、そうさせたんだ』
もしくは、自ら望んだ事なのかも知れない。
予選ニハ…
『出ない。目的が違う』
誰ノ差シ金ダ?
『誰だろう?でも、確実に』
"あっち"側の人間だろう、そう言いかけて止めた。足下から此方を凝視する、小さな気配に気づいたから。
『オパチョ?どうし…』
「ハルさま」
見上げるように、覗き込むように。何をする訳でもなく、その純粋無垢な大きな瞳でじっと。名前を呼ばれたから、言葉の続きが有るものだと思ったけれど。特にこれといった変化は見られない。
「内緒話をするな」
『?』
「そう言いたいんだよ、オパチョは」
『内緒話…』
しているつもりは、実はさらさらない。口を開いて声として吐き出している時点で、それは内緒話には入らない。と思う。
「オパチョ、スピリット・オブ・ファイアのこえきこえねぇ!」
『うん』
「ハオさまも!」
『うん』
「ふふ、オパチョは素直だね」
「オパチョちっちぇえ!」
「あぁ」
『…………』
何か、2人の周りだけ花が飛んでるように見えるのは気のせいだろうか。一瞬ピリッとした空気が支配したのに、何の脈絡もないオパチョの言葉で場が和んだ。成る程、誰が言ったか、あれが噂のオパチョマジック。
「それで、何の話をしていた?」
『"こっち"の話』
「僕に2度も助けられたのに、まだ黙秘を貫くと?」
『…"こっち"はnotシャーマンの事』
「ん?」
『あたしみたいに\"シャーマンじゃない\"って言い張ってる人達の事を、纏めて"こっち"って言い方をしてる』
「君以外にも、そんな奴が居るって?」
『うん、さっきの連中もギリ"こっち"サイド』
普通にシャーマンして、SF予選に勝ち進んで、本戦への切符を掴む。その進路にあたしの言う"こっち"や"あっち"は、あくまで脱線した先の話であって、その存在を知らなくても問題なんて起きない。 引き金は何時もあたし。あたしが皆と居るだけで、それだけで正規ルートから連帯責任で脱線させられる。気付かなければいい、構わなければ。そうしたら皆、普通にシャーマンやっていけるのに…
「それ、僕が原因?」
『…へ?』
「今、強く願っただろ?」
『……あ!』
「ふふ…取り敢えず、君の置かれている状況は理解したよ」
さっき、まだ道が辛うじて繋がっている時に再会した彼女が言っていた事を思い出した。もし、それが事実ならハオを巻き込む訳にはいかない。
「僕は未来王、シャーマンキングになる男だ。君の面倒事なんて迷惑のうちに入らないよ、姉さん?」
『うっさい、愚弟の癖に!』
「ははっ!」
今日は何だか調子が悪い。風邪を引いたとかじゃなくて、心の制御が上手くいかない。
『久々に、会ったからかなぁ』
自分を狙う連中に。何時も1人でいたから、何とか往(い)なせたんだけど。今は愚弟の他に、オパチョも居る。 嗚呼、今日はついてない。だから婆ちゃんに「見習い」扱いされるのかも。
『スッピー』
…何ダ?
『君に伝言』
内容は言わない、というより分からない。あたしにはまだ、この言葉を理解出来ていないから通訳のしようもない。
『…何て?』
…"アッチ"ガ、騒ギソウナ話ダ
『それ、大丈夫なやつ?』
説明ガ…面倒ダ
『ありゃま』
「ハル」
『ごめん、何とも言えない』
頭を抱えたスッピーに、何と説明したものか。一瞬でも開いていた、道が在った空間からフワリと漂う蜘蛛の糸みたいなもの。それがスッピーへと繋がる。そして案の定2人にそれは見えていないようで、オパチョに至っては可愛らしく首を傾げている。 大昔、まだ愚弟が生まれてもなかった頃。彼女がまだ生きていた時代の、とある少数民族の言葉。パッチが巫力を数値化する技術を持つように、彼女の一族は言葉を具象化する事に長けていた。 但し、全ての人間に等しく見えるものではない。ある条件付きで、それを満たした者でなければ気配を感じる事すら適わない。もし2人が該当者なら、あの道の存在にも気付いていた筈だったけれど。
『王様になったら分かるかもよ?』
「…当たり前だろ」
『でも、なっても叶わない事も有るかもね』
「シャーマンキングは全知全能、そんな事有るわけ…」
『そうだね、無いといいね』
全知全能。本当にそうだとしたら
何も困らないし、誰も悩まなくていいのに…
神出鬼没で気紛れで、彼女そのものを体現しているかのような、そんな道が閉じた。欠伸みたいな、瞬間的なものだったらしい。 落ちる前の元居た場所に引き上げられたが、探していた物ごと消えてしまった。ハオが言うように「燃やした」のなら、それは其処に残る筈だったもの。無いという事は、やはり奴らは「逃げた」のだろう。 流石"こっち"サイド、速さだけはシャーマンすら凌駕する。
「探し物は見つかった?」
『ううん、残念』
「ははっ、加減すれば良かったかな」
『大丈夫、有り難う』
別に急ぎではないし、今必ず手に入れなければならない品物でもない。後回しにしても構わない、けど何時かは回収しなければならない物。
奴ラハ…?
『元右利き、今は左利き』
強制…シタノカ
『時代が、そうさせたんだ』
もしくは、自ら望んだ事なのかも知れない。
予選ニハ…
『出ない。目的が違う』
誰ノ差シ金ダ?
『誰だろう?でも、確実に』
"あっち"側の人間だろう、そう言いかけて止めた。足下から此方を凝視する、小さな気配に気づいたから。
『オパチョ?どうし…』
「ハルさま」
見上げるように、覗き込むように。何をする訳でもなく、その純粋無垢な大きな瞳でじっと。名前を呼ばれたから、言葉の続きが有るものだと思ったけれど。特にこれといった変化は見られない。
「内緒話をするな」
『?』
「そう言いたいんだよ、オパチョは」
『内緒話…』
しているつもりは、実はさらさらない。口を開いて声として吐き出している時点で、それは内緒話には入らない。と思う。
「オパチョ、スピリット・オブ・ファイアのこえきこえねぇ!」
『うん』
「ハオさまも!」
『うん』
「ふふ、オパチョは素直だね」
「オパチョちっちぇえ!」
「あぁ」
『…………』
何か、2人の周りだけ花が飛んでるように見えるのは気のせいだろうか。一瞬ピリッとした空気が支配したのに、何の脈絡もないオパチョの言葉で場が和んだ。成る程、誰が言ったか、あれが噂のオパチョマジック。
「それで、何の話をしていた?」
『"こっち"の話』
「僕に2度も助けられたのに、まだ黙秘を貫くと?」
『…"こっち"はnotシャーマンの事』
「ん?」
『あたしみたいに\"シャーマンじゃない\"って言い張ってる人達の事を、纏めて"こっち"って言い方をしてる』
「君以外にも、そんな奴が居るって?」
『うん、さっきの連中もギリ"こっち"サイド』
普通にシャーマンして、SF予選に勝ち進んで、本戦への切符を掴む。その進路にあたしの言う"こっち"や"あっち"は、あくまで脱線した先の話であって、その存在を知らなくても問題なんて起きない。 引き金は何時もあたし。あたしが皆と居るだけで、それだけで正規ルートから連帯責任で脱線させられる。気付かなければいい、構わなければ。そうしたら皆、普通にシャーマンやっていけるのに…
「それ、僕が原因?」
『…へ?』
「今、強く願っただろ?」
『……あ!』
「ふふ…取り敢えず、君の置かれている状況は理解したよ」
さっき、まだ道が辛うじて繋がっている時に再会した彼女が言っていた事を思い出した。もし、それが事実ならハオを巻き込む訳にはいかない。
「僕は未来王、シャーマンキングになる男だ。君の面倒事なんて迷惑のうちに入らないよ、姉さん?」
『うっさい、愚弟の癖に!』
「ははっ!」
今日は何だか調子が悪い。風邪を引いたとかじゃなくて、心の制御が上手くいかない。
『久々に、会ったからかなぁ』
自分を狙う連中に。何時も1人でいたから、何とか往(い)なせたんだけど。今は愚弟の他に、オパチョも居る。 嗚呼、今日はついてない。だから婆ちゃんに「見習い」扱いされるのかも。
『スッピー』
…何ダ?
『君に伝言』
内容は言わない、というより分からない。あたしにはまだ、この言葉を理解出来ていないから通訳のしようもない。
『…何て?』
…"アッチ"ガ、騒ギソウナ話ダ
『それ、大丈夫なやつ?』
説明ガ…面倒ダ
『ありゃま』
「ハル」
『ごめん、何とも言えない』
頭を抱えたスッピーに、何と説明したものか。一瞬でも開いていた、道が在った空間からフワリと漂う蜘蛛の糸みたいなもの。それがスッピーへと繋がる。そして案の定2人にそれは見えていないようで、オパチョに至っては可愛らしく首を傾げている。 大昔、まだ愚弟が生まれてもなかった頃。彼女がまだ生きていた時代の、とある少数民族の言葉。パッチが巫力を数値化する技術を持つように、彼女の一族は言葉を具象化する事に長けていた。 但し、全ての人間に等しく見えるものではない。ある条件付きで、それを満たした者でなければ気配を感じる事すら適わない。もし2人が該当者なら、あの道の存在にも気付いていた筈だったけれど。
『王様になったら分かるかもよ?』
「…当たり前だろ」
『でも、なっても叶わない事も有るかもね』
「シャーマンキングは全知全能、そんな事有るわけ…」
『そうだね、無いといいね』
全知全能。本当にそうだとしたら
何も困らないし、誰も悩まなくていいのに…
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