02.行ってきます
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act.02-②:「行ってきます」-side葉
「あー、ダルい」
朝起きて着替えて顔洗って、うがいして。習慣化したそれらの行動を終えてから居間に行けば、「おはよう」と声が掛かった。姉ちゃんだ。
『如何にも行きたくないって顔してるね』
「そうなんよ…学校なんて、かったりぃよなー」
『義務教育の間は、しゃーない話だねぇ』
座卓の上に顎を乗せて「面倒」やら「ダルい」を連呼するように愚痴る。普通の奴らみたいに進学とかする気ないし、学校なんて絶対行かなきゃならん訳じゃないのに。 そんなオイラを見て姉ちゃんは笑う。姉ちゃんだって高校生の癖に全く行く気がないのか、まるで他人事だ。
『あたしはいいの。高校生ったって別に強制じゃあないんだから』
「でもアレ、単位とかあるんだろ?」
『あぁ、別に全く気にしてないから』
くそっ、何て爽やかな笑顔なんだ。いや、気にしないって…姉ちゃんって一応シャーマンじゃない一般人なんだから、そこは気にした方がいいと思うけど。
『まぁ、何はともあれ。とにかく食べなさいな』
「…いただきます」
ずっと各地を放浪してるだけあって、姉ちゃんは何でも出来た。ご飯に味噌汁、魚とか。朝は和食が多い。昼間の弁当にも色んなおかずが鮮やかに敷き詰めてあって、夕食もこれまた豪華。でもちゃんと二人で食べきれる量しか作らない。
『夕飯、何かリクエストとかある?』
「んー、麻婆豆腐とか?
でも、あんまり辛くないやつがいい」
『はいよ、りょーかい』
言えば大体その通りに出てくる。ふと「テレビで作ってた料理が美味しそうだった」と感想を言えば、近日中に同じものが食卓に並ぶ。「食べたそうな顔してた」と言われた日の夕食、イメージしてた味そのまんまで驚いた。「姉ちゃんプロだよな」って言えば大袈裟だと笑われたっけ。
「あ、そういやぁ昨日変な奴に会ったんよ」
『ほうほう』
「チビで口うるさくて、でも…」
曖昧な部分でわざと止めた。そんなオイラを急かす事なく、姉ちゃんは黙って言葉を待っている。嗚呼、何て言うか…この一瞬の間が好きだ。最近そう思う事が増えた。一人じゃ絶対に有り得ない。何故か唐突に、そんな気持ちにさせてくれる姉ちゃんの存在が有り難かった。
―――
「んじゃ、行ってくるんよ」
『は〜い、気をつけてね〜!』
散歩に行く時と同じ言葉。些細な事だが、やっぱり嬉しい。話し相手が居る、それだけで嫌な気持ちが吹き飛ぶ。
「ウェッヘッヘッ」
流石姉ちゃん。あの後、まるでオイラの心を読んだみたいに「その子はいい子だよ」と言ってくれた。「霊が見える奴に悪い奴は居ない」、そう思ったオイラの想いを否定せず、ちゃんと受け入れてくれた。 姉ちゃんはシャーマンじゃないから見えはしないのに、ちゃんと話を聞いてくれる。気配とかホントまるっきり分かってないけど、何故か知識だけは蓄えてるみたいで、持ち霊探しにも協力してくれるらしい。 取り敢えず、放課後また墓場に行ってみよう。姉ちゃんの話だと、大昔のサムライの首塚が有るとか。昨日はそんなの気にせず、ただノンビリしてただけだから気づかなかったけど。
「ひひっ」
思い出し笑い、というか楽しみがまた増えた。
早く夜にならないかなぁ。
「あー、ダルい」
朝起きて着替えて顔洗って、うがいして。習慣化したそれらの行動を終えてから居間に行けば、「おはよう」と声が掛かった。姉ちゃんだ。
『如何にも行きたくないって顔してるね』
「そうなんよ…学校なんて、かったりぃよなー」
『義務教育の間は、しゃーない話だねぇ』
座卓の上に顎を乗せて「面倒」やら「ダルい」を連呼するように愚痴る。普通の奴らみたいに進学とかする気ないし、学校なんて絶対行かなきゃならん訳じゃないのに。 そんなオイラを見て姉ちゃんは笑う。姉ちゃんだって高校生の癖に全く行く気がないのか、まるで他人事だ。
『あたしはいいの。高校生ったって別に強制じゃあないんだから』
「でもアレ、単位とかあるんだろ?」
『あぁ、別に全く気にしてないから』
くそっ、何て爽やかな笑顔なんだ。いや、気にしないって…姉ちゃんって一応シャーマンじゃない一般人なんだから、そこは気にした方がいいと思うけど。
『まぁ、何はともあれ。とにかく食べなさいな』
「…いただきます」
ずっと各地を放浪してるだけあって、姉ちゃんは何でも出来た。ご飯に味噌汁、魚とか。朝は和食が多い。昼間の弁当にも色んなおかずが鮮やかに敷き詰めてあって、夕食もこれまた豪華。でもちゃんと二人で食べきれる量しか作らない。
『夕飯、何かリクエストとかある?』
「んー、麻婆豆腐とか?
でも、あんまり辛くないやつがいい」
『はいよ、りょーかい』
言えば大体その通りに出てくる。ふと「テレビで作ってた料理が美味しそうだった」と感想を言えば、近日中に同じものが食卓に並ぶ。「食べたそうな顔してた」と言われた日の夕食、イメージしてた味そのまんまで驚いた。「姉ちゃんプロだよな」って言えば大袈裟だと笑われたっけ。
「あ、そういやぁ昨日変な奴に会ったんよ」
『ほうほう』
「チビで口うるさくて、でも…」
曖昧な部分でわざと止めた。そんなオイラを急かす事なく、姉ちゃんは黙って言葉を待っている。嗚呼、何て言うか…この一瞬の間が好きだ。最近そう思う事が増えた。一人じゃ絶対に有り得ない。何故か唐突に、そんな気持ちにさせてくれる姉ちゃんの存在が有り難かった。
―――
「んじゃ、行ってくるんよ」
『は〜い、気をつけてね〜!』
散歩に行く時と同じ言葉。些細な事だが、やっぱり嬉しい。話し相手が居る、それだけで嫌な気持ちが吹き飛ぶ。
「ウェッヘッヘッ」
流石姉ちゃん。あの後、まるでオイラの心を読んだみたいに「その子はいい子だよ」と言ってくれた。「霊が見える奴に悪い奴は居ない」、そう思ったオイラの想いを否定せず、ちゃんと受け入れてくれた。 姉ちゃんはシャーマンじゃないから見えはしないのに、ちゃんと話を聞いてくれる。気配とかホントまるっきり分かってないけど、何故か知識だけは蓄えてるみたいで、持ち霊探しにも協力してくれるらしい。 取り敢えず、放課後また墓場に行ってみよう。姉ちゃんの話だと、大昔のサムライの首塚が有るとか。昨日はそんなの気にせず、ただノンビリしてただけだから気づかなかったけど。
「ひひっ」
思い出し笑い、というか楽しみがまた増えた。
早く夜にならないかなぁ。