16.15年越しの未来
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
act.16-①:-sideハオ
差して上等ではないが、未だ抱えたままのハルを僕の寝床へ転がす。騒がしい。だが、お陰で変な誤解を産む心配は無さそうだ。
疑問点は多々ある。ハルの言う、”僕じゃない僕”とは如何なる存在なのか。それに耳飾りの色以外に異なる点も。どうやらその”僕じゃない僕”にはハルという存在が認知されていないらしい。それはつまり、縁の無い事を意味している。
『ちょ、な、なん…!?』
「はいはい、ちょっと黙ろうか」
『んむ…?!』
全く、良くもまぁこんな状態で何でそんなに動けるんだろうね、この娘(こ)は。呆れを通り越して感心するよ。
本来なら動ける状態ではないんだ。相手がその”僕じゃない僕”だから余計に。SOFの攻撃を貫通する彼女の能力に気付いての手段だったんだろうけど、まぁ我ながら称賛するよ。まさか、ハルを生かしたまま魂だけを剥離させようとは。
『むもー!』
「…はは、頼むから噛み千切らないでくれよ?」
『ふごふごむごもご!』
「はいはい、それは終わってから幾らでも」
肉体という器から中身…魂が零れかかっている、と言えば解り易いだろうか。死ねば皆等しく常世なりGSなりに吸収される。ただそれはあくまで死んだら、の話。彼女の場合、半身が死に突っ込んでいる状態だから余計質が悪い。せめて片足なら少し痛むくらいで解決出来たろうに。
取り敢えず暴れられても面倒なので、脱いだ外套(マント)を彼女の頭からすっぽりと被せ、自由を奪う。次いで両腕からグローブを外し、左腕を彼女の口へ。これで舌を噛みきって死、なんて馬鹿な真似はしないだろう。
「さて、覚悟はいいかい?」
『ふ…むぐー!!』
「君が大人しくしてくれれば直ぐに終るよ、頑張れ」
指摘されなくとも分かる、今の僕の表情。
多分物凄くいい笑顔だったに違いない。ハルが滅多に見ない程、顔面蒼白だったから。
ーーーーーー
結果として、ハルは助かった。
息も絶え絶えになりながら、良くあの痛みに耐えてくれた。落ちかかった魂を肉体へと引き戻し、そして定着させる。その凄まじさは彼女に噛ませた僕の左腕が物語る。このまま何も処置しなければ、傷口が膿んで最悪腐り落ちるだろう。まぁ、僕は治癒で直ぐ無かった事に出来るんだけど、ハルはそうもいかないからね。
念の為に試みた足の腫れも、やはり効果はなかった。仕方なく患部を冷やして包帯を巻いてやる。先の本人も言った通り、ハルは他人より治りが遅いので、出来ればこのまま暫く動かないで貰いたいんだけど。
「…僕の話、聞いてた?」
『聞いてた聞いてた』
「その様子だとお前、ちゃんと理解してないね」
『いや、右から左に流れてった』
「流すな流すな」
彼女の呼吸、脈が正常に打ち始めた後、せめて体力が戻ってから動けと言い渡したのは確か昼前。そして横たえた筈の彼女がテントの外でフラフラしていたのが昼過ぎ。昼食を終えて戻って来て見れば寝床は藻抜けの殻。思わず頭を抱えて飛び出した僕が見たのは、木陰で死んだように座り込むハルだった。
「治りが遅いと自覚してるのなら、大人しくしてな」
『いやー、これくらいで立ち止まったら…一生立てない気がして』
「たまに小休止を挟むくらい問題ないだろう?」
『いやいや、あたし隠れ役なんで』
隠れ鬼の事を言っているのだろう。その場合の鬼は彼女の追っ手、という事になるが。逃げるだけでは芸が無いから、と最近は息を潜めながら何とかやり過ごしているらしい。
「此処でそんな目に遭う訳ないだろ?」
『分かんないよー?
ほら、あっちは昔っからしつこいからさ』
誰かさんたちとそっくり。
その中には僕も含まれているのだろうが。
「取り敢えずほら、戻るよ」
『えー、リハビリだと思って見逃してよ』
「まだ早い」
一応怪我人ではあるから。半ば強引に横抱きすれば、何かを言いかけて押し黙った。
頬に赤みが差しているところを見るに、こんな光景に慣れて居ないのだろう。そう言えば何時も俵担ぎだったな。
こんな性格故に、女らしい扱いを受けた事など無いのかも知れない。余り覚えのないこの感情を隠すかのように、そっぽを向いた彼女の耳が赤かったのは僕だけの秘密。
差して上等ではないが、未だ抱えたままのハルを僕の寝床へ転がす。騒がしい。だが、お陰で変な誤解を産む心配は無さそうだ。
疑問点は多々ある。ハルの言う、”僕じゃない僕”とは如何なる存在なのか。それに耳飾りの色以外に異なる点も。どうやらその”僕じゃない僕”にはハルという存在が認知されていないらしい。それはつまり、縁の無い事を意味している。
『ちょ、な、なん…!?』
「はいはい、ちょっと黙ろうか」
『んむ…?!』
全く、良くもまぁこんな状態で何でそんなに動けるんだろうね、この娘(こ)は。呆れを通り越して感心するよ。
本来なら動ける状態ではないんだ。相手がその”僕じゃない僕”だから余計に。SOFの攻撃を貫通する彼女の能力に気付いての手段だったんだろうけど、まぁ我ながら称賛するよ。まさか、ハルを生かしたまま魂だけを剥離させようとは。
『むもー!』
「…はは、頼むから噛み千切らないでくれよ?」
『ふごふごむごもご!』
「はいはい、それは終わってから幾らでも」
肉体という器から中身…魂が零れかかっている、と言えば解り易いだろうか。死ねば皆等しく常世なりGSなりに吸収される。ただそれはあくまで死んだら、の話。彼女の場合、半身が死に突っ込んでいる状態だから余計質が悪い。せめて片足なら少し痛むくらいで解決出来たろうに。
取り敢えず暴れられても面倒なので、脱いだ外套(マント)を彼女の頭からすっぽりと被せ、自由を奪う。次いで両腕からグローブを外し、左腕を彼女の口へ。これで舌を噛みきって死、なんて馬鹿な真似はしないだろう。
「さて、覚悟はいいかい?」
『ふ…むぐー!!』
「君が大人しくしてくれれば直ぐに終るよ、頑張れ」
指摘されなくとも分かる、今の僕の表情。
多分物凄くいい笑顔だったに違いない。ハルが滅多に見ない程、顔面蒼白だったから。
ーーーーーー
結果として、ハルは助かった。
息も絶え絶えになりながら、良くあの痛みに耐えてくれた。落ちかかった魂を肉体へと引き戻し、そして定着させる。その凄まじさは彼女に噛ませた僕の左腕が物語る。このまま何も処置しなければ、傷口が膿んで最悪腐り落ちるだろう。まぁ、僕は治癒で直ぐ無かった事に出来るんだけど、ハルはそうもいかないからね。
念の為に試みた足の腫れも、やはり効果はなかった。仕方なく患部を冷やして包帯を巻いてやる。先の本人も言った通り、ハルは他人より治りが遅いので、出来ればこのまま暫く動かないで貰いたいんだけど。
「…僕の話、聞いてた?」
『聞いてた聞いてた』
「その様子だとお前、ちゃんと理解してないね」
『いや、右から左に流れてった』
「流すな流すな」
彼女の呼吸、脈が正常に打ち始めた後、せめて体力が戻ってから動けと言い渡したのは確か昼前。そして横たえた筈の彼女がテントの外でフラフラしていたのが昼過ぎ。昼食を終えて戻って来て見れば寝床は藻抜けの殻。思わず頭を抱えて飛び出した僕が見たのは、木陰で死んだように座り込むハルだった。
「治りが遅いと自覚してるのなら、大人しくしてな」
『いやー、これくらいで立ち止まったら…一生立てない気がして』
「たまに小休止を挟むくらい問題ないだろう?」
『いやいや、あたし隠れ役なんで』
隠れ鬼の事を言っているのだろう。その場合の鬼は彼女の追っ手、という事になるが。逃げるだけでは芸が無いから、と最近は息を潜めながら何とかやり過ごしているらしい。
「此処でそんな目に遭う訳ないだろ?」
『分かんないよー?
ほら、あっちは昔っからしつこいからさ』
誰かさんたちとそっくり。
その中には僕も含まれているのだろうが。
「取り敢えずほら、戻るよ」
『えー、リハビリだと思って見逃してよ』
「まだ早い」
一応怪我人ではあるから。半ば強引に横抱きすれば、何かを言いかけて押し黙った。
頬に赤みが差しているところを見るに、こんな光景に慣れて居ないのだろう。そう言えば何時も俵担ぎだったな。
こんな性格故に、女らしい扱いを受けた事など無いのかも知れない。余り覚えのないこの感情を隠すかのように、そっぽを向いた彼女の耳が赤かったのは僕だけの秘密。