15.オイラの特効薬
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act.15-③:不覚の事態、不慮の事故
『あんたは、何時のハオ…?』
自然と声に出ていた。思った事をそのまま吐き出してしまった。音にするつもりはなかったのに。嗚呼、もう取り返しがつかない。
「ハル…何時の、とは?」
『あ…、だって、さっきまで…』
「さっきまで?確かにさっきまで一緒にいたよ。ザンチンと、口論してたろ?」
『……?』
「朝から辛いものを食べるなんて、って言い合ってたじゃないか」
『そ、れは…何時の話?』
「…じゃあ、逆に聞こう。君の言う”何時”って、いつの事?」
『さっき…いや、たった今?
あたしが、あんたに…』
「僕に?何?」
『あ、いや…』
目の前のハオは飄々としていた。さっきまでのハオもそうだったけど。何となく雰囲気というか、空気感というか、肌で感じる切迫感みたいなものが柔らかい事に気づいた。
それから景色も。ハオと、その場に居なかった顔も見受けられる。全員ではない。けれど、今此処に居るのはさっきまで一緒に居た顔触れは無かった。
『…ここ、日本?』
「…そう、まだ日本だよ」
『あ、じゃあ…まだ飛行機乗って無いんだ…』
「飛行機?」
幾度か深呼吸をして、立ち上がろうとするけど膝が嗤って力が入らなかった。徐々に冷静さを取り戻してきた今だから改めて思うのだ。
『可笑しいな、あたし死んだと思ったのに』
「…は?」
『あたし、あんたに喧嘩売って殺されたはずなんだよね。アメリカで』
「アメリカ…?」
『うん。だから此処がまだ日本なら、あたし過去に来たのかも』
さっきまで一緒に居た奴を思い出しながら、今目の前に居る愚弟とを見比べる。違いは無いはずだ。ジャラジャラ喧しい装飾、HAOと書かれたレゴブロックタイプの靴、すっぽんぽんにズボンとマント。長髪。葉と同じ顔してる癖に、ちっとも可愛くない胡散臭い顔。そして耳飾り…
『あぁあーーっ!!』
「…!ハル、うるさ」
『それ!耳飾り!違う!別人だ!』
「…これかい?」
よくよく見る事は無かった、小さな変化。
けど、確かにそれだけは違った。
『それ、ずっとシルバー一色だった?』
「そうだけど…」
『じゃあ、やっぱり違う奴か…いや、もしかしたらこれから変わるのか…?』
「これは僕のシンボル、象徴だ。今後この五芒星を違える事なんて…」
『あ、いや、形は同じだったんだけどさ。色がね、違ったの』
星は白、それをぐるりと囲む円は赤、それ以外が黒。対してこいつの耳飾りは銀一色である。
「…ところで、ハル。怪我してるね?」
『あ、あぁー…さっき落ちた時に…はは…』
言われて痛み始める足。どうやら捻ったらしい。若しくは捻挫したのか、僅かな熱と腫れぼったさを感じる。でも折れた様子はない。
『まぁ、歩けない程じゃないし…』
膝の震えも漸く治まってきたところ、此処でボケッとし続ける訳にはいかない。今あたしは皆の視線の中心に居る。色んな感情が入り交じった声が集中する。疑問とか、異端とか。…あー、それで。だから珍しく恐怖を感じて動けなかったのかも知れない。
「ハル、動くな」
『へ?あ、いや…大丈夫だよ。
これくらい、たまにやらかす事だし…』
「いいから、大人しくしてな」
両肩を押して、力で押さえ込まれる。あたしが、霊的なものを感じないからか。見た目、肉体的に年下だけど、それを差し引いてもこいつは男である。そう、力ではあたしに勝ち目はない。
「ラキスト、僕たちはテントに戻る。
あとは何時も通り、頼んだよ」
「はっ、お任せください!」
『え…あ、いや、あたしは大丈夫だってば!』
「ハル、怪我してる時くらい大人しくしなよ」
『いや、何時もの事だし。慣れてる』
「ハルさま、いたそう」
『いや、確かに意識すれば痛いけども!
気にしなきゃ全然平気だし。それにほら、あたしの怪我も昔から医者は匙を投げる!』
「ハル様、それは威張る事ではありません!」
『いや、だって仕方ないでしょ!
あたし、怪我とか病気しても他人より治り遅いし!』
「とにかく…」
『ぉわっ!?』
「君にはまだ聞きたい事が山ほどある。
せっかく捕まえたんだ、逃がしはしない」
『も、黙秘します!』
「別にいいけど…何処まで堪えられるかな?」
言い方は厭らしいけど、別に口で言えないような良からぬ事を企んでいる。という訳でなかった。愚弟の心が、現にそう示している。
肩に担がれて、ここ体制が結構お腹を圧迫する事に気づいた。声が出ない、ってか気持ち悪い…おえ…
「ハオさま、ハルさまが…」
「ははっ、静かになったろ?
…最初からこうしていれば良かったな」
おのれ、お前確信犯かよ!
いやいや、ホントにマジで、此処に留まる訳には行かないんだ。だって此処に長居すると…あいつと鉢合わせだけは勘弁して欲しい。
『…ぐっ、す、スッピー!』
「…!?」
彼が、最後の頼みの綱だった。
この状況から打破してくれる、味方は。
けれど…
「スピリット・オブ・ファイア…へぇ、考えたね。けど今動けば君、確実に死ぬよ?」
『…は?なん…いや、捻挫くらいで…』
「(…もしかして、気付いてないのか?)
お前、僕じゃない僕と対峙したんだろ?
殺されかけた時に何とも思わなかった?
そうだな、例えば…」
言われて気付いた。意識しなきゃ良かった。
本人も気付いて無いことを、何でこいつはポンポン言っちゃうかな。
『あたしは霊媒体質だけど、操られたとかはない』
そう、自分で断言してたじゃないか。
そうだよ、だって。今までまともに喰らう事は無かったんだから、今回が初めてなんだから。気付かなくても仕方ないじゃないか。
シャーマンだったら喰らった後に何らかの変化を引き起こす。例えば最悪死んだりとか。
でもあたしの場合、気づかないんだから。シャーマンより質が悪いし、無意識で何の変化も感じないからそのまま放置してしまう。
でも改めて言われるとダメだ、怪我したとこよりもその場所が気になって仕方ない。それに自分の意思に反して余計なものまで流れてくるし…
「君には治癒が効かないから治療は無理でも、それは治してやれる。だから安心しな」
状況を理解したのか、スッピーは何も言わずにその場から消えた。嗚呼、空気の読める奴だったのかお前。下手なKY…誰とは言わないけど、何処ぞでふんぞり返ってるG8より賢いな、偉い偉い。うん、誰とまでは断言しないけど。
『あんたは、何時のハオ…?』
自然と声に出ていた。思った事をそのまま吐き出してしまった。音にするつもりはなかったのに。嗚呼、もう取り返しがつかない。
「ハル…何時の、とは?」
『あ…、だって、さっきまで…』
「さっきまで?確かにさっきまで一緒にいたよ。ザンチンと、口論してたろ?」
『……?』
「朝から辛いものを食べるなんて、って言い合ってたじゃないか」
『そ、れは…何時の話?』
「…じゃあ、逆に聞こう。君の言う”何時”って、いつの事?」
『さっき…いや、たった今?
あたしが、あんたに…』
「僕に?何?」
『あ、いや…』
目の前のハオは飄々としていた。さっきまでのハオもそうだったけど。何となく雰囲気というか、空気感というか、肌で感じる切迫感みたいなものが柔らかい事に気づいた。
それから景色も。ハオと、その場に居なかった顔も見受けられる。全員ではない。けれど、今此処に居るのはさっきまで一緒に居た顔触れは無かった。
『…ここ、日本?』
「…そう、まだ日本だよ」
『あ、じゃあ…まだ飛行機乗って無いんだ…』
「飛行機?」
幾度か深呼吸をして、立ち上がろうとするけど膝が嗤って力が入らなかった。徐々に冷静さを取り戻してきた今だから改めて思うのだ。
『可笑しいな、あたし死んだと思ったのに』
「…は?」
『あたし、あんたに喧嘩売って殺されたはずなんだよね。アメリカで』
「アメリカ…?」
『うん。だから此処がまだ日本なら、あたし過去に来たのかも』
さっきまで一緒に居た奴を思い出しながら、今目の前に居る愚弟とを見比べる。違いは無いはずだ。ジャラジャラ喧しい装飾、HAOと書かれたレゴブロックタイプの靴、すっぽんぽんにズボンとマント。長髪。葉と同じ顔してる癖に、ちっとも可愛くない胡散臭い顔。そして耳飾り…
『あぁあーーっ!!』
「…!ハル、うるさ」
『それ!耳飾り!違う!別人だ!』
「…これかい?」
よくよく見る事は無かった、小さな変化。
けど、確かにそれだけは違った。
『それ、ずっとシルバー一色だった?』
「そうだけど…」
『じゃあ、やっぱり違う奴か…いや、もしかしたらこれから変わるのか…?』
「これは僕のシンボル、象徴だ。今後この五芒星を違える事なんて…」
『あ、いや、形は同じだったんだけどさ。色がね、違ったの』
星は白、それをぐるりと囲む円は赤、それ以外が黒。対してこいつの耳飾りは銀一色である。
「…ところで、ハル。怪我してるね?」
『あ、あぁー…さっき落ちた時に…はは…』
言われて痛み始める足。どうやら捻ったらしい。若しくは捻挫したのか、僅かな熱と腫れぼったさを感じる。でも折れた様子はない。
『まぁ、歩けない程じゃないし…』
膝の震えも漸く治まってきたところ、此処でボケッとし続ける訳にはいかない。今あたしは皆の視線の中心に居る。色んな感情が入り交じった声が集中する。疑問とか、異端とか。…あー、それで。だから珍しく恐怖を感じて動けなかったのかも知れない。
「ハル、動くな」
『へ?あ、いや…大丈夫だよ。
これくらい、たまにやらかす事だし…』
「いいから、大人しくしてな」
両肩を押して、力で押さえ込まれる。あたしが、霊的なものを感じないからか。見た目、肉体的に年下だけど、それを差し引いてもこいつは男である。そう、力ではあたしに勝ち目はない。
「ラキスト、僕たちはテントに戻る。
あとは何時も通り、頼んだよ」
「はっ、お任せください!」
『え…あ、いや、あたしは大丈夫だってば!』
「ハル、怪我してる時くらい大人しくしなよ」
『いや、何時もの事だし。慣れてる』
「ハルさま、いたそう」
『いや、確かに意識すれば痛いけども!
気にしなきゃ全然平気だし。それにほら、あたしの怪我も昔から医者は匙を投げる!』
「ハル様、それは威張る事ではありません!」
『いや、だって仕方ないでしょ!
あたし、怪我とか病気しても他人より治り遅いし!』
「とにかく…」
『ぉわっ!?』
「君にはまだ聞きたい事が山ほどある。
せっかく捕まえたんだ、逃がしはしない」
『も、黙秘します!』
「別にいいけど…何処まで堪えられるかな?」
言い方は厭らしいけど、別に口で言えないような良からぬ事を企んでいる。という訳でなかった。愚弟の心が、現にそう示している。
肩に担がれて、ここ体制が結構お腹を圧迫する事に気づいた。声が出ない、ってか気持ち悪い…おえ…
「ハオさま、ハルさまが…」
「ははっ、静かになったろ?
…最初からこうしていれば良かったな」
おのれ、お前確信犯かよ!
いやいや、ホントにマジで、此処に留まる訳には行かないんだ。だって此処に長居すると…あいつと鉢合わせだけは勘弁して欲しい。
『…ぐっ、す、スッピー!』
「…!?」
彼が、最後の頼みの綱だった。
この状況から打破してくれる、味方は。
けれど…
「スピリット・オブ・ファイア…へぇ、考えたね。けど今動けば君、確実に死ぬよ?」
『…は?なん…いや、捻挫くらいで…』
「(…もしかして、気付いてないのか?)
お前、僕じゃない僕と対峙したんだろ?
殺されかけた時に何とも思わなかった?
そうだな、例えば…」
言われて気付いた。意識しなきゃ良かった。
本人も気付いて無いことを、何でこいつはポンポン言っちゃうかな。
『あたしは霊媒体質だけど、操られたとかはない』
そう、自分で断言してたじゃないか。
そうだよ、だって。今までまともに喰らう事は無かったんだから、今回が初めてなんだから。気付かなくても仕方ないじゃないか。
シャーマンだったら喰らった後に何らかの変化を引き起こす。例えば最悪死んだりとか。
でもあたしの場合、気づかないんだから。シャーマンより質が悪いし、無意識で何の変化も感じないからそのまま放置してしまう。
でも改めて言われるとダメだ、怪我したとこよりもその場所が気になって仕方ない。それに自分の意思に反して余計なものまで流れてくるし…
「君には治癒が効かないから治療は無理でも、それは治してやれる。だから安心しな」
状況を理解したのか、スッピーは何も言わずにその場から消えた。嗚呼、空気の読める奴だったのかお前。下手なKY…誰とは言わないけど、何処ぞでふんぞり返ってるG8より賢いな、偉い偉い。うん、誰とまでは断言しないけど。