15.オイラの特効薬
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act.15-①:オイラの特効薬-side葉
「葉、もうハルを姉と慕うのは止めろ」
暗闇から一週間ぶりに見た世界。これからオレンジに染まるだろう空を、いつも以上に綺麗だと思ったのは今居る場所のせいか、はたまた。夕焼け(そら)が一際輝いて見えた。まるで太陽に翳(かざ)した琥珀みたいに。
「いや、意味分からん。
てか、それ一体どういう意味なんよ?」
腹が減って仕方ない、と訴えるも先ずは風呂が先だと問答無用で放り込まれた。ついでにまん太と、何故か竜まで一緒に。わざわざオイラを追いかけて出雲まで来たって行(くだり)を聞いた時は、嬉しいやら恥ずかしいやら悲しいやら悔しいやら。これ以上友達を傷付けんでいいように、強くなる為に帰って来たのに。まん太はそれを全部分かってて、辛く当たられるのを、追い返されるかも知れないのを承知で追いかけて来てくれた。それだけでオイラの顔はユルユルしっぱなし。アンナにはマヌケ顔って言われちまったけど、そうなった理由をちゃんと分かってくれてるから何か色々有り難かった。
あとは姉ちゃんに会えれば、そう意気込んで食事を終えたところでじいちゃんに呼ばれたのだ。そして冒頭の言葉である。
「奴がシャーマンでない事は既に確認した」
「…どうやって?」
「そんな事はどうでもいい」
「いや、良くないだろ。
姉ちゃんに何かしたんか?」
「…例え何かしたとしても、奴には何の障りもなかったがな」
「じいちゃん、一体何したんよ?」
一瞬言い淀んだ、でもまたいつもの表情になったじいちゃんを睨む。何が遭ったのか聞いても、何をしたのかも答えない。姉ちゃんの言動から実はがシャーマンかも…と思いすがったのは確かにオイラだけど、シャーマンじゃないと答えたのはじいちゃん。断言したその物言いに、カチンときたのは確かだし、その後も何も話そうとしない。
「明日の見送り、その前にお前を少し試させて貰う」
黄泉の穴で強くなった実力を確かめたいのだと言う。因みにじいちゃんの中では、もう姉ちゃんの話題は終了している。昔からそうだ、じいちゃんは興味が反れると無かった事にしてしまう。好きの反対の無関心。嫌いとも言わない。誰かがその人の話題を振っても空返事がいいとこ。大半は聞くという事に対して、空返事か無反応。
そうなったらもうオイラが何を言おうが、母ちゃんが不機嫌になろうが、ばあちゃんが咎めても何も変わらないので基本放置する事にしている。
ーーーーー
じいちゃんの部屋を後にして、縁側に顔を出すと浴衣姿のまん太がいた。オイラが昔着てたサイズがぴったりで本人には悪いが、ちょっとほっとした。
「おかえり、葉くん」
「おう、ただいま」
まん太の隣に腰掛けて庭先に足を投げ出す。ぷらぷらとわざと揺らしていたけど、それも何だか空しい。
「ハルさんの事?」
「んー、まぁな」
姉ちゃんが既に家を出た。単なる言葉としての意味じゃなくて本当に。仲違い、若しくは相容れない存在として。それを聞いてがっかりしたのはオイラだけじゃなかった。まん太も、そして漸く会えると思ったらしい竜が一番凹んでた。アンナは普通だった。オイラが修行中、予め聞いてたのかも知れない。
「家を出た事には驚いたけど、別に葉くんとどうなったって訳じゃないから、次会った時話してみればいいんじゃない?」
「でも、オイラも同じ麻倉だし…」
「名字は同じでも意味が違うでしょ!
もー、いつもの葉くんなら自分には関係ないって言うとこだよ?」
「…いつものオイラ、そんなやつだっけ?」
「少なくとも僕の中ではそうだよ!
自分は自分ってまるで口癖みたいにさ…」
「まぁ、確かに…オイラはオイラだな」
口癖みたいに、ってそんなに言ってたっけ?
いや、自分が気がついてないだけで案外言ってたかも知れない。
「…で、どうするの?
次ハルさんに会ったら…」
「んー、別にどうもしないんよ。
喧嘩したのはじいちゃんだし、オイラは怪我してぶっ倒れてただけだし。姉ちゃんの特製ハンバーグも食べ損ねたしな…」
「あー…そう言えばそんな事言ってたね」
「おう。姉ちゃんのメシ、めちゃくちゃ旨いんよ。ほら、あの弁当」
「え、あれハルさんが作ったの?」
学校でいつも豪勢なまん太のおかず。旨いには旨いらしいが、何だか油っぽいと言うまん太の口に、姉ちゃんの作った卵焼きを1つ突っ込んだ事があった。母ちゃんの卵焼きも好きだし、たまおのも旨いけど、自然と舌に馴染むというか、姉ちゃんのはまた別格で。
「うちのシェフにも見習って欲しいくらいだよ…」
あのふんわりととろけるような舌触り…、そう感想を述べたまん太の様子に思わずはにかむ。姉ちゃんの事を誉められると、何だか自分の事みたいに嬉しい気分になった。
こういうのを心が安らぐって例えるんだろうか。さっきまで不安で仕方なかった気持ちが急上昇。そうだ、オイラはオイラだ。姉ちゃんの事好きな自分が好きで堪らない。シャーマンとか一般人とか関係ない。例えシスコンって言われても。オイラには姉ちゃんが必要なんだ。そう考えると自然と笑顔になった。
「葉、もうハルを姉と慕うのは止めろ」
暗闇から一週間ぶりに見た世界。これからオレンジに染まるだろう空を、いつも以上に綺麗だと思ったのは今居る場所のせいか、はたまた。夕焼け(そら)が一際輝いて見えた。まるで太陽に翳(かざ)した琥珀みたいに。
「いや、意味分からん。
てか、それ一体どういう意味なんよ?」
腹が減って仕方ない、と訴えるも先ずは風呂が先だと問答無用で放り込まれた。ついでにまん太と、何故か竜まで一緒に。わざわざオイラを追いかけて出雲まで来たって行(くだり)を聞いた時は、嬉しいやら恥ずかしいやら悲しいやら悔しいやら。これ以上友達を傷付けんでいいように、強くなる為に帰って来たのに。まん太はそれを全部分かってて、辛く当たられるのを、追い返されるかも知れないのを承知で追いかけて来てくれた。それだけでオイラの顔はユルユルしっぱなし。アンナにはマヌケ顔って言われちまったけど、そうなった理由をちゃんと分かってくれてるから何か色々有り難かった。
あとは姉ちゃんに会えれば、そう意気込んで食事を終えたところでじいちゃんに呼ばれたのだ。そして冒頭の言葉である。
「奴がシャーマンでない事は既に確認した」
「…どうやって?」
「そんな事はどうでもいい」
「いや、良くないだろ。
姉ちゃんに何かしたんか?」
「…例え何かしたとしても、奴には何の障りもなかったがな」
「じいちゃん、一体何したんよ?」
一瞬言い淀んだ、でもまたいつもの表情になったじいちゃんを睨む。何が遭ったのか聞いても、何をしたのかも答えない。姉ちゃんの言動から実はがシャーマンかも…と思いすがったのは確かにオイラだけど、シャーマンじゃないと答えたのはじいちゃん。断言したその物言いに、カチンときたのは確かだし、その後も何も話そうとしない。
「明日の見送り、その前にお前を少し試させて貰う」
黄泉の穴で強くなった実力を確かめたいのだと言う。因みにじいちゃんの中では、もう姉ちゃんの話題は終了している。昔からそうだ、じいちゃんは興味が反れると無かった事にしてしまう。好きの反対の無関心。嫌いとも言わない。誰かがその人の話題を振っても空返事がいいとこ。大半は聞くという事に対して、空返事か無反応。
そうなったらもうオイラが何を言おうが、母ちゃんが不機嫌になろうが、ばあちゃんが咎めても何も変わらないので基本放置する事にしている。
ーーーーー
じいちゃんの部屋を後にして、縁側に顔を出すと浴衣姿のまん太がいた。オイラが昔着てたサイズがぴったりで本人には悪いが、ちょっとほっとした。
「おかえり、葉くん」
「おう、ただいま」
まん太の隣に腰掛けて庭先に足を投げ出す。ぷらぷらとわざと揺らしていたけど、それも何だか空しい。
「ハルさんの事?」
「んー、まぁな」
姉ちゃんが既に家を出た。単なる言葉としての意味じゃなくて本当に。仲違い、若しくは相容れない存在として。それを聞いてがっかりしたのはオイラだけじゃなかった。まん太も、そして漸く会えると思ったらしい竜が一番凹んでた。アンナは普通だった。オイラが修行中、予め聞いてたのかも知れない。
「家を出た事には驚いたけど、別に葉くんとどうなったって訳じゃないから、次会った時話してみればいいんじゃない?」
「でも、オイラも同じ麻倉だし…」
「名字は同じでも意味が違うでしょ!
もー、いつもの葉くんなら自分には関係ないって言うとこだよ?」
「…いつものオイラ、そんなやつだっけ?」
「少なくとも僕の中ではそうだよ!
自分は自分ってまるで口癖みたいにさ…」
「まぁ、確かに…オイラはオイラだな」
口癖みたいに、ってそんなに言ってたっけ?
いや、自分が気がついてないだけで案外言ってたかも知れない。
「…で、どうするの?
次ハルさんに会ったら…」
「んー、別にどうもしないんよ。
喧嘩したのはじいちゃんだし、オイラは怪我してぶっ倒れてただけだし。姉ちゃんの特製ハンバーグも食べ損ねたしな…」
「あー…そう言えばそんな事言ってたね」
「おう。姉ちゃんのメシ、めちゃくちゃ旨いんよ。ほら、あの弁当」
「え、あれハルさんが作ったの?」
学校でいつも豪勢なまん太のおかず。旨いには旨いらしいが、何だか油っぽいと言うまん太の口に、姉ちゃんの作った卵焼きを1つ突っ込んだ事があった。母ちゃんの卵焼きも好きだし、たまおのも旨いけど、自然と舌に馴染むというか、姉ちゃんのはまた別格で。
「うちのシェフにも見習って欲しいくらいだよ…」
あのふんわりととろけるような舌触り…、そう感想を述べたまん太の様子に思わずはにかむ。姉ちゃんの事を誉められると、何だか自分の事みたいに嬉しい気分になった。
こういうのを心が安らぐって例えるんだろうか。さっきまで不安で仕方なかった気持ちが急上昇。そうだ、オイラはオイラだ。姉ちゃんの事好きな自分が好きで堪らない。シャーマンとか一般人とか関係ない。例えシスコンって言われても。オイラには姉ちゃんが必要なんだ。そう考えると自然と笑顔になった。