14.何時もの事
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act.14-③:何時もの事-sideハオ
「やあ、久しぶり」
『おや、里帰りですかな愚弟くん』
「違うよ」
見慣れた気配が近付いて来たので大人しく其処に留まった。僕自ら動かなくていいなんて有り難い話だよね。実は密かにどう誘き出そうか、少し悩んでいた矢先だったんだ。
『せっかく目と鼻の先だと言うのに…』
「勿体ないと思う?」
『思ってないよ、ぜーんぜん』
僕が麻倉に近付かない理由、僕が祖である事など彼女には既にお見通しだから。今更「何で?」と聞かれる事はない。正直、楽でいい。
「ハルさま!」
『オパチョも来たんだねー』
「うん!」
『この先は止めておきなね?
監禁爺が子供みたいに拗ねてるからさ』
「ちっちぇな」
『あ、そうだ。爺で思ったんだけど、あたしも含め、麻倉って皆年取るとあーんなに身長縮むわけ?一体誰の遺伝?あたし嫌なんだけど』
「…その情報は君にとって一大事なの?」
『うん、わりと』
「…さてね、僕は爺になった事ないから」
『オパチョ聞いた?
未来王はやっぱ所詮自称止まりなんだよ』
「ハル」
『だって知らないんでしょ?』
「僕は過去に拘らない男なんだよ」
『嘘つけ、がっつり未練たらたらな癖して』
「…今日は自棄に噛みつくね。
何か嫌な思いでもした?」
『あー…うん、まぁ、これから』
…これから?
それが彼女自身で撒いた種なのかは分からないけど。でも何かあると把握出来ているのなら、オパチョ同様に予知能力が備わっている事になる。
「ハルさま、おぱちょとかえろ?」
『あー、ごめんオパチョ。ちょっと野暮用』
「?」
『ごめんね、まだ一緒にいれない』
「ハルさま…」
左手は僕の裾を掴んで、右手はオパチョと視線を合わせる為に屈んだハルの服を掴んだ。大きな瞳に映る彼女が、今にも溢れてしまいそうな涙で揺れる。ハルが言った意味を理解してはいるのだろうが、それでも心は納得しきれてはいない。そんな気持ちの現れだった。
「内容を聞こうか」
一人旅なら僕らが付いていってもいいだろう、何処かで自然を装って合流してもいいだろう。けれど彼女は、それすら否定しているように見える。
『あー…うん、ちょっとね』
「煮え切らないなぁ」
『うん、今回はね』
どう話したらいいのか、なんて。
余程面倒な事に関わっているのだろう。以前遭遇した、彼女を狙う奴ら然り。
「何処へ?外国?」
『いや、多分日本発進』
「なら、また会えるじゃないか」
『うん、いや、会える…には会えるんだろうけど』
「嗚呼、これからは葉たちと行動するから会いにくいって?」
『いやぁー…どうなんだろう?
"あいつ"次第?』
「"あいつ?"」
彼女の口からまた新しい疑問符が増えた。最近やっと"こっち"やら"あっち"なんかの意味を知れたというのに。
『あー…っと、"あいつ"ってハゲチラカシじゃなくてね』
それ以降また沈黙が続いた。
言いたくないのか、それとも言いにくい存在なのか。SOFみたいに。
『ま、あんたも何れ会うから。
あ、会った感想よろしくー。
"あいつ"ってば、在る意味問題児だからさ』
「(…会う前提か)」
今のところ、君以上の問題児には残念ながら会った事は無いんだけど、そんな君すら凌駕するというのか。
『"あいつ"はね、目的が迷子なのよ。
対してあたしはね、存在が可笑しいの』
…自分で言ってちゃ世話ないな。
まぁ、自覚あるだけまだマシか。
ーーーーー
二日後、彼女はそう断言した。
未だ離れたがらないオパチョを半ば強引に抱き上げて、空いた手をハルに伸ばす。
『…これは?』
「御守りさ」
家内安全とか交通安全とか、そんなちっちぇ効力じゃない。僕が彼女の為に作った呪(まじな)いだ。"必ず僕の元へ戻って来れるように"という願いを込めた、まぁ、迷子札かな?
『腕輪念珠?』
「そう、左手首に付けて。肌身離さずね」
『怖っ、何か監視されてる気分!』
「ははっ、強ち間違いじゃないな」
その効力は、僕が消えない限り存続し続ける強力なもの。例えそれが、王になってこの器を必要としなくなった後だとしても。本当の意味で願いが叶ったら砕けるから、永遠って事ではないけれど。
『ミサンガみたいなやつか…それでも怖いわ』
「君が…遠くに、行かなければいいだけの話なんだけどね」
『そうだね。あたしが愚弟って呼ぶの、あんたくらいだわ』
「うん、取り敢えず言葉のキャッチボールをしようか」
全く、相変わらず何の脈絡もない。
そんな君だから僕は余計に心配なんだよ。
例えそれが、血縁者である事を差し引いても。
「やあ、久しぶり」
『おや、里帰りですかな愚弟くん』
「違うよ」
見慣れた気配が近付いて来たので大人しく其処に留まった。僕自ら動かなくていいなんて有り難い話だよね。実は密かにどう誘き出そうか、少し悩んでいた矢先だったんだ。
『せっかく目と鼻の先だと言うのに…』
「勿体ないと思う?」
『思ってないよ、ぜーんぜん』
僕が麻倉に近付かない理由、僕が祖である事など彼女には既にお見通しだから。今更「何で?」と聞かれる事はない。正直、楽でいい。
「ハルさま!」
『オパチョも来たんだねー』
「うん!」
『この先は止めておきなね?
監禁爺が子供みたいに拗ねてるからさ』
「ちっちぇな」
『あ、そうだ。爺で思ったんだけど、あたしも含め、麻倉って皆年取るとあーんなに身長縮むわけ?一体誰の遺伝?あたし嫌なんだけど』
「…その情報は君にとって一大事なの?」
『うん、わりと』
「…さてね、僕は爺になった事ないから」
『オパチョ聞いた?
未来王はやっぱ所詮自称止まりなんだよ』
「ハル」
『だって知らないんでしょ?』
「僕は過去に拘らない男なんだよ」
『嘘つけ、がっつり未練たらたらな癖して』
「…今日は自棄に噛みつくね。
何か嫌な思いでもした?」
『あー…うん、まぁ、これから』
…これから?
それが彼女自身で撒いた種なのかは分からないけど。でも何かあると把握出来ているのなら、オパチョ同様に予知能力が備わっている事になる。
「ハルさま、おぱちょとかえろ?」
『あー、ごめんオパチョ。ちょっと野暮用』
「?」
『ごめんね、まだ一緒にいれない』
「ハルさま…」
左手は僕の裾を掴んで、右手はオパチョと視線を合わせる為に屈んだハルの服を掴んだ。大きな瞳に映る彼女が、今にも溢れてしまいそうな涙で揺れる。ハルが言った意味を理解してはいるのだろうが、それでも心は納得しきれてはいない。そんな気持ちの現れだった。
「内容を聞こうか」
一人旅なら僕らが付いていってもいいだろう、何処かで自然を装って合流してもいいだろう。けれど彼女は、それすら否定しているように見える。
『あー…うん、ちょっとね』
「煮え切らないなぁ」
『うん、今回はね』
どう話したらいいのか、なんて。
余程面倒な事に関わっているのだろう。以前遭遇した、彼女を狙う奴ら然り。
「何処へ?外国?」
『いや、多分日本発進』
「なら、また会えるじゃないか」
『うん、いや、会える…には会えるんだろうけど』
「嗚呼、これからは葉たちと行動するから会いにくいって?」
『いやぁー…どうなんだろう?
"あいつ"次第?』
「"あいつ?"」
彼女の口からまた新しい疑問符が増えた。最近やっと"こっち"やら"あっち"なんかの意味を知れたというのに。
『あー…っと、"あいつ"ってハゲチラカシじゃなくてね』
それ以降また沈黙が続いた。
言いたくないのか、それとも言いにくい存在なのか。SOFみたいに。
『ま、あんたも何れ会うから。
あ、会った感想よろしくー。
"あいつ"ってば、在る意味問題児だからさ』
「(…会う前提か)」
今のところ、君以上の問題児には残念ながら会った事は無いんだけど、そんな君すら凌駕するというのか。
『"あいつ"はね、目的が迷子なのよ。
対してあたしはね、存在が可笑しいの』
…自分で言ってちゃ世話ないな。
まぁ、自覚あるだけまだマシか。
ーーーーー
二日後、彼女はそう断言した。
未だ離れたがらないオパチョを半ば強引に抱き上げて、空いた手をハルに伸ばす。
『…これは?』
「御守りさ」
家内安全とか交通安全とか、そんなちっちぇ効力じゃない。僕が彼女の為に作った呪(まじな)いだ。"必ず僕の元へ戻って来れるように"という願いを込めた、まぁ、迷子札かな?
『腕輪念珠?』
「そう、左手首に付けて。肌身離さずね」
『怖っ、何か監視されてる気分!』
「ははっ、強ち間違いじゃないな」
その効力は、僕が消えない限り存続し続ける強力なもの。例えそれが、王になってこの器を必要としなくなった後だとしても。本当の意味で願いが叶ったら砕けるから、永遠って事ではないけれど。
『ミサンガみたいなやつか…それでも怖いわ』
「君が…遠くに、行かなければいいだけの話なんだけどね」
『そうだね。あたしが愚弟って呼ぶの、あんたくらいだわ』
「うん、取り敢えず言葉のキャッチボールをしようか」
全く、相変わらず何の脈絡もない。
そんな君だから僕は余計に心配なんだよ。
例えそれが、血縁者である事を差し引いても。