13.ほしのうたごえ
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act.13-①:真っ直ぐ行ってドーン!
こっち、こっち。まるで、いつか見た入り口みたいにトゥエガを誘導する。彼は戸惑いながら、そして疑いながら、和室から顔を覗かせた。
「お前、何で無事なの?」
『何でって…』
例えるなら小鬼の巣窟。石牢から逃げ出してから幾らか経った。空が赤みを帯始めている。腹拵えとしてカロリー的な携帯食を口に放り込んで、咀嚼しながら歩き続けた。途中でトイレはきちんと済ませ、水分補給は長期戦になる事を予測して、朝台所で拝借しておいた天然水で喉を潤した。簡単に言えば、もう何でもアリである。
随分前に住んでいた、それこそ物心つく前の話。それなのに家の構図を覚えているのは、あたしが昔から一ヶ所に留まらない、生まれついての探検好きであった事が起因しているんだと思われる。歩く度に思い出す、肌に触れる空気。そして、何十年経っても変わらない匂い。住人はさておき、此処一帯の景色はわりと好きな分類だ。
そんな中で今、その小鬼たちが多分あたしを探す為だけに数を増やしている。
『シャーマンって、持ち霊とか鬼とか使役する度に巫力を消費するって聞いたんだけど…』
「嗚呼…人によるが、大体自分が持つ巫力の五から三分の一ほどを注ぎ込んで顕現させるんだ」
『ほう、じゃあそろそろ落ちるのでは?』
「…かも知れないが、そうとも限らない」
『ほ?』
「アサクラはシャーマンの名門なんだろう?ならば、これくらいの体力は消耗したうちに入らないんじゃないか?」
『…と言うと?』
「芋づる式、または鼠算式ってな」
予め巫力を注ぎ込んだ一匹を、無数に分裂させる。加えて小鬼の媒介は小石や小枝、葉っぱなど。元々が脆く小さな物ばかりなので、大した巫力の消費にはならないだろうと。
…成る程、そういう方法もあるのか。
「もし体力消耗を狙った時間稼ぎなら、今のうちに方向性を変えた方がいい」
『分かった。じゃあ、それを利用しよう』
「は?」
そこまで話して冒頭に立ち返るのだ。
今まで見つからないように隠れながら行動していたけど、それを聞いた瞬間、あたしは立ち上がった。もちろん、周りは小鬼だらけ。そんな事をしたら直ぐに小鬼センサーに引っ掛かり御用となるだろう。けれど。
「いや、だから何で無事なの?」
『神様の通り道だからじゃない?』
日本の仕来たりで「真ん中は神様の通り道だから、歩くなら端を歩きなさい」という教えがある。此所はただの廊下で参道でもなければ神社でもないけれど。それでも迷う事なく、あたしは突き進んだ。勿論ど真ん中を。
面白い事に小鬼は此方を見ているようで見ていなかった。視線が合った気がしたのに、特にこれと言った動きはしない。ただ、ふよふよと浮いているだけ。
『ほら、行くよ?』
「あ、ちょ、待…!」
警戒しなくてもトゥエガなら最初から小鬼は認知してないってのに。何せトゥエガはベテラン精霊、小鬼も精霊と言えばそうだけど、ランクが違うのだ。比べる対象が可笑しい。だから小鬼は目上の精霊には手は出さない。例え主人に命じられても、例え自身が元々小石や小枝だったとしても。
『シャーマンとね、こっち側の違いって分かる?』
「……いや」
『考え方だよ、それだけ』
「いやいやいや、それ以外にもあるだろ?
戦い方とか能力とか…」
『でも根本はそれだけなの。考え方の違いから、シャーマンは独立を。こっち側は共存を選んだ』
簡単に言えばそう。シャーマンキングを目指す者なら誰もが知っているGS、あの天に聳える柱のような形はシャーマンに合わせたもの。こっちに背を向ける前は、随分昔は星を模した大きな球体だったというのに。
『シャーマンの、今の戦い方は独立後からだよ。その前は戦いなんて、滅多に起きなかったのに…』
「でも、シャーマンファイトは?昔からあったんだろ?パッチも、初代様だって…」
『嗚呼、あの時は…』
言いかけて歩を止めた。
「見つけました…!」
今朝、記憶で見たピンク色の女の子が行く手を阻んで居たから。
こっち、こっち。まるで、いつか見た入り口みたいにトゥエガを誘導する。彼は戸惑いながら、そして疑いながら、和室から顔を覗かせた。
「お前、何で無事なの?」
『何でって…』
例えるなら小鬼の巣窟。石牢から逃げ出してから幾らか経った。空が赤みを帯始めている。腹拵えとしてカロリー的な携帯食を口に放り込んで、咀嚼しながら歩き続けた。途中でトイレはきちんと済ませ、水分補給は長期戦になる事を予測して、朝台所で拝借しておいた天然水で喉を潤した。簡単に言えば、もう何でもアリである。
随分前に住んでいた、それこそ物心つく前の話。それなのに家の構図を覚えているのは、あたしが昔から一ヶ所に留まらない、生まれついての探検好きであった事が起因しているんだと思われる。歩く度に思い出す、肌に触れる空気。そして、何十年経っても変わらない匂い。住人はさておき、此処一帯の景色はわりと好きな分類だ。
そんな中で今、その小鬼たちが多分あたしを探す為だけに数を増やしている。
『シャーマンって、持ち霊とか鬼とか使役する度に巫力を消費するって聞いたんだけど…』
「嗚呼…人によるが、大体自分が持つ巫力の五から三分の一ほどを注ぎ込んで顕現させるんだ」
『ほう、じゃあそろそろ落ちるのでは?』
「…かも知れないが、そうとも限らない」
『ほ?』
「アサクラはシャーマンの名門なんだろう?ならば、これくらいの体力は消耗したうちに入らないんじゃないか?」
『…と言うと?』
「芋づる式、または鼠算式ってな」
予め巫力を注ぎ込んだ一匹を、無数に分裂させる。加えて小鬼の媒介は小石や小枝、葉っぱなど。元々が脆く小さな物ばかりなので、大した巫力の消費にはならないだろうと。
…成る程、そういう方法もあるのか。
「もし体力消耗を狙った時間稼ぎなら、今のうちに方向性を変えた方がいい」
『分かった。じゃあ、それを利用しよう』
「は?」
そこまで話して冒頭に立ち返るのだ。
今まで見つからないように隠れながら行動していたけど、それを聞いた瞬間、あたしは立ち上がった。もちろん、周りは小鬼だらけ。そんな事をしたら直ぐに小鬼センサーに引っ掛かり御用となるだろう。けれど。
「いや、だから何で無事なの?」
『神様の通り道だからじゃない?』
日本の仕来たりで「真ん中は神様の通り道だから、歩くなら端を歩きなさい」という教えがある。此所はただの廊下で参道でもなければ神社でもないけれど。それでも迷う事なく、あたしは突き進んだ。勿論ど真ん中を。
面白い事に小鬼は此方を見ているようで見ていなかった。視線が合った気がしたのに、特にこれと言った動きはしない。ただ、ふよふよと浮いているだけ。
『ほら、行くよ?』
「あ、ちょ、待…!」
警戒しなくてもトゥエガなら最初から小鬼は認知してないってのに。何せトゥエガはベテラン精霊、小鬼も精霊と言えばそうだけど、ランクが違うのだ。比べる対象が可笑しい。だから小鬼は目上の精霊には手は出さない。例え主人に命じられても、例え自身が元々小石や小枝だったとしても。
『シャーマンとね、こっち側の違いって分かる?』
「……いや」
『考え方だよ、それだけ』
「いやいやいや、それ以外にもあるだろ?
戦い方とか能力とか…」
『でも根本はそれだけなの。考え方の違いから、シャーマンは独立を。こっち側は共存を選んだ』
簡単に言えばそう。シャーマンキングを目指す者なら誰もが知っているGS、あの天に聳える柱のような形はシャーマンに合わせたもの。こっちに背を向ける前は、随分昔は星を模した大きな球体だったというのに。
『シャーマンの、今の戦い方は独立後からだよ。その前は戦いなんて、滅多に起きなかったのに…』
「でも、シャーマンファイトは?昔からあったんだろ?パッチも、初代様だって…」
『嗚呼、あの時は…』
言いかけて歩を止めた。
「見つけました…!」
今朝、記憶で見たピンク色の女の子が行く手を阻んで居たから。