11.「強くなりたい」
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act.11-②:似て非なる存在
暗い。冗談抜きで真っ暗だ。多少夜目が利くとはいえ、夜行性じゃあないんだから、この場の全体像までは把握出来ない。
閉じ込められてから何時間経った事だろう。
今のところ遭難した時用にと懐に忍ばせておいた非常食で食い繋いでいるが、それもいつ尽きるか。正確に言えば、有るにはあるのだが、何というか取り上げられたリュックに入れっぱなしなのだ。探偵七つ道具的な。
「お、何だそれ?」
『ドリンク剤的な飲むゼリー、ピーチ味』
「ほう、旨いのか?」
『んー、まあまあ』
実はカップ麺も有るんだけど、と胸からそれぞれ取り出せば「嗚呼、やけにデカいと思ったら」と笑われてしまった。全く、セクハラで訴えるよ。
『そー言えばお宅、花組3人集にも叔父さんにも見えなかったみたいね』
「嗚呼、何でだろうなぁ?」
『こっちの気があるんでない?』
「こっち、って…どっち?」
『だから、"こっち"』
"こっち"は紛れもなく、あたしサイドの住人の話だ。シャーマンだと良く同一視される、"こっち"である。若しくは王様が小細工したのかも知れない。
『"こっち"の連中って、シャーマンには見えない奴らばっかなんだわ』
存在しているのに、まるで存在してないかのように扱われる。本当の事なのに、何故か虚偽だ詐欺だと捉えられる。だから、あたしたちは名乗る事を辞めた。主張する事自体を辞めた。自分たちがこういう能力を持っていると、話す事を辞めた。シャーマンと、繋がりを持つ事を辞めた。未来の為に、子孫を残す事を止めた。
『だから貴重なんだよね、"こっち"って』
遠い昔に廃れた"こっち"の知識を持つだけでも貴重な事なのに、"こっち"の能力を受け継ぐ事は本当に有り得ないくらい稀少な体験。例えるなら広大なサハラ砂漠から、星の砂1粒を探し出すくらいに相当する。若しくは、それ以上か。
『でも、どうなんだろうねぇ?
パッチ発の"こっち"って、前例無いから』
そもそもシャーマンだった者が"こっち"側に来れるのか?逆はたまに聞くんだけど。
「何か問題でも?」
『んー…まず"こっち"って巫力とか無いんだよね。有っても2桁。3桁有る奴は"こっち"とは言わない』
「巫力が無いって…ほぼ死んだも同然じゃないか」
『そうだよ。そのギリギリなスリルを楽しむのが"こっち"側の特徴』
「…M?」
『逆、能力的にはドS』
あっという間に終わる事に定評がある、こっちの戦法。大変面白い事に、その全てをシャーマンは目視する事が出来ないのだ。お陰様で、シャーマンとしては厄介らしい愚弟の視界にも映らない。正に、こっち様々。
『シャーマンと同一視されるくらいだから似てはいるんだろうけど…』
巫力が無くて、持ち霊も居らず、媒介も無い。一般的に言う幽霊という分類は、視る事も触れる事も、存在を感じる事も出来ない。対して。所謂、精霊とか神様とか、そういった存在とは割りと良く逢う。多分、それくらいの存在になると、威厳と共に。
『永く其処に在るっていうのも影響してるんじゃないかなぁ?』
亀の甲より年の功、といった具合に。
下は土地神様から、上は天上世界に至るまで。あたしの、こっちの知り合いは幅広い。
『さぁーてーと』
どっこいせ。わざと声を出して、面倒臭そうに立ち上がる。その様を見るや、あたしがこられから行動しようとしている何かを察したらしいトゥエガが、自ら荷物持ちを買ってでた。まぁ、大した量ではないけど。
『 "ーーーーーーーー" 』
敢えて音(こえ)には出さず。
その方が、ドッキリって感じでしょう?
暗い。冗談抜きで真っ暗だ。多少夜目が利くとはいえ、夜行性じゃあないんだから、この場の全体像までは把握出来ない。
閉じ込められてから何時間経った事だろう。
今のところ遭難した時用にと懐に忍ばせておいた非常食で食い繋いでいるが、それもいつ尽きるか。正確に言えば、有るにはあるのだが、何というか取り上げられたリュックに入れっぱなしなのだ。探偵七つ道具的な。
「お、何だそれ?」
『ドリンク剤的な飲むゼリー、ピーチ味』
「ほう、旨いのか?」
『んー、まあまあ』
実はカップ麺も有るんだけど、と胸からそれぞれ取り出せば「嗚呼、やけにデカいと思ったら」と笑われてしまった。全く、セクハラで訴えるよ。
『そー言えばお宅、花組3人集にも叔父さんにも見えなかったみたいね』
「嗚呼、何でだろうなぁ?」
『こっちの気があるんでない?』
「こっち、って…どっち?」
『だから、"こっち"』
"こっち"は紛れもなく、あたしサイドの住人の話だ。シャーマンだと良く同一視される、"こっち"である。若しくは王様が小細工したのかも知れない。
『"こっち"の連中って、シャーマンには見えない奴らばっかなんだわ』
存在しているのに、まるで存在してないかのように扱われる。本当の事なのに、何故か虚偽だ詐欺だと捉えられる。だから、あたしたちは名乗る事を辞めた。主張する事自体を辞めた。自分たちがこういう能力を持っていると、話す事を辞めた。シャーマンと、繋がりを持つ事を辞めた。未来の為に、子孫を残す事を止めた。
『だから貴重なんだよね、"こっち"って』
遠い昔に廃れた"こっち"の知識を持つだけでも貴重な事なのに、"こっち"の能力を受け継ぐ事は本当に有り得ないくらい稀少な体験。例えるなら広大なサハラ砂漠から、星の砂1粒を探し出すくらいに相当する。若しくは、それ以上か。
『でも、どうなんだろうねぇ?
パッチ発の"こっち"って、前例無いから』
そもそもシャーマンだった者が"こっち"側に来れるのか?逆はたまに聞くんだけど。
「何か問題でも?」
『んー…まず"こっち"って巫力とか無いんだよね。有っても2桁。3桁有る奴は"こっち"とは言わない』
「巫力が無いって…ほぼ死んだも同然じゃないか」
『そうだよ。そのギリギリなスリルを楽しむのが"こっち"側の特徴』
「…M?」
『逆、能力的にはドS』
あっという間に終わる事に定評がある、こっちの戦法。大変面白い事に、その全てをシャーマンは目視する事が出来ないのだ。お陰様で、シャーマンとしては厄介らしい愚弟の視界にも映らない。正に、こっち様々。
『シャーマンと同一視されるくらいだから似てはいるんだろうけど…』
巫力が無くて、持ち霊も居らず、媒介も無い。一般的に言う幽霊という分類は、視る事も触れる事も、存在を感じる事も出来ない。対して。所謂、精霊とか神様とか、そういった存在とは割りと良く逢う。多分、それくらいの存在になると、威厳と共に。
『永く其処に在るっていうのも影響してるんじゃないかなぁ?』
亀の甲より年の功、といった具合に。
下は土地神様から、上は天上世界に至るまで。あたしの、こっちの知り合いは幅広い。
『さぁーてーと』
どっこいせ。わざと声を出して、面倒臭そうに立ち上がる。その様を見るや、あたしがこられから行動しようとしている何かを察したらしいトゥエガが、自ら荷物持ちを買ってでた。まぁ、大した量ではないけど。
『 "ーーーーーーーー" 』
敢えて音(こえ)には出さず。
その方が、ドッキリって感じでしょう?