10.送り火を一つ
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ハルが捕獲された。
その話題は一瞬にしてコミューン内部を駆け巡った。トゥエガを見送った連中は、ずっとその同行を此方から見守っていたから余計にだろう。実際トゥエガのポジションを狙う輩も多い。
「どう見る?」
『まぁ、いいんじゃないですか?』
お前が言うのであれば、特に慌てる事態ではなかろうが、外野の連中はどうにも騒がしくていかん。
『わざと、捕まったっぽいし』
…確かに。トゥエガが共に在るのにも関わらず、先方はその存在にすら気付いて居ないようだった。
『こっちの才能が在るのかね、もしくは隠れ両利きか』
「まさか、トゥエガが?」
『此方に興味を持っていると聞く。まぁ、立場的にも、その方向で動いて損は無いのでは?』
「宗教みたいに言わんといてくだされ」
『ほぼほぼそうじゃないか』
トゥエガを此方へ引き込むという。本人は願ったり叶ったりだろうが、奴は仮でなくともパッチ。己の立場は弁えさせねばなるまい。次いで、他の者が黙ってもおるまい。きっと何らかの衝突が、近い内に何処かで。
「ふむ、オレは面白いと思うがな。アレは放っておくに限る」
「…藤様!」
「はっはっは、苦しゅうないぞキィバよ」
まさかの王が現れた。自らG8の座より退き、自由気儘にコミューンを移動する嘗てのSKである。しかも、トゥエガが護るべき存在は間違いなくコイツだ。
コイツと称したのはSKで在りながら欲が無く、興味本位で勝ち取った玉座は、今では最高の御飾りとして隅の方へ追いやったと話す行為に起因している。
おのが魂のぶつかり合い、それを征した矢先に願い出たのは「何か面白そうだった」という言葉のみ。それでは流石にG8の座は与えられぬだろうと。おかげで奴は王にして王に非ず、と言われた名ばかりのSKの1人として、常にふらふらしている。
「いやぁ、照れるなぁ」
「誰も誉めとりゃせんわ」
この王にして、あの護人在り。全く近頃の若いもんは…SKが何たるかを理解していないのかと、頭を抱えたくなる。
「して初代、首尾は如何かな?」
『そうだねぇ』
全面的に下の連中に丸投げしといた、と続いた言葉に大口を開けて藤は笑う。どうしてこうも嘗てのSKは呑気な連中が多いのか。
まぁ、おかげで永遠に続く余生を毎日退屈せずに楽して過ごせるのだが。
『まぁ、なるようになるでしょ』
時代とはそういうものだ。行動を起こしても、起こさずとも時間は流れる。皆、平等に。足りる足りぬは、自身が生きてきた証。そして標でもある。今、寿命が在る者は幸せだと思わなければ。毎日平穏無事が何より。ただ、我らの場合は寿命も何も在ったものではないが。
『時に藤、君は何しに此処へ?』
「嗚呼、忘れておった。実はな、元右利き一桁共が降りたらしいのだ」
「何じゃと?!何故それを早く言わぬ!」
「面白そうな話だろう?」
「何処がじゃ!あっちは容赦なぞせんのだぞ!?」
「だから面白いのだ。嗚呼この事態を楽しめんとは…」
この大馬鹿者に言っても時間の無駄、ならば次の手を早急に打たねばならない。
『…キィバ、ハルに連絡。次此方へ来る事があれば少しばかり引き留めて欲しい』
「御意」
「何だ、せっかくの祭事に水を差すのか?」
『まさか、色を一滴垂らしてやろうと思ってね』
「ほう…、それは楽しみだ」
この不変の世界に色は無い。ただ在るのは薄汚れたモノクロのみ。元鮮やかに彩られた世界は今や、見る影もない。死して尚欲を持つとは、そういう事だ。
故に期待してしまうのだ。彼女がもたらす、今後の軌跡を。
その話題は一瞬にしてコミューン内部を駆け巡った。トゥエガを見送った連中は、ずっとその同行を此方から見守っていたから余計にだろう。実際トゥエガのポジションを狙う輩も多い。
「どう見る?」
『まぁ、いいんじゃないですか?』
お前が言うのであれば、特に慌てる事態ではなかろうが、外野の連中はどうにも騒がしくていかん。
『わざと、捕まったっぽいし』
…確かに。トゥエガが共に在るのにも関わらず、先方はその存在にすら気付いて居ないようだった。
『こっちの才能が在るのかね、もしくは隠れ両利きか』
「まさか、トゥエガが?」
『此方に興味を持っていると聞く。まぁ、立場的にも、その方向で動いて損は無いのでは?』
「宗教みたいに言わんといてくだされ」
『ほぼほぼそうじゃないか』
トゥエガを此方へ引き込むという。本人は願ったり叶ったりだろうが、奴は仮でなくともパッチ。己の立場は弁えさせねばなるまい。次いで、他の者が黙ってもおるまい。きっと何らかの衝突が、近い内に何処かで。
「ふむ、オレは面白いと思うがな。アレは放っておくに限る」
「…藤様!」
「はっはっは、苦しゅうないぞキィバよ」
まさかの王が現れた。自らG8の座より退き、自由気儘にコミューンを移動する嘗てのSKである。しかも、トゥエガが護るべき存在は間違いなくコイツだ。
コイツと称したのはSKで在りながら欲が無く、興味本位で勝ち取った玉座は、今では最高の御飾りとして隅の方へ追いやったと話す行為に起因している。
おのが魂のぶつかり合い、それを征した矢先に願い出たのは「何か面白そうだった」という言葉のみ。それでは流石にG8の座は与えられぬだろうと。おかげで奴は王にして王に非ず、と言われた名ばかりのSKの1人として、常にふらふらしている。
「いやぁ、照れるなぁ」
「誰も誉めとりゃせんわ」
この王にして、あの護人在り。全く近頃の若いもんは…SKが何たるかを理解していないのかと、頭を抱えたくなる。
「して初代、首尾は如何かな?」
『そうだねぇ』
全面的に下の連中に丸投げしといた、と続いた言葉に大口を開けて藤は笑う。どうしてこうも嘗てのSKは呑気な連中が多いのか。
まぁ、おかげで永遠に続く余生を毎日退屈せずに楽して過ごせるのだが。
『まぁ、なるようになるでしょ』
時代とはそういうものだ。行動を起こしても、起こさずとも時間は流れる。皆、平等に。足りる足りぬは、自身が生きてきた証。そして標でもある。今、寿命が在る者は幸せだと思わなければ。毎日平穏無事が何より。ただ、我らの場合は寿命も何も在ったものではないが。
『時に藤、君は何しに此処へ?』
「嗚呼、忘れておった。実はな、元右利き一桁共が降りたらしいのだ」
「何じゃと?!何故それを早く言わぬ!」
「面白そうな話だろう?」
「何処がじゃ!あっちは容赦なぞせんのだぞ!?」
「だから面白いのだ。嗚呼この事態を楽しめんとは…」
この大馬鹿者に言っても時間の無駄、ならば次の手を早急に打たねばならない。
『…キィバ、ハルに連絡。次此方へ来る事があれば少しばかり引き留めて欲しい』
「御意」
「何だ、せっかくの祭事に水を差すのか?」
『まさか、色を一滴垂らしてやろうと思ってね』
「ほう…、それは楽しみだ」
この不変の世界に色は無い。ただ在るのは薄汚れたモノクロのみ。元鮮やかに彩られた世界は今や、見る影もない。死して尚欲を持つとは、そういう事だ。
故に期待してしまうのだ。彼女がもたらす、今後の軌跡を。