00.姉ちゃん
従兄弟の姉ちゃん
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
act.00-②:意思疎通ならず-sideハオ
「だから言ったろ?此処は危ないって」
僕に首根っこを掴まれて、ゆらり揺れる奴を見下ろした。眼下には変わらず雪が斜面を転がり落ちる。本来ならS・O・Fに乗せる所だが、彼女にはそれも出来ない。
和泉田ハル。シャーマンの家系に生まれながら、生まれつき相応の能力が備わっていなかった娘だ。
「出来損ない」
麻倉現当主である葉明に、そう見限られて出雲を追い出された過去を持つ。
「ハル様、お怪我は?」
「心配無いよ、この僕に助けられて不貞腐れてるだけさ」
見えない・感じない・触れないの三重苦。何の力も無い癖に、一人で何でもこなそうとする。その姿勢は誉めたものだが、後先考えず、無謀にも突き進むだけしか能のない行動は頂けない。
「僕と関わりたくないのなら、せめて今後はちゃんと皆の言葉を聞く事だね」
気を抜けば肩まですっぽり埋まってしまいそうな雪面に、静かに下ろすと同時に彼女は眉を顰めた。
―――
「愚弟」
僕をそう呼称するのは、後にも先にも多分彼女だけだ。蔑みの眼差しで一瞥するのは、憎むべき存在だからだろうが、何しろ彼女には霊視を含む霊障が一切通用しないので、実際そうなのかは定かではないが。
そう言えば。何故か彼女は此処に来たがった。雪山なら何処でもいいという訳でもなく「此処に行きたい」と、数日前から騒ぎ始めたのだ。
元々、常に行動を共にしていた訳じゃない。ふらり気が傾いた場所で、意図せず妙に出会す事が多いというだけ。
「何かに導かれた」よりは「何者かに謀られた」とでも例えようか。そして、今も。誰か探すように忙(せわ)しなく眼球を動かし続けている。
君は何を見ている?
君には何が見える?
此処に存在しているのは、争いを好まない精霊ばかり。霊感の無い君の視界に入る者なんて皆無だと思うんだけど。せめて、精霊王-GSクラスになれば君の瞳にも映る筈だ。
『嗚呼、うん。ラスボスって感じだよね』
唐突に。口火を切って、何を言い出すのかと思えば。会話が成り立たない台詞を吐き出すものだから、毎回ハルに向けられる周囲の視線が痛い。
「ついに可笑しくなったのか」と。いや「最初から可笑しい」とも。そもそも「シャーマンと人間は理解し合えない」とまで。随分酷い言い草だが、皆の音なき言い分は分かるつもりだ。僕も常にそう思っているから。
『まぁ、そうだよね』
何かが欠落した変な人間。それは現代に生まれ落ちて、初めて出逢った時もそうだった。
「僕の子孫なのに見えないって本当?」
『いぁ、良かった良かった』
「…良くないよ」
『万歳三唱』
「………」
思えばあの頃から既に可笑しかった。例えば質問を質問で返すし、聞いても無い事を急に語り出す。勝手に話して自己満足して何時の間にか終了。故に皆、ハルには近寄ろうとしない。
「ほら、行くよ?」
それでも。こうして僕が彼女に構う事を、敬遠する皆が何も言わないのは、単に僕が恐いからではなく。前に一度ハルが魅せた、あの言動が発端となっている。
だから思うんだ。もしかしたらハルに霊感自体が全く無い訳ではなく、その素質が惰眠を貪っているだけなのではないかと。
まぁ、僕の考え過ぎとは思うけどね。
「だから言ったろ?此処は危ないって」
僕に首根っこを掴まれて、ゆらり揺れる奴を見下ろした。眼下には変わらず雪が斜面を転がり落ちる。本来ならS・O・Fに乗せる所だが、彼女にはそれも出来ない。
和泉田ハル。シャーマンの家系に生まれながら、生まれつき相応の能力が備わっていなかった娘だ。
「出来損ない」
麻倉現当主である葉明に、そう見限られて出雲を追い出された過去を持つ。
「ハル様、お怪我は?」
「心配無いよ、この僕に助けられて不貞腐れてるだけさ」
見えない・感じない・触れないの三重苦。何の力も無い癖に、一人で何でもこなそうとする。その姿勢は誉めたものだが、後先考えず、無謀にも突き進むだけしか能のない行動は頂けない。
「僕と関わりたくないのなら、せめて今後はちゃんと皆の言葉を聞く事だね」
気を抜けば肩まですっぽり埋まってしまいそうな雪面に、静かに下ろすと同時に彼女は眉を顰めた。
―――
「愚弟」
僕をそう呼称するのは、後にも先にも多分彼女だけだ。蔑みの眼差しで一瞥するのは、憎むべき存在だからだろうが、何しろ彼女には霊視を含む霊障が一切通用しないので、実際そうなのかは定かではないが。
そう言えば。何故か彼女は此処に来たがった。雪山なら何処でもいいという訳でもなく「此処に行きたい」と、数日前から騒ぎ始めたのだ。
元々、常に行動を共にしていた訳じゃない。ふらり気が傾いた場所で、意図せず妙に出会す事が多いというだけ。
「何かに導かれた」よりは「何者かに謀られた」とでも例えようか。そして、今も。誰か探すように忙(せわ)しなく眼球を動かし続けている。
君は何を見ている?
君には何が見える?
此処に存在しているのは、争いを好まない精霊ばかり。霊感の無い君の視界に入る者なんて皆無だと思うんだけど。せめて、精霊王-GSクラスになれば君の瞳にも映る筈だ。
『嗚呼、うん。ラスボスって感じだよね』
唐突に。口火を切って、何を言い出すのかと思えば。会話が成り立たない台詞を吐き出すものだから、毎回ハルに向けられる周囲の視線が痛い。
「ついに可笑しくなったのか」と。いや「最初から可笑しい」とも。そもそも「シャーマンと人間は理解し合えない」とまで。随分酷い言い草だが、皆の音なき言い分は分かるつもりだ。僕も常にそう思っているから。
『まぁ、そうだよね』
何かが欠落した変な人間。それは現代に生まれ落ちて、初めて出逢った時もそうだった。
「僕の子孫なのに見えないって本当?」
『いぁ、良かった良かった』
「…良くないよ」
『万歳三唱』
「………」
思えばあの頃から既に可笑しかった。例えば質問を質問で返すし、聞いても無い事を急に語り出す。勝手に話して自己満足して何時の間にか終了。故に皆、ハルには近寄ろうとしない。
「ほら、行くよ?」
それでも。こうして僕が彼女に構う事を、敬遠する皆が何も言わないのは、単に僕が恐いからではなく。前に一度ハルが魅せた、あの言動が発端となっている。
だから思うんだ。もしかしたらハルに霊感自体が全く無い訳ではなく、その素質が惰眠を貪っているだけなのではないかと。
まぁ、僕の考え過ぎとは思うけどね。