11.「強くなりたい」
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act.11-③:「強くなりたい」-side葉
オイラはシャーマンだけど、友達が出来た。霊が見える少年、まん太。持ち霊でボディーガードの阿弥陀丸と笑って、一緒に道を歩んで来た。
木刀の竜を懲らしめた所に始まり、蓮と戦って怪我して、潤と会って沙門の口寄せに成功した時も。ホロホロに勝ってSFで1勝上げた時も。全部隣にはまん太が居た。
でも、今オイラの視界にまん太は居ない。
2戦目のファウストで、オイラは負けた。惨敗だった。敗因は大事な友達を傷つけられた事に対する怒り。それが周りを見えなくして、巫力切れで負けた。そのまま崩れるようにして病院に担ぎ込まれ、入院。自分の傷は大した事無かったけど、友達を巻き込んでしまった心の傷の方が痛くて、何度も悔やんだ。
オイラがもっとしっかりしていれば、まん太を巻き込まずに済んだのに…!
そしてアンナの言葉も尤もだ。これ以上、まん太を…大事な友達を巻き込む訳にはいかない。言っちゃいけない言葉で追い払って、見たくない表情を浮かべて走り去る。
オイラは最低な事をしたんよ。だから、嫌われたっていい。まん太が、無事なら。
―――――
「何考えてんのよ?」
「いやぁ、別に…」
少しずつ近付く、家への距離。SKになってノンビリするって宣言して、家を出た筈なのに足が重い。
じいちゃんに怒られるから?
まん太が此処に居ないから?
「あ、そうそう。ハルが戻ってるらしいわ」
「え…出雲に、姉ちゃんが?」
「ええ、何でも山登りをしていた所を幹久が捕まえたとか」
「姉ちゃん、何目指しとるんよ…」
「さぁ?けど、問題はその後ね」
「? ただいまー」
玄関に有る筈の靴は無かった。姉ちゃんの泥で汚れたスニーカー。有ったのはじいちゃんの草履とばあちゃんの突っ掛け、下駄。小さい頃から見慣れた物ばかりだ。
「おぉ、帰ったか」
「おぉ…すまん、じいちゃん。この前負けちまったんよ…」
「…嗚呼、その事なら既にアンナから話は聞いている。ご苦労じゃったな」
「いえ…」
アンナとじいちゃん。オイラが知らないで、何故か繋がってたらしい。報告とか連絡とか。何も知らんかったのは、自分だけなんだろうかとか。色々考える。
「荷物を置いて離れに来い、話がある」
話、それは多分今日食べたい晩御飯のおかずとかではなくて。今後のSFについての会議みたいなものだろう。これから先、勝ち進む為にはどうすべきか。そういった話。
「そうだ、じいちゃん。姉ちゃんは?
戻ってるんだろ?」
離れにある茶室で、じいちゃんと向かい合って座る。アンナと阿弥陀丸は、じいちゃんの意向で側には居ない。オイラ以外にじいちゃんの側には、数匹の小鬼がチョロチョロとお茶汲みで忙しそうだ。
「ハルは確かに戻った。正確には連れ戻したと言った方が良かろう。しかしだな…」
じいちゃんが言葉を濁す。煮え切らない表情が、またオイラを困惑させた。
「…居らんのだ、何処を探しても」
じいちゃんと小鬼総出で、この広い屋敷を探したと。けれど部屋の何処にも居らず、気配も消えてしまったという。終いには其処に有った筈の靴までもが、忽然と姿を消したという。要するにお手上げ状態なんだと。
「外に出たんか?」
「それは考え難い。屋敷の至る所は小鬼に見張らせておるのでな」
出られそうな窓、扉他。姉ちゃんには小鬼が見えないだろうけど、それでも。
「飲まず食わずで早3日、そろそろ腹も減ってくる頃なんじゃが…」
「うへぇ、3日もかよ!?」
姉ちゃん、隠れん坊得意やったんか?
いや、この場合は鬼ごっこになるんか?
そもそも、一体何処に行ったんよ。
「…ーして、葉よ。
強くなりたいとは本当か?」
まるで姉ちゃんの事はついでみたいに、じいちゃんの真剣な眼差しが自分を向く。
場の、空気が一瞬にして変わった。ぞくりとした電流に似た感情な神経を伝って脳に届く。そうだ、オイラは元々その為に来たんだ。姉ちゃんの事は心配だけど、でもあの性格だし、きっと何処かに無事で居るはずだ。
「オイラは友達をーまん太を助けられなかった。オイラがもっと強ければ、あんな怖い目に遭わさずに済んだのに…!」
悔しい。
素直に口から溢れた言葉。俯いて畳を見るオイラには、今じいちゃんがどんな顔してるのかは分からなかった。
じいちゃんが、熱い茶をゴクリと飲み込む音。声は無い。オイラの決意と覚悟を試しているかのような視線と僅かな沈黙の後で、じいちゃんが告げたのは次なる修行内容。
死ね、と。
それは決して意地悪でも、オイラを嫌いになった訳でもなくて。肉体的な死亡を意味する修行、死の淵に近付けば近付くだけ、巫力は跳ね上がるという。
7日7晩という過酷過ぎる内容。以前の自分ならきっと、逃げ出すだろうけど。
何でか、今のオイラには逃げるっていう選択肢は初めから頭に無くて。そもそも、強くなる為に帰って来たんだから、寧ろ喜んでそれを受け入れようと思う。
飯が食えんのは辛いだろうけど。
まぁ、なんとかなるんよ。
オイラはシャーマンだけど、友達が出来た。霊が見える少年、まん太。持ち霊でボディーガードの阿弥陀丸と笑って、一緒に道を歩んで来た。
木刀の竜を懲らしめた所に始まり、蓮と戦って怪我して、潤と会って沙門の口寄せに成功した時も。ホロホロに勝ってSFで1勝上げた時も。全部隣にはまん太が居た。
でも、今オイラの視界にまん太は居ない。
2戦目のファウストで、オイラは負けた。惨敗だった。敗因は大事な友達を傷つけられた事に対する怒り。それが周りを見えなくして、巫力切れで負けた。そのまま崩れるようにして病院に担ぎ込まれ、入院。自分の傷は大した事無かったけど、友達を巻き込んでしまった心の傷の方が痛くて、何度も悔やんだ。
オイラがもっとしっかりしていれば、まん太を巻き込まずに済んだのに…!
そしてアンナの言葉も尤もだ。これ以上、まん太を…大事な友達を巻き込む訳にはいかない。言っちゃいけない言葉で追い払って、見たくない表情を浮かべて走り去る。
オイラは最低な事をしたんよ。だから、嫌われたっていい。まん太が、無事なら。
―――――
「何考えてんのよ?」
「いやぁ、別に…」
少しずつ近付く、家への距離。SKになってノンビリするって宣言して、家を出た筈なのに足が重い。
じいちゃんに怒られるから?
まん太が此処に居ないから?
「あ、そうそう。ハルが戻ってるらしいわ」
「え…出雲に、姉ちゃんが?」
「ええ、何でも山登りをしていた所を幹久が捕まえたとか」
「姉ちゃん、何目指しとるんよ…」
「さぁ?けど、問題はその後ね」
「? ただいまー」
玄関に有る筈の靴は無かった。姉ちゃんの泥で汚れたスニーカー。有ったのはじいちゃんの草履とばあちゃんの突っ掛け、下駄。小さい頃から見慣れた物ばかりだ。
「おぉ、帰ったか」
「おぉ…すまん、じいちゃん。この前負けちまったんよ…」
「…嗚呼、その事なら既にアンナから話は聞いている。ご苦労じゃったな」
「いえ…」
アンナとじいちゃん。オイラが知らないで、何故か繋がってたらしい。報告とか連絡とか。何も知らんかったのは、自分だけなんだろうかとか。色々考える。
「荷物を置いて離れに来い、話がある」
話、それは多分今日食べたい晩御飯のおかずとかではなくて。今後のSFについての会議みたいなものだろう。これから先、勝ち進む為にはどうすべきか。そういった話。
「そうだ、じいちゃん。姉ちゃんは?
戻ってるんだろ?」
離れにある茶室で、じいちゃんと向かい合って座る。アンナと阿弥陀丸は、じいちゃんの意向で側には居ない。オイラ以外にじいちゃんの側には、数匹の小鬼がチョロチョロとお茶汲みで忙しそうだ。
「ハルは確かに戻った。正確には連れ戻したと言った方が良かろう。しかしだな…」
じいちゃんが言葉を濁す。煮え切らない表情が、またオイラを困惑させた。
「…居らんのだ、何処を探しても」
じいちゃんと小鬼総出で、この広い屋敷を探したと。けれど部屋の何処にも居らず、気配も消えてしまったという。終いには其処に有った筈の靴までもが、忽然と姿を消したという。要するにお手上げ状態なんだと。
「外に出たんか?」
「それは考え難い。屋敷の至る所は小鬼に見張らせておるのでな」
出られそうな窓、扉他。姉ちゃんには小鬼が見えないだろうけど、それでも。
「飲まず食わずで早3日、そろそろ腹も減ってくる頃なんじゃが…」
「うへぇ、3日もかよ!?」
姉ちゃん、隠れん坊得意やったんか?
いや、この場合は鬼ごっこになるんか?
そもそも、一体何処に行ったんよ。
「…ーして、葉よ。
強くなりたいとは本当か?」
まるで姉ちゃんの事はついでみたいに、じいちゃんの真剣な眼差しが自分を向く。
場の、空気が一瞬にして変わった。ぞくりとした電流に似た感情な神経を伝って脳に届く。そうだ、オイラは元々その為に来たんだ。姉ちゃんの事は心配だけど、でもあの性格だし、きっと何処かに無事で居るはずだ。
「オイラは友達をーまん太を助けられなかった。オイラがもっと強ければ、あんな怖い目に遭わさずに済んだのに…!」
悔しい。
素直に口から溢れた言葉。俯いて畳を見るオイラには、今じいちゃんがどんな顔してるのかは分からなかった。
じいちゃんが、熱い茶をゴクリと飲み込む音。声は無い。オイラの決意と覚悟を試しているかのような視線と僅かな沈黙の後で、じいちゃんが告げたのは次なる修行内容。
死ね、と。
それは決して意地悪でも、オイラを嫌いになった訳でもなくて。肉体的な死亡を意味する修行、死の淵に近付けば近付くだけ、巫力は跳ね上がるという。
7日7晩という過酷過ぎる内容。以前の自分ならきっと、逃げ出すだろうけど。
何でか、今のオイラには逃げるっていう選択肢は初めから頭に無くて。そもそも、強くなる為に帰って来たんだから、寧ろ喜んでそれを受け入れようと思う。
飯が食えんのは辛いだろうけど。
まぁ、なんとかなるんよ。