08.何処までも深い
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「どう思う?」
茎子が帰省したのを機に木乃を呼び寄せ、座敷で互いの顔を突き合わせる。本来なら青森が恐山で暮らす木乃を、わざわざ下山させてまで話し合いなぞする筈もないが。
「葉の話が事実なら、一刻も早く連れ戻すべきですね」
「ハルが奴に会う前に……まぁ、もしかしたら遅い決断かも知れんが」
「問題はどうやってハルの居場所を突き止めるか、だ」
最善の方法は、何処ぞで油を売っているだろう娘婿に頼むが吉。しかし問題の幹久は修行に出たきり連絡を寄越さぬ始末。
「あいつの行動力は一体誰に似たのやら…」
「ふふ、きっと父親譲りなのでしょう」
「嗚呼喜ぶべきか、悲しむべきか…」
嫁いだ娘・実(みのり)の婿は根性逞しい。それ故に多少難易度の高い仕事を任せても、大体二つ返事で翌日には現地へ飛んでしまう。実も、元々引っ込み思案だった性格が、結婚を機に吹っ切れたのだろう。シャーマンとしては落ちこぼれであったが、今では一端の占星術士として夫婦仲良く仕事に勤しんでいる。
「姉さんの話では観光地など、人の多い場所には行かないそうです」
「だから、困るのだ」
麻倉には先祖最大の汚点である、麻倉葉王を倒すという使命がある。奴は必ずSFに参加し、王となるべく今も日々力を蓄えている筈だ。
我が孫、葉にその使命を託し、出来る事は何でもしてきた。己の経験に基づき、立派なシャーマンとしての教育を、嫌々ながら受ける葉に叩き込んだ。ただ葉には素質は有れど、体力は無いし、決して逞しいとは言えない。
「(どうにかして、ハルを連れ戻さねば…)」
シャーマンとして最も必要な能力が無かった為、可能性どころか見向きもしなかったのは事実。孫でありながら孫として見ていない、認めていない部分もあった。最近までは。
それが葉の電話で考えが変わったのだ。自分でも現金な奴だとは思う。しかし打倒葉王、その為ならば可能性があるというハルを、立派なシャーマンに育てようではないか。
使命の為に利用している、それは分かっている。しかし、立ち向かう為の布石は多いに越した事はない。葉とアンナ、そこへハルが加われば奴もそう簡単に手は出して来ないだろうと踏んで。
「まぁ…もし見つかったとしても、そう簡単にあたしらの言う事を聞くようなタマじゃあないだろうがね」
「そこを何とかするのが、葉の腕の見せ所だろうが!」
「でも父さん、炎を自ら離れたあの子をどうやって?」
「ぐ…!」
「あんたの占いでも駄目だったそうじゃないか。年喰って質でも落ちたのかい?」
「それはお前も大して変わらんだろうが!」
「あたしゃ経験がものを言うイタコなんだ、不調だか不景気だか知らんが、それをあたしに当たられても困る」
「っ、黙っておれば!このクソババア!」
「あんたもそう変わらんだろう、えぇ?このクソじじい」
「まぁまぁ」
…ゴホン。取り敢えず、今後の目標は決まった。霊障が効かぬ面倒臭い体質は健在らしいので、実力公使にはなるだろうが。これも麻倉、引いては世界の為だ。それが解らぬ子ではない。ハルならばきっと、葉の良い支えとなろう。
それはまるで、針の穴ほど小さな可能性(ひかり)。
茎子が帰省したのを機に木乃を呼び寄せ、座敷で互いの顔を突き合わせる。本来なら青森が恐山で暮らす木乃を、わざわざ下山させてまで話し合いなぞする筈もないが。
「葉の話が事実なら、一刻も早く連れ戻すべきですね」
「ハルが奴に会う前に……まぁ、もしかしたら遅い決断かも知れんが」
「問題はどうやってハルの居場所を突き止めるか、だ」
最善の方法は、何処ぞで油を売っているだろう娘婿に頼むが吉。しかし問題の幹久は修行に出たきり連絡を寄越さぬ始末。
「あいつの行動力は一体誰に似たのやら…」
「ふふ、きっと父親譲りなのでしょう」
「嗚呼喜ぶべきか、悲しむべきか…」
嫁いだ娘・実(みのり)の婿は根性逞しい。それ故に多少難易度の高い仕事を任せても、大体二つ返事で翌日には現地へ飛んでしまう。実も、元々引っ込み思案だった性格が、結婚を機に吹っ切れたのだろう。シャーマンとしては落ちこぼれであったが、今では一端の占星術士として夫婦仲良く仕事に勤しんでいる。
「姉さんの話では観光地など、人の多い場所には行かないそうです」
「だから、困るのだ」
麻倉には先祖最大の汚点である、麻倉葉王を倒すという使命がある。奴は必ずSFに参加し、王となるべく今も日々力を蓄えている筈だ。
我が孫、葉にその使命を託し、出来る事は何でもしてきた。己の経験に基づき、立派なシャーマンとしての教育を、嫌々ながら受ける葉に叩き込んだ。ただ葉には素質は有れど、体力は無いし、決して逞しいとは言えない。
「(どうにかして、ハルを連れ戻さねば…)」
シャーマンとして最も必要な能力が無かった為、可能性どころか見向きもしなかったのは事実。孫でありながら孫として見ていない、認めていない部分もあった。最近までは。
それが葉の電話で考えが変わったのだ。自分でも現金な奴だとは思う。しかし打倒葉王、その為ならば可能性があるというハルを、立派なシャーマンに育てようではないか。
使命の為に利用している、それは分かっている。しかし、立ち向かう為の布石は多いに越した事はない。葉とアンナ、そこへハルが加われば奴もそう簡単に手は出して来ないだろうと踏んで。
「まぁ…もし見つかったとしても、そう簡単にあたしらの言う事を聞くようなタマじゃあないだろうがね」
「そこを何とかするのが、葉の腕の見せ所だろうが!」
「でも父さん、炎を自ら離れたあの子をどうやって?」
「ぐ…!」
「あんたの占いでも駄目だったそうじゃないか。年喰って質でも落ちたのかい?」
「それはお前も大して変わらんだろうが!」
「あたしゃ経験がものを言うイタコなんだ、不調だか不景気だか知らんが、それをあたしに当たられても困る」
「っ、黙っておれば!このクソババア!」
「あんたもそう変わらんだろう、えぇ?このクソじじい」
「まぁまぁ」
…ゴホン。取り敢えず、今後の目標は決まった。霊障が効かぬ面倒臭い体質は健在らしいので、実力公使にはなるだろうが。これも麻倉、引いては世界の為だ。それが解らぬ子ではない。ハルならばきっと、葉の良い支えとなろう。
それはまるで、針の穴ほど小さな可能性(ひかり)。