07.ところどころで
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見失った、完全に見失ってしまった。ハル様の姿はおろか、気配までも。まるで張り詰めた糸が切れたかのようにプツリと、初めから其処に何も存在しなかったかのようだ。
民宿・炎を出て、それから?
嗚呼、一体何処へ行ってしまわれたのか。アジトへ戻る度に皆の視線が痛い。それどころか、ハオ様に「苦労かけるね」なんて…嗚呼、本当に申し訳ない!
「ハル様ーっ!どちらに居られるのですか、ハル様ー!!」
もう何十回と叫び続けた呼びかけに、今日も応えは無く。あれから1週間になろうかと言うのに、全く手掛かりは掴めぬまま夜を迎えた。
本戦が始まる前には何としても御側に……
『うっさいよ、ラキスト。近所迷惑になるだろ?』
「…!!」
『全く何やってんだか』
声がする。確かに聞こえる。我武者羅になって捜し求めていた声。だが、そのお姿は何処にも無く。
「ハル様、一体どちらに…!」
『…ん?嗚呼そっか、まだ此処だと見えないのか』
「…?」
一歩また一歩と声が近付く。そのお姿は相変わらず瞳には映らない。これはどういう事か、答えを探して自問自答するが一向に目的は果たせず。
『シャーマンって視ようとするから見えないんだろうね』
「それは、一体どういう…」
『愚弟(あいつ)もそう、真っ先に内側を覗き視ようとするでしょ?だから見えないんだよ』
真後ろで、声が立ち止まった。勢い良く振り返ってみるも、其処にハル様は居らず。
『偶には目を閉じて視野を広げてみるのもアリだね』
「それは…矛盾、しておりませんか?」
『いいや?でも、その意味が分からない内は、ラキストがちゃんとシャーマンしてるって証拠だろうね』
声が動く。其処へ手を伸ばしても擦り抜ける。在るのは声のみ、気配すら無い。
『あとお願いだからさ、葉達の近くで、あたしを"様"付けして呼ばないでね』
「は、気をつけます…」
『ありがとう』
ふわりと風が吹き抜けた。しかし次の瞬間には、まるで突風のような不可解な衝撃が襲い、思わず目を瞑る。そして恐る恐る目を開けると目の前には久し振りに見る少女の姿が在った。
「ハル様!」
『ははっ、お疲れー』
伸ばした手は空を掴む事無く、彼女の衣服に容易に触れる事が出来た。嗚呼、良かった…貴女にもしもの事が遭ったらハオ様に顔向け出来ないどころか、私は…
『大袈裟だなぁ』
「いいえ、決してそのような事は…!」
『ははっ、ご苦労かけます』
「そう思って下さるなら、もう少し行動を改めて頂きたい」
『何故?あたしは愚弟の子孫ってだけで仲間でも無いのに』
「だからです!それにこれはほぼ確定ですが、ハル様の能力が判明次第、ハオ様がお迎えに上がるとの事です」
『ふーん…じゃあ、頑張って分析でも何でもしてよ。あそこで転がってる人達連れてさ』
「転がって…」
ハル様が視線を逸らした先、其処に居たのは数人の体格のいい男。そしてその顔には些か見覚えがあった。確か最近ハオ様の仲間になりたいと申し出た者達だ。無論そんな雑魚共に会わせる訳は無いので、話を聞いたハオ様はただ笑うのみだったが。
『ハオがどうのって、良く分からない事叫びながら飛び出して来たから、オトしといた』
「…落とす、ですか?」
『うーん、意味は似てるかな?でも多分漢字が違う』
ニュアンスが違うんだろうと笑う少女の脇をすり抜け、倒れている男達に駆け寄る。外傷は無く、息も安定している。普通に生活する分としては何の問題も無い。だが…
「…何を、されたのです?」
『何も?』
「…本当に?」
『うん』
彼らは現時点でシャーマンではなかった。媒介と思(おぼ)しき物は壊され、彼らの持ち霊すら既に其処には居らず。
「ハル様、今一度お聞きします…」
『何度聞いても答えは同じ』
「ハル様」
『まぁ、頑張れ』
「っ、ハル様…!まだ話は終わっておりません!」
『あたし説教きらーい』
「ハル様、そのような事言っておられる場合ですか!これは大変な事態なのです!どうか御理解下さい!!」
『…じゃあ、大変ついでにもう1つ』
去って行こうとする姿は不意に立ち止まり、空を見上げる。今度は何が、と口を開きかけたところで頭上に光が走った。
眩い巨大な光は空に長く尾を引いて、天を駆ける。
500年に1度行われるシャーマンファイト、その開始を告げる星―ラゴウ。時間にすれば一瞬の出来事だったが、それは何十倍にも感じられる程永い永い時間に感じた。
『本当はね、あれ昨日流れる予定だったんだ。でもね、せっかくだから生で見たいだろうって、わざわざ1日待って貰ったんだ』
「何を…、っ!まさかラゴウを…?!」
『うん、有り難い話だよねぇ』
「いやいやいや!」
『それも含めて一旦愚弟に報告しておいでよ。こっちはちょっと事情が変わったんで、もう暫くは日本に居るからさ』
「っ、ではハル様も一緒に!」
『行かない。用があるなら、そっちからおいで?』
頑張って探してね、と何時もの調子でへらりと笑って。
その後はまるで、煙に撒かれたかと思うように忽然とその姿を消した。
民宿・炎を出て、それから?
嗚呼、一体何処へ行ってしまわれたのか。アジトへ戻る度に皆の視線が痛い。それどころか、ハオ様に「苦労かけるね」なんて…嗚呼、本当に申し訳ない!
「ハル様ーっ!どちらに居られるのですか、ハル様ー!!」
もう何十回と叫び続けた呼びかけに、今日も応えは無く。あれから1週間になろうかと言うのに、全く手掛かりは掴めぬまま夜を迎えた。
本戦が始まる前には何としても御側に……
『うっさいよ、ラキスト。近所迷惑になるだろ?』
「…!!」
『全く何やってんだか』
声がする。確かに聞こえる。我武者羅になって捜し求めていた声。だが、そのお姿は何処にも無く。
「ハル様、一体どちらに…!」
『…ん?嗚呼そっか、まだ此処だと見えないのか』
「…?」
一歩また一歩と声が近付く。そのお姿は相変わらず瞳には映らない。これはどういう事か、答えを探して自問自答するが一向に目的は果たせず。
『シャーマンって視ようとするから見えないんだろうね』
「それは、一体どういう…」
『愚弟(あいつ)もそう、真っ先に内側を覗き視ようとするでしょ?だから見えないんだよ』
真後ろで、声が立ち止まった。勢い良く振り返ってみるも、其処にハル様は居らず。
『偶には目を閉じて視野を広げてみるのもアリだね』
「それは…矛盾、しておりませんか?」
『いいや?でも、その意味が分からない内は、ラキストがちゃんとシャーマンしてるって証拠だろうね』
声が動く。其処へ手を伸ばしても擦り抜ける。在るのは声のみ、気配すら無い。
『あとお願いだからさ、葉達の近くで、あたしを"様"付けして呼ばないでね』
「は、気をつけます…」
『ありがとう』
ふわりと風が吹き抜けた。しかし次の瞬間には、まるで突風のような不可解な衝撃が襲い、思わず目を瞑る。そして恐る恐る目を開けると目の前には久し振りに見る少女の姿が在った。
「ハル様!」
『ははっ、お疲れー』
伸ばした手は空を掴む事無く、彼女の衣服に容易に触れる事が出来た。嗚呼、良かった…貴女にもしもの事が遭ったらハオ様に顔向け出来ないどころか、私は…
『大袈裟だなぁ』
「いいえ、決してそのような事は…!」
『ははっ、ご苦労かけます』
「そう思って下さるなら、もう少し行動を改めて頂きたい」
『何故?あたしは愚弟の子孫ってだけで仲間でも無いのに』
「だからです!それにこれはほぼ確定ですが、ハル様の能力が判明次第、ハオ様がお迎えに上がるとの事です」
『ふーん…じゃあ、頑張って分析でも何でもしてよ。あそこで転がってる人達連れてさ』
「転がって…」
ハル様が視線を逸らした先、其処に居たのは数人の体格のいい男。そしてその顔には些か見覚えがあった。確か最近ハオ様の仲間になりたいと申し出た者達だ。無論そんな雑魚共に会わせる訳は無いので、話を聞いたハオ様はただ笑うのみだったが。
『ハオがどうのって、良く分からない事叫びながら飛び出して来たから、オトしといた』
「…落とす、ですか?」
『うーん、意味は似てるかな?でも多分漢字が違う』
ニュアンスが違うんだろうと笑う少女の脇をすり抜け、倒れている男達に駆け寄る。外傷は無く、息も安定している。普通に生活する分としては何の問題も無い。だが…
「…何を、されたのです?」
『何も?』
「…本当に?」
『うん』
彼らは現時点でシャーマンではなかった。媒介と思(おぼ)しき物は壊され、彼らの持ち霊すら既に其処には居らず。
「ハル様、今一度お聞きします…」
『何度聞いても答えは同じ』
「ハル様」
『まぁ、頑張れ』
「っ、ハル様…!まだ話は終わっておりません!」
『あたし説教きらーい』
「ハル様、そのような事言っておられる場合ですか!これは大変な事態なのです!どうか御理解下さい!!」
『…じゃあ、大変ついでにもう1つ』
去って行こうとする姿は不意に立ち止まり、空を見上げる。今度は何が、と口を開きかけたところで頭上に光が走った。
眩い巨大な光は空に長く尾を引いて、天を駆ける。
500年に1度行われるシャーマンファイト、その開始を告げる星―ラゴウ。時間にすれば一瞬の出来事だったが、それは何十倍にも感じられる程永い永い時間に感じた。
『本当はね、あれ昨日流れる予定だったんだ。でもね、せっかくだから生で見たいだろうって、わざわざ1日待って貰ったんだ』
「何を…、っ!まさかラゴウを…?!」
『うん、有り難い話だよねぇ』
「いやいやいや!」
『それも含めて一旦愚弟に報告しておいでよ。こっちはちょっと事情が変わったんで、もう暫くは日本に居るからさ』
「っ、ではハル様も一緒に!」
『行かない。用があるなら、そっちからおいで?』
頑張って探してね、と何時もの調子でへらりと笑って。
その後はまるで、煙に撒かれたかと思うように忽然とその姿を消した。