07.ところどころで
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
民宿・炎の裏手に回る。そこに広がるのは最近見慣れた田んぼじゃなかった。
おいでおいでと手招きされる。近付くと、何時か見た入り口が大きな口を開けて待っていた。「お帰り」と奥から聞こえる。洞窟みたいな空間に反響して、それがあたしの耳に届いた頃には、ちょうど背後で何かが閉ざされた後だった。
―――――
「お!もう帰って来たのか?」
『うん、ただいまトゥエガ』
一時休戦とばかりに肩を回すと小さく骨が鳴った。慢性的な肩凝りではないが、流石に慣れない土地での旅は疲れる。
玄関先で重い荷物を降ろしながら溜め息を吐けば彼は「年寄りみたいだな」と笑う。その顔を見るだけでも目の保養だ。久々だなぁ、と危うく思い出に浸りかけて立ち上がると、座敷に居るだろうキィバに向かって話し掛ける。案の定その嗄(しゃが)れた声に導かれるまま、座敷前の廊下まで歩を進めた。
キィバは元パッチ族族長である。それも大昔の、まだ愚弟の存在が影も形も無い程の。今は此処G・S内部にある、とある神様のコミューンで隠居暮らしの真っ最中だ。因みにトゥエガも元パッチで十祭司だったが、キィバとは代が異なる為、普段は別のコミューンに存在している。が、良くこうやってふらりと遊びに来るのだ。理由はこのコミューンが一番居心地が良いかららしい。暇人か。
「お入り」
『うん、失礼します』
「はい」と言わない所があたしらしい、とまたトゥエガが笑う。そう言えばコイツ、あたしと居ると良く笑ってたっけ。
「先ずは報告を訊こうか」
大した話は無いと前置いて、あたしが旅を始めたばかりの頃に出会した事件とか、出会った人達とかについて話す。途中で出会った愚弟の事はあくまでついでとして。
『あ、あのハ…ウルヴァがね』
「わざわざ言い直さなくても、もうハゲでいいんじゃないか?事実だろう?」
『うん、あれはストレスだと思うのよ』
「死ぬ前も何か愚痴ってたからな」
『そう!それをあたしにあたられても困るっての!』
「仕方なかろう。"こちら"の事情を知る者で地上に在る対象と言えばお前しか居るまい」
「スピリット・オブ・ファイアは知っているのでは?」
「だが今や"あちら"の物ではないだろう?」
「嗚呼、確かに…」
ウルヴァも、実は元パッチ族族長である。但し生きた時代が悪かった。愚痴の1つ言いたくなる気持ちも分からなくはない。しかし、これは神のみぞ知る、というやつで。
「いい迷惑だな」
『全くだ』
「それもまた、今で言うグレート・スピリッツの意思というやつだ」
誰それが何時死ぬ。運命だと言うか、G・Sの意思(せい)と例えるか。あたしは単に奴が弱かったからだと思う。その点は愚弟に同意する。
「あの…初代、もし宜しければ自分も共に行きたいのですが」
「"そちら"の王が許したらな」
「では急ぎ許可を取って参ります。…という訳だ、悪いがちょっと待っててくれ」
『おう、行てらー』
瞬時に姿を消したトゥエガを見送ってから一言。
「多分、許可は下りんと思うがね」
『うん、あたしも同じく』
仮にも元十祭司、仮にも王の警護を任されたうちの1人だ。そう簡単にホイホイ許可が下りたなら、今頃地上はある意味大混乱だ。それでなくても、今の地上に興味を持つ者は多いというのに。
「お、忘れるところであった。ククドが降りたそうだ」
『…は?1人で?』
「うむ、纏まっておると捕まる確率が高くなるからな」
『マジでか…』
「まぁ、散歩と称しておったから、その内ふらりと戻って来るだろうが」
それでいいのかパッチ族族長!一応じゃなくても、仮にも同じ時代の王様だろうに!
というかトゥエガに護るべき王が居るように、ククドはキィバの警護対象でしょうに!
まぁ、でもククドだし…何か遭るなんて事無いだろうけど。
「悪い、遅くなった」
『大丈夫、全然待ってない』
彼が戻って来たのは許可を貰いに旅立って約1時間後の事。あーでもないこーでもないと雑談を繰り返していたので、時間なんて全く気にならなかった。
「聞いて驚け!なんと二つ返事でGOサインだ!」
『マジか!全く何考えてんのかね…』
「単に暇だったんじゃないのかい?」
「正しく、その通りでした!」
『全く、どいつもこいつも』
「という訳で暫く宜しくな!」
『へいへい、何を好んで地上に興味を持つやら…』
「そりゃあ、500年に1度の大イベントだ!皆恨めしそうに眺めていたさ!」
『それで良く君だけ許可が下りたよねって話よ』
「奴の事だ、お前が一緒なら…が理由ではないか?」
「流石、初代様!」
『うげ…』
思いっきり嫌な顔をしてしまったが、別にトゥエガが嫌いって訳じゃない。寧ろ好きな部類だ。ただ一緒に戻るとなると、厄介事が増えるのは必須。何せ普通に、1人の精霊としてカウントされるからだ。しかも問題はそれだけじゃなくて…
「諦めろ、何時かバレる運命だったのだから」
『うぅ…』
まさかこのトゥエガも、実は愚弟の関係者でしたって誰が予想出来るだろうか。いや、無理だな。うん。
おいでおいでと手招きされる。近付くと、何時か見た入り口が大きな口を開けて待っていた。「お帰り」と奥から聞こえる。洞窟みたいな空間に反響して、それがあたしの耳に届いた頃には、ちょうど背後で何かが閉ざされた後だった。
―――――
「お!もう帰って来たのか?」
『うん、ただいまトゥエガ』
一時休戦とばかりに肩を回すと小さく骨が鳴った。慢性的な肩凝りではないが、流石に慣れない土地での旅は疲れる。
玄関先で重い荷物を降ろしながら溜め息を吐けば彼は「年寄りみたいだな」と笑う。その顔を見るだけでも目の保養だ。久々だなぁ、と危うく思い出に浸りかけて立ち上がると、座敷に居るだろうキィバに向かって話し掛ける。案の定その嗄(しゃが)れた声に導かれるまま、座敷前の廊下まで歩を進めた。
キィバは元パッチ族族長である。それも大昔の、まだ愚弟の存在が影も形も無い程の。今は此処G・S内部にある、とある神様のコミューンで隠居暮らしの真っ最中だ。因みにトゥエガも元パッチで十祭司だったが、キィバとは代が異なる為、普段は別のコミューンに存在している。が、良くこうやってふらりと遊びに来るのだ。理由はこのコミューンが一番居心地が良いかららしい。暇人か。
「お入り」
『うん、失礼します』
「はい」と言わない所があたしらしい、とまたトゥエガが笑う。そう言えばコイツ、あたしと居ると良く笑ってたっけ。
「先ずは報告を訊こうか」
大した話は無いと前置いて、あたしが旅を始めたばかりの頃に出会した事件とか、出会った人達とかについて話す。途中で出会った愚弟の事はあくまでついでとして。
『あ、あのハ…ウルヴァがね』
「わざわざ言い直さなくても、もうハゲでいいんじゃないか?事実だろう?」
『うん、あれはストレスだと思うのよ』
「死ぬ前も何か愚痴ってたからな」
『そう!それをあたしにあたられても困るっての!』
「仕方なかろう。"こちら"の事情を知る者で地上に在る対象と言えばお前しか居るまい」
「スピリット・オブ・ファイアは知っているのでは?」
「だが今や"あちら"の物ではないだろう?」
「嗚呼、確かに…」
ウルヴァも、実は元パッチ族族長である。但し生きた時代が悪かった。愚痴の1つ言いたくなる気持ちも分からなくはない。しかし、これは神のみぞ知る、というやつで。
「いい迷惑だな」
『全くだ』
「それもまた、今で言うグレート・スピリッツの意思というやつだ」
誰それが何時死ぬ。運命だと言うか、G・Sの意思(せい)と例えるか。あたしは単に奴が弱かったからだと思う。その点は愚弟に同意する。
「あの…初代、もし宜しければ自分も共に行きたいのですが」
「"そちら"の王が許したらな」
「では急ぎ許可を取って参ります。…という訳だ、悪いがちょっと待っててくれ」
『おう、行てらー』
瞬時に姿を消したトゥエガを見送ってから一言。
「多分、許可は下りんと思うがね」
『うん、あたしも同じく』
仮にも元十祭司、仮にも王の警護を任されたうちの1人だ。そう簡単にホイホイ許可が下りたなら、今頃地上はある意味大混乱だ。それでなくても、今の地上に興味を持つ者は多いというのに。
「お、忘れるところであった。ククドが降りたそうだ」
『…は?1人で?』
「うむ、纏まっておると捕まる確率が高くなるからな」
『マジでか…』
「まぁ、散歩と称しておったから、その内ふらりと戻って来るだろうが」
それでいいのかパッチ族族長!一応じゃなくても、仮にも同じ時代の王様だろうに!
というかトゥエガに護るべき王が居るように、ククドはキィバの警護対象でしょうに!
まぁ、でもククドだし…何か遭るなんて事無いだろうけど。
「悪い、遅くなった」
『大丈夫、全然待ってない』
彼が戻って来たのは許可を貰いに旅立って約1時間後の事。あーでもないこーでもないと雑談を繰り返していたので、時間なんて全く気にならなかった。
「聞いて驚け!なんと二つ返事でGOサインだ!」
『マジか!全く何考えてんのかね…』
「単に暇だったんじゃないのかい?」
「正しく、その通りでした!」
『全く、どいつもこいつも』
「という訳で暫く宜しくな!」
『へいへい、何を好んで地上に興味を持つやら…』
「そりゃあ、500年に1度の大イベントだ!皆恨めしそうに眺めていたさ!」
『それで良く君だけ許可が下りたよねって話よ』
「奴の事だ、お前が一緒なら…が理由ではないか?」
「流石、初代様!」
『うげ…』
思いっきり嫌な顔をしてしまったが、別にトゥエガが嫌いって訳じゃない。寧ろ好きな部類だ。ただ一緒に戻るとなると、厄介事が増えるのは必須。何せ普通に、1人の精霊としてカウントされるからだ。しかも問題はそれだけじゃなくて…
「諦めろ、何時かバレる運命だったのだから」
『うぅ…』
まさかこのトゥエガも、実は愚弟の関係者でしたって誰が予想出来るだろうか。いや、無理だな。うん。