04.ともだち
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「姉ちゃん、紹介するんよ。オイラの友達のまん太だ」
「は、初めまして…」
学校が終わった帰り道、まん太をうちに誘った。姉ちゃんに会わせたかったし、まん太も姉ちゃんに興味を示してくれたから。家に帰っても確実に、其処に姉ちゃんが居るかも分からんのに。でも、姉ちゃんは居た。
『こちらこそ初めまして、葉が何時もお世話になってるみたいで…』
「いやぁ、ぼくの方こそ…」
『座ってて、今ジュース淹れるから』
「あ、お構いなく…」
『葉、阿弥陀丸にもお茶淹れようか?』
「かたじけない」
「うん、頼むってー」
『はいはーい』
暖簾を潜って台所に消えた姉ちゃんの姿を、まん太の視線が追う。不思議そうに、でも何処か納得したような表情だった。
「本当に見えないんだね」
「…あぁ、姉ちゃんはな」
家族の中で唯一、姉ちゃんだけが見えない。感じる事も、勿論話す事も。麻倉はそれを異端児だと偏見したようだが、当の本人は苦にも思ってないらしい。そしてその性格が幸いしたのか、姉ちゃんは良く笑う。
「葉くんは嫌じゃないの?」
「うーん…そりゃオイラも最初は、シャーマンの家なのにって思った。正直見えない連中からすれば、オイラ達は独り言ばかり言う変人かバケモノみたいに見られてたから、確かに不安で仕方なかったな」
「じゃあ、何でハルさんは大丈夫だったの?」
「ん―…姉ちゃんだったから、かな?」
上手く説明出来ないけど。でも答えは「それが姉ちゃんだったから」、姉ちゃんの人柄が不安な気持ちを吹き飛ばしてくれた。姉ちゃんっていう存在が、何時の間にかオイラの大きな支えになっていた。
『葉、葉!』
「んあ?どーしたんよ、姉ちゃん」
『今、何かぼやーっとした白いのが見えた!』
「見えたんか?!」
『…気がする』
「気だけかよ!?」
びっくりして勢い良く立ち上がったから、思いっきり足をぶつけそうになった。危ない危ない、じゃなくて!
「…で結局見えたんか、見えてないんか、どっちなんよ?」
『見間違いだったのかなぁ?』
「その白いのはどっちに行った?」
『あっち』
指さした方角はトイレがある方、まさか
「葉殿、タメ五郎殿では無いようでござった」
「え、違うのか?絶対そうだと思ったのに…」
「誰?」
「この民宿炎の元主人で普段はトイレに居るんだ。趣味は火遊びで女好き、だけど気は小さいから脅かせば直ぐに逃げる」
『へぇー…って事は知らぬ間に正々堂々と覗かれてたって事だよね、あたし』
「なんと!」
「あんにゃろう、姉ちゃんが見えないからって!」
『まぁ、でも見られても減るもんでもないし…』
「姉ちゃん、女だろ?!危機感無さ過ぎだって!もう少し気をつけた方いい!」
『どうやって?』
「~っ、オイラに任せとけ!」
何事だと様子を見に来たタメ五郎に、小鬼ストライクをぶつけておく。あとは定期的に注意するしかない。取り敢えず学校の時は阿弥陀丸に頼むとして…
「葉くんってさ、シスコン?」
「は?シス…」
『まぁ、ずっと1人だったからねぇ。同年代の子も居なかったって言うし、可能性は無くないかも』
「はは、まぁ東京で1人暮らししてるしね。ハルさんはお姉さんだし特別だと思うけど、阿弥陀丸も居るんだからほどほどにしといたら?」
『うんうん、噂によると葉ってばその年で既に許n…』
「わっ!ちょっ、姉ちゃん!」
『あら、事実だったの?』
「なになに、何の話?」
「~~、何でもねぇ!///」
「よ、葉くん…?」
『大丈夫よ、照れてるだけだから。それに君は葉の友達なんだから、何時か教えて貰えるよ』
「…だといいな」
『うん、大丈夫!自信を持って!』
「ハル殿が居れば葉殿は形無しでござるな」
「あ、阿弥陀丸がね…」
「おい、まん太!」
くそ、この前から何か照れてばっかりな気がする。
でも、まん太がコロコロとこんな表情を見せるのも、阿弥陀丸が楽しそうに内緒話するのも、オイラがこんな恥ずかしい思いをするのも全部、姉ちゃんが居てこそ。
姉ちゃんと会う前のまん太は「高等部だから先輩だね」なんて話してたのに、何時の間にか「名前にさん付け」になってるし。打ち解けたんかなぁ、この短時間で。
「ねぇ、葉くん。もし良かったら、また遊びに来てもいいかな?」
「あぁ、構わんぞ。そっちの方が姉ちゃんも喜ぶんよ」
「はは、そうだね!」
帰り道。其処まで送って来ると告げて、まん太と一緒に外へ出た。阿弥陀丸は諸々の事情から留守番させて、来た道を並んで歩く。空のオレンジが、大小2つの影を伸ばして、まだ帰りたくないと駄々をこねているみたいだ。
「何か、安心したよ」
「?」
「ほら、葉くん。いっつも学校で寝てるでしょ?」
まん太曰わく「霊の見えない姉が居るから、緊張して眠れないんじゃないか」、そんな心配をしていたという。
「オイラが寝てるのは、単に学校がダルいからかなぁ。あとは眠い」
「うん。葉くんの事だから、どうせそんな事だろうとは思ってたけどね」
「ウェッヘッへ!心配してくれてありがとうな、まん太」
「ううん、どういたしまして」
オイラの事を思ってくれる、そんな奴が隣に居てくれるのは正直有り難い。やっぱいいな、友達って。
「は、初めまして…」
学校が終わった帰り道、まん太をうちに誘った。姉ちゃんに会わせたかったし、まん太も姉ちゃんに興味を示してくれたから。家に帰っても確実に、其処に姉ちゃんが居るかも分からんのに。でも、姉ちゃんは居た。
『こちらこそ初めまして、葉が何時もお世話になってるみたいで…』
「いやぁ、ぼくの方こそ…」
『座ってて、今ジュース淹れるから』
「あ、お構いなく…」
『葉、阿弥陀丸にもお茶淹れようか?』
「かたじけない」
「うん、頼むってー」
『はいはーい』
暖簾を潜って台所に消えた姉ちゃんの姿を、まん太の視線が追う。不思議そうに、でも何処か納得したような表情だった。
「本当に見えないんだね」
「…あぁ、姉ちゃんはな」
家族の中で唯一、姉ちゃんだけが見えない。感じる事も、勿論話す事も。麻倉はそれを異端児だと偏見したようだが、当の本人は苦にも思ってないらしい。そしてその性格が幸いしたのか、姉ちゃんは良く笑う。
「葉くんは嫌じゃないの?」
「うーん…そりゃオイラも最初は、シャーマンの家なのにって思った。正直見えない連中からすれば、オイラ達は独り言ばかり言う変人かバケモノみたいに見られてたから、確かに不安で仕方なかったな」
「じゃあ、何でハルさんは大丈夫だったの?」
「ん―…姉ちゃんだったから、かな?」
上手く説明出来ないけど。でも答えは「それが姉ちゃんだったから」、姉ちゃんの人柄が不安な気持ちを吹き飛ばしてくれた。姉ちゃんっていう存在が、何時の間にかオイラの大きな支えになっていた。
『葉、葉!』
「んあ?どーしたんよ、姉ちゃん」
『今、何かぼやーっとした白いのが見えた!』
「見えたんか?!」
『…気がする』
「気だけかよ!?」
びっくりして勢い良く立ち上がったから、思いっきり足をぶつけそうになった。危ない危ない、じゃなくて!
「…で結局見えたんか、見えてないんか、どっちなんよ?」
『見間違いだったのかなぁ?』
「その白いのはどっちに行った?」
『あっち』
指さした方角はトイレがある方、まさか
「葉殿、タメ五郎殿では無いようでござった」
「え、違うのか?絶対そうだと思ったのに…」
「誰?」
「この民宿炎の元主人で普段はトイレに居るんだ。趣味は火遊びで女好き、だけど気は小さいから脅かせば直ぐに逃げる」
『へぇー…って事は知らぬ間に正々堂々と覗かれてたって事だよね、あたし』
「なんと!」
「あんにゃろう、姉ちゃんが見えないからって!」
『まぁ、でも見られても減るもんでもないし…』
「姉ちゃん、女だろ?!危機感無さ過ぎだって!もう少し気をつけた方いい!」
『どうやって?』
「~っ、オイラに任せとけ!」
何事だと様子を見に来たタメ五郎に、小鬼ストライクをぶつけておく。あとは定期的に注意するしかない。取り敢えず学校の時は阿弥陀丸に頼むとして…
「葉くんってさ、シスコン?」
「は?シス…」
『まぁ、ずっと1人だったからねぇ。同年代の子も居なかったって言うし、可能性は無くないかも』
「はは、まぁ東京で1人暮らししてるしね。ハルさんはお姉さんだし特別だと思うけど、阿弥陀丸も居るんだからほどほどにしといたら?」
『うんうん、噂によると葉ってばその年で既に許n…』
「わっ!ちょっ、姉ちゃん!」
『あら、事実だったの?』
「なになに、何の話?」
「~~、何でもねぇ!///」
「よ、葉くん…?」
『大丈夫よ、照れてるだけだから。それに君は葉の友達なんだから、何時か教えて貰えるよ』
「…だといいな」
『うん、大丈夫!自信を持って!』
「ハル殿が居れば葉殿は形無しでござるな」
「あ、阿弥陀丸がね…」
「おい、まん太!」
くそ、この前から何か照れてばっかりな気がする。
でも、まん太がコロコロとこんな表情を見せるのも、阿弥陀丸が楽しそうに内緒話するのも、オイラがこんな恥ずかしい思いをするのも全部、姉ちゃんが居てこそ。
姉ちゃんと会う前のまん太は「高等部だから先輩だね」なんて話してたのに、何時の間にか「名前にさん付け」になってるし。打ち解けたんかなぁ、この短時間で。
「ねぇ、葉くん。もし良かったら、また遊びに来てもいいかな?」
「あぁ、構わんぞ。そっちの方が姉ちゃんも喜ぶんよ」
「はは、そうだね!」
帰り道。其処まで送って来ると告げて、まん太と一緒に外へ出た。阿弥陀丸は諸々の事情から留守番させて、来た道を並んで歩く。空のオレンジが、大小2つの影を伸ばして、まだ帰りたくないと駄々をこねているみたいだ。
「何か、安心したよ」
「?」
「ほら、葉くん。いっつも学校で寝てるでしょ?」
まん太曰わく「霊の見えない姉が居るから、緊張して眠れないんじゃないか」、そんな心配をしていたという。
「オイラが寝てるのは、単に学校がダルいからかなぁ。あとは眠い」
「うん。葉くんの事だから、どうせそんな事だろうとは思ってたけどね」
「ウェッヘッへ!心配してくれてありがとうな、まん太」
「ううん、どういたしまして」
オイラの事を思ってくれる、そんな奴が隣に居てくれるのは正直有り難い。やっぱいいな、友達って。