01.初めまして
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act.01-①:「初めまして」-side葉
寝台特急を乗り継いで、麻倉が所持する民宿に、さっき着いたばかりだ。東京、ふんばりヶ丘。実家程の田舎じゃ無いが、其処まで都会って訳でも無い。
「おぉ…こりゃ、やべーな」
一人のんびり悠々自適の生活を送るつもりが、部屋中こんなに埃だらけじゃ、起きた途端真っ白になってしまう。
仕方ないとばかりに必要最低限の荷物を玄関先に下ろすと、家中、特に一階の窓という窓を開け放った。先ずは掃き掃除、それから雑巾がけ。
掃除用品一式を探すべく、それっぽい押し入れを漁る。
「何か、無駄にすげー…」
掃除機が、実家にある物と形が違って何だか使い易そうだ。シンプルなのに、ご丁寧に説明書まで置いてある所が、何とも伯母さんらしい。
民宿"炎"
此処には数年前まで伯母さん夫婦、和泉田家が実際に暮らしていた物件だった。姉ちゃんが旅に出る前まで。
足跡が付くという程じゃない埃が、一軒家として人の温もりがあった頃を記憶しているようだった。
―――
「もしもし?」
電話が鳴ったのは、一通り掃除を終えた時だった。昼過ぎに着いたのに、気付けばもう夕方近い。晩飯の支度だって未だこれから。買い物に行かないと、流石に何もない。
『もしもし、葉?』
「え?お、おぅ…えーっと」
『嗚呼、ゴメン。ハルだよ、従姉妹の姉ちゃん』
初めて耳にした声は何処か間の抜けた、でも妙に芯のあるような(気のせいかも知れないが)音だった。何時までも聴いていたい、不思議とそんな心地にさせてくれる。
『今近くまで来てるんだけど、今夜から一週間ばかし炎に泊まってもいーい?』
「泊まって…って、此処元は姉ちゃんちだろ?」
『うん、昨日まではね。でも今は葉が家主だから』
そういう約束だった、って…何時の間に?ってか姉ちゃん帰って来てんのか、日本に。しかも近くまで来てて、うちに泊まる…
どんな人なんだろう?写真とか残ってないから、全く想像出来ない。
『えーと、ダメだった?』
「あ、いや!全然構わん、けど…その…」
『うん』
「…晩飯の買い出し、これからなんよ」
薄暗くなって来た空を見上げる。粗方というか、目に付く場所は何とか無理矢理終わらせた掃除。明日から学校始まるまでの間、取り敢えず掃除終わらせないと…なんてどっかの主婦みたいだ。
『レトルトでもいい?それなら戸棚にバリエーション豊かなカレーがズラッと』
「カレー!?…って、戸棚?何処の?」
『嗚呼…じゃあ取り敢えずご飯洗おうか、
まずは其処から』
「おおぅ?!」
『やっほー、お初さま!君の従姉妹やってます、和泉田ハルだよ』
「ね、姉ちゃん?!」
ガラリと開いた玄関、其処には大荷物を抱えた女が居た。物凄く重そうな荷物にまみれて初見の挨拶を済ませると、幾つかに分けて荷物を隅に置いた。
『いやぁ~、いい運動になるわー』
「運動ってか修行者って感じだぞ?」
『そうかも。でも、それだと何の修行だよって感じ?』
ほら、あたし見えないし。続いた言葉に苦笑するしかなかった。そうだ、姉ちゃんは一般人なんだ。オイラみたいに見える訳じゃない。例え血の繋がりが有っても、姉ちゃんにはシャーマンの…見える苦労は分からない。
『あ!あたしさー、旅先で良く会うシャーマンの知り合いが居るんだけどねー』
「お、おぅ…って、シャーマン?」
『うん。そいつ曰わく、あたし霊障っての一切効かないんだって』
「れいしょう?って、こう…寒気とかそういう?」
『うん、全く。シャーマンの家系にあるまじき能力だねって嘆いてた。あ、でもね』
泥まみれのスニーカーの紐靴を解きながら、口を開く。その後に続いた言葉は凄く意外な内容で
「…は、霊媒体質?」
『ね、可笑しいでしょ?霊に関するあらゆる災いが効かないのに、霊媒体質なんてさ』
稲荷神社とか、人を化かす場所、または墓場とか、「特に霊が溜まりやすい場所には行くな」と念を押されたのだという。
『なんて言うの?こう乗っ取られた、って訳じゃなくってさ』
開けっ放しの窓から夜の風が舞い込む。ぶるりと縮こまった自分を見て、家中の窓を閉めながら居間へと向かった。流石姉ちゃん、何年離れてたのに住み慣れてただけあって動きに無駄がない。
『あからさまに憑依されたって感じしないの。憑かれてるって言われても自覚無くてさ、あたし本人は何も分かんないし』
違和感とか身体の不調とか、そういうものが無いらしい。確かに稲荷神社っていうと狐だし、化ける。狸もそうだけど、イタズラ好きには違いない。其処でふと、たまおの持ち霊達を思い出した。まぁ、あいつらもそうか…うん。
「そのシャーマンとは、その…仲良いんか?」
『あー…どうなんだろうねー?あれは仲良い部類に入るんかなぁ?まぁ、でも…そうだな』
姉ちゃんが迷う事なく真っ直ぐに向かった台所、その一角の戸棚を開ける。掃除で手一杯だったから、まだ此処まで見てなかった場所だ。
『アホな子ほど可愛いってやつ?』
「…アホって、そいつがか?」
『うん、放っておけない感じで』
姉ちゃんが「子」っていうくらいだから、多分年下なんだろう。もし、そいつもシャーマンキング目指すんなら何時か会えるかも知れん、けど。
姉ちゃんが楽しそうな人で良かった。シャーマンじゃないから、どんな奴か内心不安だったけど。オイラに対する偏見とかそういうのは無いみたいだ。
それに何か知らんが、姉ちゃん楽しそうだしな。これから一週間、少しワクワクする自分がいた。
寝台特急を乗り継いで、麻倉が所持する民宿に、さっき着いたばかりだ。東京、ふんばりヶ丘。実家程の田舎じゃ無いが、其処まで都会って訳でも無い。
「おぉ…こりゃ、やべーな」
一人のんびり悠々自適の生活を送るつもりが、部屋中こんなに埃だらけじゃ、起きた途端真っ白になってしまう。
仕方ないとばかりに必要最低限の荷物を玄関先に下ろすと、家中、特に一階の窓という窓を開け放った。先ずは掃き掃除、それから雑巾がけ。
掃除用品一式を探すべく、それっぽい押し入れを漁る。
「何か、無駄にすげー…」
掃除機が、実家にある物と形が違って何だか使い易そうだ。シンプルなのに、ご丁寧に説明書まで置いてある所が、何とも伯母さんらしい。
民宿"炎"
此処には数年前まで伯母さん夫婦、和泉田家が実際に暮らしていた物件だった。姉ちゃんが旅に出る前まで。
足跡が付くという程じゃない埃が、一軒家として人の温もりがあった頃を記憶しているようだった。
―――
「もしもし?」
電話が鳴ったのは、一通り掃除を終えた時だった。昼過ぎに着いたのに、気付けばもう夕方近い。晩飯の支度だって未だこれから。買い物に行かないと、流石に何もない。
『もしもし、葉?』
「え?お、おぅ…えーっと」
『嗚呼、ゴメン。ハルだよ、従姉妹の姉ちゃん』
初めて耳にした声は何処か間の抜けた、でも妙に芯のあるような(気のせいかも知れないが)音だった。何時までも聴いていたい、不思議とそんな心地にさせてくれる。
『今近くまで来てるんだけど、今夜から一週間ばかし炎に泊まってもいーい?』
「泊まって…って、此処元は姉ちゃんちだろ?」
『うん、昨日まではね。でも今は葉が家主だから』
そういう約束だった、って…何時の間に?ってか姉ちゃん帰って来てんのか、日本に。しかも近くまで来てて、うちに泊まる…
どんな人なんだろう?写真とか残ってないから、全く想像出来ない。
『えーと、ダメだった?』
「あ、いや!全然構わん、けど…その…」
『うん』
「…晩飯の買い出し、これからなんよ」
薄暗くなって来た空を見上げる。粗方というか、目に付く場所は何とか無理矢理終わらせた掃除。明日から学校始まるまでの間、取り敢えず掃除終わらせないと…なんてどっかの主婦みたいだ。
『レトルトでもいい?それなら戸棚にバリエーション豊かなカレーがズラッと』
「カレー!?…って、戸棚?何処の?」
『嗚呼…じゃあ取り敢えずご飯洗おうか、
まずは其処から』
「おおぅ?!」
『やっほー、お初さま!君の従姉妹やってます、和泉田ハルだよ』
「ね、姉ちゃん?!」
ガラリと開いた玄関、其処には大荷物を抱えた女が居た。物凄く重そうな荷物にまみれて初見の挨拶を済ませると、幾つかに分けて荷物を隅に置いた。
『いやぁ~、いい運動になるわー』
「運動ってか修行者って感じだぞ?」
『そうかも。でも、それだと何の修行だよって感じ?』
ほら、あたし見えないし。続いた言葉に苦笑するしかなかった。そうだ、姉ちゃんは一般人なんだ。オイラみたいに見える訳じゃない。例え血の繋がりが有っても、姉ちゃんにはシャーマンの…見える苦労は分からない。
『あ!あたしさー、旅先で良く会うシャーマンの知り合いが居るんだけどねー』
「お、おぅ…って、シャーマン?」
『うん。そいつ曰わく、あたし霊障っての一切効かないんだって』
「れいしょう?って、こう…寒気とかそういう?」
『うん、全く。シャーマンの家系にあるまじき能力だねって嘆いてた。あ、でもね』
泥まみれのスニーカーの紐靴を解きながら、口を開く。その後に続いた言葉は凄く意外な内容で
「…は、霊媒体質?」
『ね、可笑しいでしょ?霊に関するあらゆる災いが効かないのに、霊媒体質なんてさ』
稲荷神社とか、人を化かす場所、または墓場とか、「特に霊が溜まりやすい場所には行くな」と念を押されたのだという。
『なんて言うの?こう乗っ取られた、って訳じゃなくってさ』
開けっ放しの窓から夜の風が舞い込む。ぶるりと縮こまった自分を見て、家中の窓を閉めながら居間へと向かった。流石姉ちゃん、何年離れてたのに住み慣れてただけあって動きに無駄がない。
『あからさまに憑依されたって感じしないの。憑かれてるって言われても自覚無くてさ、あたし本人は何も分かんないし』
違和感とか身体の不調とか、そういうものが無いらしい。確かに稲荷神社っていうと狐だし、化ける。狸もそうだけど、イタズラ好きには違いない。其処でふと、たまおの持ち霊達を思い出した。まぁ、あいつらもそうか…うん。
「そのシャーマンとは、その…仲良いんか?」
『あー…どうなんだろうねー?あれは仲良い部類に入るんかなぁ?まぁ、でも…そうだな』
姉ちゃんが迷う事なく真っ直ぐに向かった台所、その一角の戸棚を開ける。掃除で手一杯だったから、まだ此処まで見てなかった場所だ。
『アホな子ほど可愛いってやつ?』
「…アホって、そいつがか?」
『うん、放っておけない感じで』
姉ちゃんが「子」っていうくらいだから、多分年下なんだろう。もし、そいつもシャーマンキング目指すんなら何時か会えるかも知れん、けど。
姉ちゃんが楽しそうな人で良かった。シャーマンじゃないから、どんな奴か内心不安だったけど。オイラに対する偏見とかそういうのは無いみたいだ。
それに何か知らんが、姉ちゃん楽しそうだしな。これから一週間、少しワクワクする自分がいた。