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もし、あの夢が正夢だとして。
正夢なら、私は、月代くんの死を止められるんじゃないの? -
理世
おはよー柚
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うん、きっとそうに違いない。
だって月代くんが死んだのは、誰かにナイフで刺されたから。 -
私があの夢を見たのは、月代くんを助けるためだ。
恐ろしい未来を、変えるためだ。 -
理世
おーい、柚
無視?
普通に傷つくんだけど -
佐伯 柚
わっ、理世ちゃん!
ごめんボーッとしてて!
おはよう! -
理世
何?
恋煩い?
チヒロンに告られた? -
言いながら後ろの席に座る理世ちゃん。
何から否定すればいいのかわからなくて、ちょっと困る。 -
千宏
まだ告ってねーわ!!
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理世
お、噂をすればチヒロンじゃん、おはー
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告るとか、告られるとか。
それってたぶん、好きとかそういう話で。 -
千宏くんはわかりやすい人だと思う。
わかりやすく、気持ちを示してくれているように思う。 -
千宏
……柚
おはよう -
理世
何かっこつけてんの?
わりかしきもいよ -
千宏
おまえに気持ち悪がられても痛くも痒くもないんで~
-
でも時々、思う。
本当に私なのかな、って。 -
理世ちゃんと千宏くんは仲がいい。
中学校からの仲だって、聞いた。 -
高校で理世ちゃんと出会って、仲良くなって。
千宏くんとも一年のときから同じクラスで、だから仲良くなって。 -
でも理世ちゃんがいなかったら、たぶん、私と千宏くんはただのクラスメートで。
友達にすらなれなかったと思う。 -
理世
おー
転校生は今日もイケメンだねー -
理世ちゃんが言うから、つられて、彼を見てしまった。
クラスの女子に囲まれながら、教室に入ってくる彼――月代くんを。 -
正直、今は恋とか、そういうことを言っている場合じゃない。
人の命がかかってる。
月代くんの命が、かかってる。 -
誤解されるのはわかってるけど。
それでも私は、月代くんを助けるって、決めたから。 -
佐伯 柚
おはよう
……月代くん -
立ち上がって、教壇の前で、月代くんをまっすぐ見て、言った。
女子が囲んでいてくれたおかげで、月代くんは逃げない。 -
できれば返事が欲しいけど、なくてもいいよ。
あの夢を正夢にしたくないだけだから。 -
月代 雪斗
……おはよう
佐伯さん -
きちんと自己紹介をした覚えがない。
だから面食らってしまう。 -
月代くん、私のこと知ってるの?
――やっぱり、あの夢で? -
私を通りすぎ、自分の席に向かう月代くん。
何人かの女子に睨まれた気がする。
ごめんね、別に私、そういうんじゃないんだけど。 -
無視されなかった。
名前を呼んでくれた。 -
そんな些細なことで、少し嬉しくなってしまうのは、どうしてだろうね。
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