3

  • もし、あの夢が正夢だとして。
    正夢なら、私は、月代くんの死を止められるんじゃないの?

  • 理世

    おはよー柚

  • うん、きっとそうに違いない。
    だって月代くんが死んだのは、誰かにナイフで刺されたから。

  • 私があの夢を見たのは、月代くんを助けるためだ。
    恐ろしい未来を、変えるためだ。

  • 理世

    おーい、柚
    無視?
    普通に傷つくんだけど

  • 佐伯 柚

    わっ、理世ちゃん!
    ごめんボーッとしてて!
    おはよう!

  • 理世

    何?
    恋煩い?
    チヒロンに告られた?

  • 言いながら後ろの席に座る理世ちゃん。
    何から否定すればいいのかわからなくて、ちょっと困る。

  • 千宏

    まだ告ってねーわ!!

  • 理世

    お、噂をすればチヒロンじゃん、おはー

  • 告るとか、告られるとか。
    それってたぶん、好きとかそういう話で。

  • 千宏くんはわかりやすい人だと思う。
    わかりやすく、気持ちを示してくれているように思う。

  • 千宏

    ……柚
    おはよう

  • 理世

    何かっこつけてんの?
    わりかしきもいよ

  • 千宏

    おまえに気持ち悪がられても痛くも痒くもないんで~

  • でも時々、思う。
    本当に私なのかな、って。

  • 理世ちゃんと千宏くんは仲がいい。
    中学校からの仲だって、聞いた。

  • 高校で理世ちゃんと出会って、仲良くなって。
    千宏くんとも一年のときから同じクラスで、だから仲良くなって。

  • でも理世ちゃんがいなかったら、たぶん、私と千宏くんはただのクラスメートで。
    友達にすらなれなかったと思う。

  • 理世

    おー
    転校生は今日もイケメンだねー

  • 理世ちゃんが言うから、つられて、彼を見てしまった。
    クラスの女子に囲まれながら、教室に入ってくる彼――月代くんを。

  • 正直、今は恋とか、そういうことを言っている場合じゃない。
    人の命がかかってる。
    月代くんの命が、かかってる。

  • 誤解されるのはわかってるけど。
    それでも私は、月代くんを助けるって、決めたから。

  • 佐伯 柚

    おはよう
    ……月代くん

  • 立ち上がって、教壇の前で、月代くんをまっすぐ見て、言った。
    女子が囲んでいてくれたおかげで、月代くんは逃げない。

  • できれば返事が欲しいけど、なくてもいいよ。
    あの夢を正夢にしたくないだけだから。

  • 月代 雪斗

    ……おはよう
    佐伯さん

  • きちんと自己紹介をした覚えがない。
    だから面食らってしまう。

  • 月代くん、私のこと知ってるの?
    ――やっぱり、あの夢で?

  • 私を通りすぎ、自分の席に向かう月代くん。
    何人かの女子に睨まれた気がする。
    ごめんね、別に私、そういうんじゃないんだけど。

  • 無視されなかった。
    名前を呼んでくれた。

  • そんな些細なことで、少し嬉しくなってしまうのは、どうしてだろうね。

タップで続きを読む