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夢を見た。
怖くて、悲しくて、苦しい夢を。 -
昇降口
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理世
柚おはー
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佐伯 柚
……おはよ、理世ちゃん
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理世
どした?
今日暗いじゃん -
理世ちゃんが心配そうに顔を覗き込んでくる。
ダメだよね、朝からこんな暗い顔してちゃ。 -
でも夢が、なんていうか、地獄みたいで。
今もなんか生きてる感じしない。 -
千宏
おは柚~
そんなに土日俺に会えなくて寂しかったの? -
理世
うわーチヒロン自意識過剰ー
きもいよ普通にー -
千宏
おー?
この俺にそんな態度でいいのかな~?
今日の俺は金曜の俺とは違うんだぜ? -
理世
何それ?
細胞的な話? -
理世ちゃんと千宏くんの仲の良さにニコニコしちゃう。
気を抜くと夢の残像に引っ張られるから、意識的に二人を見る。 -
千宏
なんと!
今日!
うちのクラスに!
転校生来るんだってよ!! -
理世
あーなんか聞いた
イケメンだってよ -
千宏
何で知ってんの!?
俺昨日仕入れたばっかなのに!? -
理世
私の情報網なめんなよ
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仲良く言い合いながら教室に入っていく二人。
私も続こうとして、でも、立ち止まってしまう。 -
目の前で人が死んだ。
その人は、私の夢の中で、私の大切な人だった。 -
夢なのに夢じゃない、みたいな。
残像がずっと消えなくて、ちらついて。 -
まるで本当、みたいに。
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千宏
柚?
大丈夫か? -
私がついてきていないことに気づいたらしい。
千宏くんが教室からひょっこり顔を出して、声をかけてくれる。 -
なんとなく笑顔を貼り付ける。
いつからだろう。
人に心配されたら、取り繕おうとしてしまう。 -
佐伯 柚
大丈夫だよ
転校生、楽しみだね -
私は嘘つきだ。
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ホームルーム
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担任
えー、それではみんな、お待ちかね、転校生の登場です!
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ざわつくクラス。
先生までテンション上がってるじゃん、なんて、少し笑ってしまったんだけど。 -
顔がひきつる。ひきつってしまう。
だって知ってるから。
私、この人のこと。 -
月代 雪斗
……月代、雪斗
よろしく -
色素が薄いのか、灰色がかった髪。
月みたいに儚くて、雪みたいに消えそうな。 -
私の夢の中で死んだその人は、突然、私の現実世界に現れた。
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