第三十五話 三月 来訪者現る

 その日は快晴だった。学園内に植えられている桜の樹には、綻びかけた花の蕾が幾つも見られた。
 生徒会寮の玄関前でエリー、ライラ、クラガリ姉弟は、目の前にいる三人に祝いの言葉を贈った。
「ジュリー会長、セーラ先輩、リタ先輩。ご卒業おめでとうございます。」
「ああ。」
「うん。」
『ありがとう。』
 今日、学園高等部を卒業するジュリー、セーラ、リタは後輩達に笑顔で頷いてみせた。
「これから三人共大学部の方でしょう? 会いに行きますよ。」
 ライラの言葉に、セーラは首を横に振った。
「…いいや、オレは大学部へは進まない。」
「え?」
 エリーが疑問符を浮かべると、セーラとリタは青アザの少し残る顔で、互いに目配せをした。
 セーラは改めて、後輩達に向き直った。
「旅に出る。」
「旅、ですか?」
 不思議そうにする後輩達に、セーラは説明した。
「フィールドワークとでも言えばいいのか…。お前達の母親達はこの世界を裏側から隔離したが…どこからどこまでを完全に隔離し、その隔離された狭間でどのような影響があったかは、一切把握されていないそうだ。」
「…そーなんすか…。」
「…なんてゆーか…無責任。」
 エリーとライラはため息の様に返す。セーラは説明を続けた。
「オレはあの壁があった場所を巡り、情報を集めてみようと思う。それを裏側…外の世界との融和に役立てたい。」
「じゃあ、リタ先輩も一緒に?」
 小鳥がリタに問うと、リタは首を横に振った。
『ううん。僕は大学部に行くよ。』
「え。」
 目を丸くした後輩達を見て、リタは苦笑した。
『そんな意外って顔しないで。フィールドワークはセーラのやりたい事で、僕はまだ、僕のやりたい事を見つけていないから。』
「…実家を継ぐとかは考えてないんですか?」
『選択肢の一つにはあるよ。でも僕はもう少し、勉強しながら考えたい。僕にはまだ、色んなモノが足りないと思うから。』
 リタの言葉の後、後輩達は黙った。不思議に思ったリタとセーラは問う。
『皆?』
「どうした?」
 後輩達は驚きを隠さず、答えた。
「…いや、その…。」
「ベストカップルの破局を、カミングアウトされたなと…。」
 ジュリーは声を上げて後輩達に笑った。
「ははは。破局と言ってくれるな馬鹿野郎共。この二人は、お互いに自立しようとしているだけなんだ。」
『近い内に僕も自分のやりたい事を決めて、力を付けたら…出来る範囲でセーラの手伝いをしたい。』
「それまでオレは、一人で何とかやってみるつもりだ。」
 笑顔で話す先輩三人に、後輩達も自然に笑んだ。
「…そっすか。」
「ジュリー会長は、普通に大学部行くんですよね。」
「ああ。」
 小猫が玄関前の時計を見、声を上げた。
「あの、卒業式そろそろっすよ。」
「あ、いけね! 在園生早めに行かねーとだった!!」
「じゃあ先輩達、後で!」
 エリー、ライラ、クラガリ姉弟は卒業式の会場に向かい、走って行った。

 後輩達を見送った後、セーラはリタに問う。
「何故、言わなかった?」
『何を?』
「…リタも進路は決めているんだろう?」
 リタは笑んで頷いた。
『お医者さんになる勉強ね。僕、お医者さんになれたら、ビックリさせたいと思って。』
「…そうか。」
 セーラも穏やかに笑みを浮かべた。
「…そろそろ行こうか、オレ達も。」
 ジュリーがセーラとリタに声をかけた。
「ああ。」
『うん。』
 セーラとリタは頷いた。三人は卒業式会場に向かって歩き出す。
 途中、開きかけた桜の蕾を見ながら、ジュリーは呟いた。
「…オレもそろそろ、人生のターニングポイントか…。」

 卒業式の後。
 エリーは一人、都庁の最深部があった場所をぶらぶらしていた。
「…壁が無くなったのはいいけど…。」
 エリーは呟きながら、顔を上げる。歩を進め、都庁の最深部跡の端に立った。
 その先に広がる、何処までも続く大地と青い空を眺めながら、エリーは思い出していた。
「…ジュリー会長の言ったのって、どういう事なんだかな…。」

 卒業式が終わった後。
 ジュリーはエリーとライラに言葉を贈っていた。
「エリー、ライラ。お前ら二人、そろそろ生き方を少しだけ変えてみてもいいんじゃないのか?」

「世界」の外に広がる、足を踏み入れた事の無い世界を見ながら、エリーはまた独りごつ。
「にしても…こんな、広い世界だったんだな…。」
 エリーがまた遠くに視線をやった時。
 大地の方から人影が歩いて来るのが見えた。エリーが驚いている間にも、人影は歩いて少しずつ近づいてくる。だんだん人影の姿がはっきりとしてくる。見えてきたのは、年齢は大学部生位だろうか、大きなリュックを背負った旅姿の若者だった。
 エリーから少し離れた場所で若者は止まり、問うて来た。
「ここに壁があったと思うんだけど…君は?」
「…壁ならもう無いっすよ? 壊れたから。」
 エリーは戸惑いつつ答えた。若者は穏やかにまた問う。
「…君は、壁の向こうにいた人かい?」
「…アンタはもしかして、裏側の世界の…?」
「! 君は…!」
 突然、若者は驚いた顔をしてエリーに近づき、顔を覗き込んだ。
「な、何だ!?」
「君は、すごく小さな時に、能力者の戦場に…!? いや、それにしては若いし…!? もしかして、彼の子供とか? いやそれでも…!?」
 エリーを前に捲し立てる若者の言葉に、エリーは自身がよく夢に見る、幼少期の体験を思い出した。
「…アンタ、何でそれを知って…?」
 エリーの言葉を聞き、若者は少し考えるように黙ってから、問うてきた。
「…まさかとは思うけど、君は二十三年前、戦場にいた…本人…?」
「まあ、色々あって…そうなんだけど…。」
「そう、なのか…。」
 ぎこちなく答えたエリーを見、若者は深い声で呟くと、エリーの手をしっかりと握った。
「無事で、良かった!!」
 目を丸くしているエリーに、若者は満面の笑みで言った。
「生きてて、良かった!!」

「生き方を変える、か…。」
 生徒会寮の自室で、ライラは呟いた。
 ライラの目の前には、自身のクロゼット。その奥には「世界の解放」の際、大きな力となったあの刀…緋明が入っている。ライラは今、緋明に封印をし、クロゼットにしまったところだった。
 ライラは一つ息を吐く。
「…なるほどな。相変わらず解りにくい人だな、ジュリー会長。」
 ライラはクロゼットに背を向けると、部屋を出た。
「…変えてみる前に、やる事と試す事あるな。」
 歩きながら、ライラは小さく笑んだ。
「…あのバカの事だから、多分解ってない。…しょうがない奴。」

 学園校舎の一角。
「そんな、訳で…本当、悪かった。ごめん。」
 ライラは三人の生徒を前に頭を下げた。
 三人の生徒の名前は四谷(よつや)、山本(やまもと)、浅瀬石(あせいし)。三年前にライラが起こした傷害事件で、ライラが傷つけた相手だった。
 ライラからの謝罪に四谷、山本、浅瀬石は考えるように首をひねっている。
 ライラは世界の解放後、マナが言っていた事を思い出していた。

 都庁の一角に、カグヤは入った。床に座っていたマナに、カグヤは小さな声をかける。
「…真無。」
 エリーに殴られた痕を頬に作ったマナは、笑って問うた。
「壊れたか。…あいつらが?」
「…うん。」
 カグヤは静かに頷いた。

 それからまもなくの事。
「…カグヤ。マナ。」
 呼ばれたマナとカグヤが振り向くと、エリーとライラがいた。
「…エリー。ライラ。」
 カグヤが呼んでも、二人は黙っている。マナは問うた。
「あの二人は?」
「…病院に、運ばれた。」
 少しの沈黙の後にエリーが話した答えに、マナとカグヤは一瞬息を呑んだ。
「…そう、か。」
 カグヤが呟いた後、しばし部屋の中は静寂に包まれた。
 …不意にマナはエリーとライラを見て笑み、口を開いた。
「…一つ、教えといてやろうか。」

 マナがエリーとライラに教えたのは、二人の母親達が世界に施した記憶操作、疑念操作のことだった。
 疑念操作の能力技術は壁の中心、あの巨大な石塔に込められていた。壁の中心でもあった石塔の崩壊により、壁の維持と同時に世界に施されていた疑念操作は、徐々に解かれて行くだろう。
 だが、二度に渡って世界の人間達に行われた記憶操作は、それとは別の不可逆の能力技術を使って行われたモノである為、これから先、過去の記憶が戻るかどうかは個人次第。

 ライラが黙っていると、目の前の三人は納得がいったというように笑った。
「そっか、そーゆー事だったのか、この傷。」
 山本は自身の腕にある、大きな切り傷の痕を見て頷いた。続けて浅瀬石も笑いながら話す。
「この傷出来た理由、すっぱり抜け落ちてるけど、もしかして記憶操作とかいう奴のせいだったのかな。」
 ライラが戸惑っていると、四谷が穏やかに声をかけた。
「…ライラ。その時の記憶は、オレ達の中には無いけど…。お前、ホント変わったんだよな。」
 山本と浅瀬石もライラを見て嬉しそうに笑んでいた。
「そうだな。ホントいい顔して笑うし…。」
「何だかんだで、エリーといいコンビだし。」
「…それに、今はオレ達の事、友達と思ってくれてるんだろ?」
 三人の言葉にライラは目を丸くした後、ホッとしたように破顔した。
「…ああ。」
「来螺君。」
 不意に後ろから声がかかり、ライラは振り返った。視線の先には田村が立っていた。
「田村先生?」
「ちょっと、いいかしら?」
 真剣な面持ちで、田村はライラに問うた。

「あの刀は、オレの親父と、エリーの父親が…?」
「ええ。」
 ライラを医務室に呼んだ田村が話したのは、あの刀…緋明の出自だった。驚くライラに田村は話を続ける。
「江利井君のお父さん、有澤晶さんは能力付与の能力を持った職人、貴方のお父さん、美良裕一さんは原理解析能力を持った技術者だった。」
 疑問符を浮かべたライラに、田村は説明する。
「『能力付与』は、物体に人が持つ能力を写す事が出来る。『原理解析』能力は、その能力の原理…根っこの部分まで知る事が出来る。…何故、私達が能力を持って産まれて来たのか…貴方のお父さんなら、もしかしたら解っていたかもしれないけど、もう真相は…。」
 ライラは田村の説明を黙って聞いた。田村は更に続けた。
「あの人達は壁を壊す力として、江利井君の能力を強化した力をあの刀に込めたの。」
「エリーの…?」
「江利井君の能力、硬化コーティングの力には、相手の能力を中和する力が入っていたの。江利井君のその力はかなり微弱なモノだったけど、あの人達はそれに気付いた。それで江利井君の力を強化して、能力無効化の能力として、あの刀に付与した。」
 そこまで言い、田村は視線を落とした。
「…でもそれであの人達は、反乱分子として粛清された…。その前に私は、あの人達に刀を託されたの。私の手元に置いておけばすぐに見つかっただろうから…その後、倉狩一門に預けたけど…。」
 田村は立ち上がり、ライラに向かって頭を下げた。
「今まで黙っていた事、謝るわ。本当にごめんなさい。」
「別にいいですよ。…渡されたのがあの時じゃなかったら、多分変な使い方してたと思うし。」
 さらりと返されたライラの言葉を聞き、田村は小さく笑みを見せた。
「…そう。」
 医務室にノックの音が響いた。
「どうぞ。」
 田村が声をかけると、からからと戸が開いた。
「あのー…。」
「エリー?」
「どうしたの?」
 戸の間から顔を覗かせたエリーは、かなりぎこちなく口を開いた。
「いや、ちょっと…。」

 学園の会議室の席にエリー、ライラ、シャーリー、クラガリ姉弟、田村は座っていた。
 そして皆の前には、エリーが先程出会った若者がいた。若者が何処から来たのか本人の口から伝えられると、皆驚きの声を上げた。
「ええ!?」
「貴方は裏側の世界から来たんですか!」
 若者は穏やかに笑み、一礼する。
「初めまして。僕は真理まり明人あきひとと言います。」
「じゃあマリアさんだ、マリアさん!」
 小猫の言葉に、真理と名乗った若者は疑問符を浮かべた。
「え?」
「ここのお決まりみたいなモンなんで、気にしないで。」
 ライラが伝えた後、シャーリーは真理に問いかけた。
「それで貴方…真理さんは、ここにはどうして…?」
 真理は居住まいを正し、皆を真っ直ぐに見ると答えた。
「僕は壁の外を巡る旅を繰り返してます。それで、壁の中に連絡が取れないかと調べていました。」
「え…?」
「何で、ですか?」
 皆が戸惑った様子で首を傾げると、真理はゆっくりと話し出した。
「…僕は二十三年前の、能力を持たない人間と能力者との戦いには参加していません。参加したのは主に僕の親世代です。僕があの戦いを知ったのは記録映像…あの紛争を記録した映像でした。それには小さいエリー君が映っていて…。」
「この世界に、貴方の世界の大人達が来た時の…記録がそちらに残っていたのね。」
 田村が感嘆の声を漏らすと、真理は頷いてまた話した。
「その記録映像を見てから、この世界の事が気になって…ずっと旅をしていました。…だから今、こうしてエリー君に会えて、皆さんと話が出来ている事、本当に嬉しいです。」
「何でそんな、オレに会えた事を喜ぶんですか?」
 エリーが純粋な疑問を投げかける。
「そりゃあ、ずっと安否が気になっていた君に会えたんだから、嬉しいに決まってるよ。成長していたら、僕よりずっと年上だと思ってたから、ビックリしたけど。」
 真理はエリーに嬉しそうに笑うと、また口を開いた。少し落ち込んだような声だった。
「あの戦いは凄惨なモノだった。あの後、あの小さかった君は、能力を持った人達は、壁の中でどうなったのか…そんな事を考え続けた。あの紛争は、こちらの大人達が一方的に仕掛けた、恥ずべき行為。だからこちらにいる大抵の大人達はここの事には触れず、知らぬ存ぜぬで通してる。皆死んでいるだろうとか言う人もいた。大人達に聞いても何も解らなかったから、自分で調べようと思って旅を始めたんだ。」
「死んでるだろって…。」
「あの壁があったから、向こうにこちらの事は一切解らないでしょうからね。」
 ライラと田村が真理の言葉に対する感想を述べた。
 次に話された真理の言葉は、穏やかに暖かく響いた。
「でも全ての大人達がそうじゃなかったんだ。弁護をさせてもらう訳じゃないけど、旅をしている途中で、沢山出会えた。昔、能力者と交流のあった人もいた。ここに来られなかった能力者もいる。能力を隠して生きている人、幸い周りの理解を得て暮らしている人、様々だけど…。そんな大人達と繋がったり、僕みたいに紛争の記録を見たりして、こちらを気にしている若い人間も、沢山いる。」
 真理はエリー達を見て、目を細めて笑んだ。
「今ここに来たのも、そんな仲間の一人から壁が消えたと連絡を貰ったからなんだ。来てみて良かった。エリー君に会えて、壁の中に連れて来てもらえて、皆さんがここで暮らしている事が解って…。」
 エリーとライラは真理が話した事を反芻し、首をひねりながら問うた。
「うーん…。アンタが旅してる理由とかは、大体解ったけど…。」
「それで真理さん、アンタどうしたい訳?」
 真理の表情が真剣味を帯びる。皆は緊張した面持ちで注目した。
「…どうしたいんだろう?」
 真理が思い切り苦笑して発した言葉に、皆は思わずがくっと肩を落とした。
「はあ!?」
「ここまで話しといてアンタそれなんすか!?」
「いや、ただ壁の向こうと連絡取りたいって気持ちだけで動いてたから、それ達成されちゃったし…。」
「そ、そうっすか…。」
 真理の台詞にエリーが思わず呆れた時、シャーリーが口を開いた。
「…でもこれは、いい機会かもしれない。」
 エリー達が注目すると、シャーリーは真理に改めて向き直り、話し出した。
「真理さん。僕達は壁があった間、壁の外に関する一切の情報を与えられていなかったんです。壁の中が僕達の世界の全てだったんです。」
「…そうだったのか…。」
「僕達は壁を壊しました。でも僕達にとって、壁の外は全くの未知の世界なんです。自分達がやった事だとはいえ、正直どうすればいいのか戸惑ってしまっていた。それに僕達第二世代はともかく、大人達の中には壁の外に対する反発を根強く持っている人もいます。…だから外の世界に、貴方のような考えを持った人達がいることが解ったのは、大きな収穫ですよね。」
 そこまで言い、シャーリーはにっこり笑った。
「…真理さん。協力していただけませんか。」

「この世界側の、特別代表団…?」
 生徒会室に呼ばれたセーラ、リタ、ジュリーが疑問符を浮かべると、シャーリーは頷いて説明した。
「はい。外の世界から来た真理さんと話をした結果、彼と同じ考え…僕達の世界と繋がりたいと願っている人々と、僕達…この世界の第二世代、お互いの中から代表を選出して、会談をしてみようと。」
「…それで?」
 ジュリーが問うと、シャーリーは三人に願った。
「貴方達に会談に行く代表団に参加していただきたいんです。ジュリー前会長、セーラ先輩、リタ先輩。」
 シャーリーは笑み、続けて話す。
「貴方達は壁を壊したあの戦いの中心で、この世界の事情を僕よりも知っていますから。何より始末屋、生徒会を経験して相当の度胸持ちだ。だからお願いしたいんです。」
「その真理という人物は、信用に値するのか?」
 セーラが問うと、シャーリーは真っ直ぐに答えた。
「僕は信用に値すると思っています。理由は、エリーの事を一目で分かったんです。」
『エリー君を、知ってたの?』
 リタが驚くと、シャーリーは説明した。
「彼は第一世代との争いを経験していませんが、昔の紛争の映像で、彼は幼い頃のエリーを見たんだそうです。そして今のエリーに出会った彼は、一発でエリーだと解ったらしいんです。解った途端、彼はエリーの手を握って言ったんだそうです。『無事で、よかった』と。」
 一通り聞いたジュリーはふ、と笑んだ。
「…なるほど。他には誰が参加予定だ?」
「エリーとライラが。エリーは昔の戦いを知っている、唯一の第二世代。ライラは僕達の世界で唯一、壁の外の人間と同じ非能力者。彼らに行ってもらった方がいいと、田村先生と決めました。」
 シャーリーの答えにジュリー、セーラ、リタは顔を見合わせた。
「となると…。」
「選択肢は一つしか無いな。」
『あの二人だけじゃ、心配だものね。』
 ジュリー、セーラ、リタは笑い、シャーリーに改めて向き直った。ジュリーが三人を代表して答えた。
「オレ達三人も行こう。また、あいつらの面倒を見てやらなければな。」
「…ごめんなさい。場合によっては、先輩達の進路を変えてしまう事になるかもしれませんが…。」
 シャーリーがすまなそうに話すとセーラ、リタ、ジュリーは首を横に振った。
「オレはそうでもない。これもまた両世界の融和に際しての、いい情報収集になるだろう。」
『向こうの世界には色んな知識、技術があるって田村先生が言ってた。僕のやりたい事に関する事でも…。だから悪い話じゃないよ。』
「正直オレは、自分の行く先を決めかねていたんだ。…こんな話があるなら、乗ってみるのも一興だと思ってな。」
 先輩三人の返しに、シャーリーはホッとしたように笑むと、頭を下げた。
「…ありがとうございます。」
 ジュリーがシャーリーに言葉を向ける。
「学園の事は頼んだぞ。シャーリー生徒会長。」
「はい!」
 シャーリーは顔を上げ、強く頷いた。

To Be Continued
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