第二十九話 三月 VS三浦最終章! これがホントのラストバトル!?

 放課後の学園校舎五階、正面側廊下は険悪な雰囲気に包まれていた。
「お前ら、ホントにいい加減にしやがれ?」
「いい加減懲りるって言葉、学習して欲しいもんですね。」
 エリーとライラが向かい合っている三人に言うと、その三人のリーダー格、学園小悪党の三浦は悔しそうに歯噛みした。
「畜生…! 今度こそ上手くいくと思ったのによ…!」
 ライラとエリーは心の底から呆れ顔だった。
「田村先生の入浴姿盗撮して、それをオレ達がやったってなすり付けようとして、オレ達の私物、現場に置いといて…。」
「そこまではまあ、お前らにしちゃやった方だ。現像してるとこ田村先生に見つかったら、そりゃ言い訳出来ずに大目玉喰らうよな。」
「大体何で、写真の現像を田村先生の根城、医務室の隣の空き教室でやる訳?」
「つーかオレらの私物、教師寮の外に放っぽりやがって…泥だらけになった教科書弁償しやがれ!」
「だーもう! ぐちぐち言いやがって! 男らしくねえぞ始末屋!!」
「「お前にだけは言われたくねえよ三浦。」」
 エリーとライラの声がハモったところで、三浦は声を上げた。
「とにかくだ!! こうなった以上、実力行使でお前ら始末屋をのしてやる!! そうだろ田中、高橋!!」
「そ、そうだけどよ…三浦。」
「実力でオレ達、どうやっても勝てないから策練って、それでも勝てない…。」
 鼓舞する言葉にもイマイチ乗り気になれない小悪党手下の田中と高橋に、三浦は渾身の力を込めて叫ぶ。
「じゃあこの一年、このふざけた二人組に負けっぱなしでいいのかお前らあ!!」
 田中と高橋は目が覚めたようにハッとした。
「そ、そうだな三浦…!」
「こんなよく解らない二人に、〇勝九十九敗のまま終われるか!!」
「…そんな言葉でやる気出る訳?」
「ふざけた二人組って…それこそお前らに言われたくねえよ…。」
「何だかんだでこいつら、この一年で九十九回もせこい悪さ働いてたんだなー。」
 盛り上がる三浦達の様子に、エリーとライラは呆れを通り越して青筋を立てた。
 三浦は拳を振り上げ、エリーに向かった。
「行くぞ始末屋あー!!」
「…ったく…。」
 エリーは左腕でガードしつつ右手で拳を握ると、突進して来た三浦に思い切りストレートパンチを喰らわせた。
「ぐは!!」
 当たり前のように三浦が吹っ飛ばされた時。
「うわあっ!」
 吹っ飛ばされた三浦にぶつかられ、高橋が大きくよろめく。よろめいた先には開いている窓があった。
「あ!!」
 全員が気付いた時には、高橋は開いた窓から落下していた。
「うわああああ!!」
「ああっ!!」
 エリーは慌てて窓から飛び降りる。
「あっ、バカ!!」
 ライラはエリーの後を追って飛び降りた。
 落ちて行く高橋を追い、エリーとライラは五階から校舎正面の壁を駆け下りた。

 一階廊下ではセーラとリタが、掃除道具を持って歩いていた。
 リタが前庭…校舎の正面を見やった途端、目を丸くして声を響かせた。
『セーラあ!!』
「なっ!?」
 眼前の状況にセーラも思わず素っ頓狂な声を上げた。

 三階廊下で生徒会の資料を運んでいた小猫は、ふと校舎の正面を見、思わず手から資料を落とした。
「げっ!?」

 エリーとライラは壁を走り下り、落ちて行く高橋の手を掴んだ。エリーは声を上げる。
「よっしゃあ!」
「よっしゃじゃないっての! この後どうすんだ!!」
 ライラの言葉にエリーは前を見る。…ただ地面が迫って来ている。
「…あー!!」
「このバカがー!!」
 叫びながらエリーとライラは、垂直に壁を走り下りている。

 セーラとリタは校舎正面の壁に向かい、全力疾走していた。
「どうやっても間に合わない…!」
 焦るセーラに、何かを受心したリタが意思を送った。
『セーラ止まって!!』
 走っていたセーラは慌ててブレーキをかけた。

 壁を走り下りているエリーとライラに、小猫の声がぶつかって来た。
「先輩! 跳べ――――!!」
「! えーと…!」
「おりゃあ!」
 エリーとライラは高橋の手を掴んだまま、思い切り壁を蹴り、跳び上がった。
「…詠唱完了!!」
 かなり早口で詠唱を終えた小猫の手に、手榴弾が現れた。
 次いで小猫は小鳥と人格交代する。小鳥の腕がピキピキと音を立てる。
「かーまーえーてええええっ!!」
 小鳥は円盤投げの要領で身体を回転させ、手榴弾をエリー達の真下に向かって投げつけた。手榴弾は爆発し、三人は爆風で宙に浮いた。
「うおあ!!」
 セーラとリタは飛ばされたエリーとライラ達を追い、また走り出した。上空のエリーとライラに向かい、リタが送心する。
『エリー君!! ライラ君!!』
「先輩!?」
 エリーとライラが見下ろすと、セーラとリタが二人を見上げ、走っているのが見えた。
 セーラはリタを通じ、二人に意思を送る。
「その高さでは負傷は免れない!! 墜落に備えて身を固くしておけ!!」
 ライラ、エリーは苦い顔をした。
「あー、やっぱり?」
「とりあえず、緊張しときゃいいのか?」
「おい。」
 ライラが目をやったのは、エリーとライラに手を掴まれたまま気絶している高橋だった。
「こいつどうする?」
「…仕方ねえ。」
 エリーは小さく嘆息する。
 高橋を上にして庇うように、自分達の背中を下向きにして、エリーとライラは着地体勢を取った。

 校舎五階の正面側廊下では。
「しっかりしてくれ三浦――――!」
 放心状態の三浦を、田中が半泣きになりながら揺さぶっていた。
「あ…え…?」
 ぼんやりと三浦が声を出す。田中は必死に叫んだ。
「高橋が――――!!」
「たかはし…?」
 三浦の目が虚ろに窓の外を見やる。空中で起きている光景が映った。
「…高橋が…? 空に…。落ちてる!!」
 三浦はバッと立ち上がる。窓から飛び出し、飛行能力でエリーとライラ、高橋の元へ一直線に飛んで行った。
「高橋――――!!」
「なっ!?」
「はあっ!?」
 突然向かって来た三浦に、エリーとライラは驚いた。
 エリー、ライラ、高橋が墜落する直前、三浦は三人に突っ込んだ。そのまま失速せずに学園近くの林に向かって行く。
「な、ちょっと!」
「止まれ止まれって!!」
 その時、セーラとリタが前に出、後輩四人の身体を受け止めた。先輩二人の身体が思い切り押される。
「ぐうっ…!」
『…っ!』
 セーラとリタがそれでも踏ん張ると三浦は失速して行き、皆の身体は林に突っ込む直前で止まった。
「っ…。」
『助かった…ね…。』
 セーラとリタが、大きく息を吐く。
「何だ…やりゃ出来んじゃねえかよ…三浦。」
 エリーは呆れながらも笑み、気絶している三浦を見やった。
 小猫は彼らの様子を三階の窓から見て、ホッと脱力した。
「良かった…無事だ…。」

「…う…。」
 三浦が目を覚ますと、そこは医務室だった。
 三浦の視界に真っ先に映ったのは、傷だらけのエリーとライラだった。三浦がよく解らない表情をしているとライラ、エリーの順で声がかかった。
「お、バカが気がついた。」
「よう、三浦。」
 三浦はゆっくりと身体を起こし、顔を歪ませ笑った。
「…何だ、珍しくぼろぼろじゃねえか、始末屋。」
 エリーとライラは眉間にしわを寄せた。
「…おうよ。先輩と後輩達にしこたま怒られたからな。」
「後輩は『もうやだこの人ー!!』とか泣きながら叩いてくるは蹴って来るは、セーラ先輩には殴られた挙げ句説教されるは、リタ先輩には『無事で良かったあー!!』とか言われながら往復ビンタ喰らうは、終いにゃシャーリーが『ちょっと!! 前庭に大穴開けたの誰!?』って踏み込んで来るは…散々だっての。」
「ざまーみろ、全てオレの計算通り。」
 三浦がにやりと笑った次の瞬間、エリーとライラの拳が三浦の頭を直撃した。
「「な訳ねーだろ!!」」
「…そうだな。」
 三浦が小さく呟いた肯定の言葉に、エリーとライラは疑問符を浮かべた。
 三浦は問う。
「…高橋は?」
「かすり傷だ。手当ても終わったし…。」
 エリーが答えると、ベッドの上の三浦に田中と高椅が抱きついて来た。
「「三浦あっ!」」
「田中…高椅…。」
 三浦が驚く中、半分泣きながら田中と高椅は叫ぶ。
「良かった無事で!!」
「助けてくれてありがとう、ありがとうなー!!」
「お前ら…。」
 三浦の口から、微かに震える声が発せられる。小悪党達を前に、エリーとライラは笑みながらため息を吐いた。
「…そういう訳なんだからよ。」
「あんまりバカな事してんじゃないっての。バカ。」
 二人の言葉を聞いた、三浦の口角がつり上がる。
「…ふっ。」
 三浦はエリーとライラを思い切り指差し、宣言した。
「これで終わったと思うな始末屋!! オレ達がオレ達でいる限り、何度でもお前らの邪魔をしてやるからな!!」
 田中と高椅も、挑戦的な笑みを浮かべている。
 エリーはいつもの様に三浦達を睨み、ライラはいつもの様ににやりと笑んだ。
「…上等。」
「来年度からは、オレ達の優秀な後輩を倒してから、来てもらう事になるけどな。」

 医務室の出入り口前で会話を聞きながら、小猫は苦笑した。
「よく言うよなあ…。」

 生徒会寮にある、セーラとリタの部屋。
 部屋の掃除をしながら、リタは感慨深気に話した。
『…もうすぐ、この部屋ともお別れかあ…。』
「ああ、そうだな。」
 同じく掃除をしながらセーラが返した後、沈黙が流れた。…少し重いそれは、しばし続いた。
『…セーラ。大学部に行っても、僕と仲良くしてくれる…?』
 リタの意志は、少し控えめに響いた。セーラは僅か黙ってから、切り出した。
「…リタ。ずっと言おうと思っていた。」
『…何?』
 リタの小さな問いに、セーラは静かな、はっきりとした声で答えた。
「…オレは、大学部には進まない。」
『! …そう、なんだ…。』
 リタはぎこちなく返した後、何も送心せずに掃除を続けた。

To Be Continued
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