第二十五話 二月 強き意志の捨て駒達 後編
エリー、ライラ、カグヤ、ジュリー、クラガリ姉弟が走って行くと、また広い空間に出た。
部屋に踏み込んだ途端、皆は強い敵意を感じ、思わず立ち止まる。
部屋の中心に小さな体躯の少年がいた。敵意を放つ少年は呟くように言い放つ。
「…全ては、都庁の為に。」
「…こいつもか?」
ライラが問うと、カグヤは頷く。
「都庁防衛システムの、一人。『無意 』。」
「黙れ、裏切り者。お前に名を呼ばれるだけで虫酸が走る。」
無意はカグヤに吐き捨て、エリー達を蔑むように見た。
「都庁に仇なすモノは許さない。お引き取り願おう。」
無意の声をかき消すように銃声が連続で響いた。後ろからエリーの背中が叩かれる。気付いたカグヤは走り出した。
エリーとライラはカグヤに続く。エリーは背中の痛みを感じながら、顔を歪ませ先へ走っていった。
無意は三人の背中を見ながら、顔をしかめて舌打ちをする。
「輝夜…あの裏切り者が…。」
「確かにあいつは、お前達にとっては裏切り者だろうが…。」
「何か言われ続けるの、腹立つっすね。」
エリーの背中を叩いたジュリーと、マシンガンを撃った小猫は言い返した。
ジュリーは無意を射抜くように見た。
「…お前には、祈ってもらう。」
ジュリーは一歩踏み出し、無意に突進する。小猫は後ろからマシンガンで援護射撃をし、無意の動きを封じた。
きり、と歯噛みする無意の眼前に出たジュリーは、無意の頭を鷲掴み、呟く。
「祈れ。」
ジュリーのもう一つの能力「断罪」…相手が持つ悪意に応じてダメージを与える能力を発動する時の言葉だ。
だが、無意は何も堪えた様子は無い。
「え、何も、起こらない…?」
小猫は思わず戸惑う。ジュリーは冷静に無意を見下ろした。
「…断罪の力が効かない…。お前には悪意が無いという事か…。」
ジュリーは無意の頭を掴んだまま腰を落とすと、思い切り拳を撃ち出す。無意のみぞおちにめりこみ、身体を吹っ飛ばした。
「うわ、ジュリー会長強かったんだ…。」
小猫が目を丸くする。
無意は痛みに顔を歪ませ、ジュリーを睨め付けながら起き上がる。ジュリーは無意に向かい、はっきりと口を開く。
「…都庁に対する純粋な妄信を抱いている…都庁の為なら何をするも厭わないか。…お前は危険だな。エリーとライラを追わせる訳にはいかない。」
「…小鳥姉ちゃん? …解った。」
小猫はマシンガンを手放す。人格交代し、今度は小鳥が無意を見据えた。
「…下がっていてください、ジュリー会長。会長の力が効かない以上、彼には物理攻撃しか効かないと思います。」
「そうだな。…だがオレは下がっていろというのは納得がいかない。あまり甘くは見てもらいたくないモノだな。」
「…では、何があっても自己責任で。」
「解っているさ。」
小鳥の言葉にジュリーは笑んで返すと、無意に視線を移した。
無意はふらつきながら立ち上がると、憎々し気に二人を睨みつけた。
「…都庁防衛システムを、甘く見るな!!」
無意は叫び、右手を握りしめた。太ももに付けていた小さなナイフを左手で引っ張り出し、自分の拳に切りつけた。無意の拳が自らの血に濡れ、真っ赤に染まる。
無意はナイフを捨て、思い切り踏み出す。ジュリーに迫り、赤い拳を撃ち出した。ジュリーが軽くかわした時、血に濡れた拳が身体を掠めた。
無意は背後に殺気を感じる。振り向いた時には跳び上がった小鳥が腕を振り下ろしていた。無意は黙って小鳥の腕を受け止める。小鳥の腕に無意の血が付く。
無意は後ろに跳び、ジュリー達から距離を取った。
「これで終わりだ。」
無意が呟いた次の瞬間、ジュリーと小鳥の身体を焼けるような痛みが襲った。
「なっ…!?」
「う…っ!」
痛みの中心は、無意の血が付いた部分だった。
無意は膝をついたジュリーと小鳥を、蔑むように見下ろした。
「私の身体から流れ出た血は、全てを葬る毒…。」
「…身体の力が…!」
「…苦しい…。」
ジュリーと小鳥は苦しみ、身体を倒した。
「全ては、都庁の為に。」
無意は遠くから、冷徹に二人を見やっている。もはや何もする事は無いと言うように。
無意の毒は、急速にジュリーと小鳥を蝕んでいく。血が付いた部分は爛れ、身体中が痛み、呼吸もやっとの状態になっていった。
「…小鳥っ…。」
ジュリーが苦痛に顔を歪ませながら、小鳥を呼ぶ。倒れている小鳥は身体中の痛みに耐えながら、ジュリーに意識を向ける。
地面に崩れながら、ジュリーは小鳥を見ていた。
「…一瞬だけでいい、隙を作れっ…。」
「…え…?」
「…ここで終わるなら…せめて、役目は果たしたい…!」
ジュリーが息も絶え絶えで発した言葉を聞き、小鳥はやっとの思いで身体を起こし、応えた。
「…はい…!」
立ち上がった小鳥は無意に向かい、思い切り駆け出した。
「あああああっ!!」
「最期に無謀か…。」
小鳥は飛び上がり、無意に手刀を繰り出す。無意は身体をずらしてかわし、小鳥の胸に思い切り掌底を喰らわせた。
小鳥は身体を吹っ飛ばされながら、呟いた。
「…小猫君…あれ…小春日がくれたモノ、全部暗記したよね…?」
十一月。
倉狩小春日による、学園占拠事件が終わった後。
目覚めたクラガリ姉弟に、田村は言った。
「…小春日から、貴方達に渡せと言われて預かっているモノがあるの。」
田村の言葉に、クラガリ姉弟は大いに戸惑った。
「あの人と、私達は…。どうして…?」
「あいつなりに、何か思うところがあるのかもしれないわ。」
田村はどこか痛むように笑むと、クラガリ姉弟に一通の封筒を渡した。
寮の自室に帰り、姉弟は封筒の中身を見た。
分厚い封筒に入っていた便せんには、沢山の文字や数字の羅列があった。
最後にはこう書かれていた。
「この世界には実在しない、銃火器の仕様だ。何か力が及ばない事があった時にでも使え。」
小鳥は一瞬ふ、と笑んだ。
「うん…なら、大丈夫…!」
小鳥の身体は地面に叩き付けられ、動かなくなった。無意は顔を歪ませる。
「…無様だな。」
「お前には言って欲しくないな。」
背後に気配を感じ、無意は驚き振り向く。眼前には、僅かの間に忍び寄っていたジュリーが立っていた。
ジュリーはあらん限りの力で、怒声を上げた。
「…元生徒会長を、オレの後輩を、舐めるなあ!!」
ジュリーは無意の身体を思い切りホールドした。
「離せ貴様!」
「祈れ!」
ジュリーは「断罪」能力の叫びを上げた。
「何かは知らないが、私にお前の力は…。」
無意が言った次には、ジュリーの身体のあちこちが裂け、血が噴き出した。
「なっ…!?」
「そうだ…オレは、自分自身の悪意に力を使った…!」
激痛に耐えながら、ジュリーは無意を睨む。
無意はジュリーの身体を振りほどこうとするが、ジュリーの血に濡れた身体は解けない。無意は必死にもがき、逃れようとした。
「クソッ…離せ…っ!」
「詠唱…完了っ…いくぞ…『リニアレールガン』!!」
倒れていたクラガリ姉弟の身体が叫び、出現させたのは巨大な黒い砲台だった。無意は驚愕に目を見開く。
「貴様、死んだ筈…!」
「小鳥姉ちゃんを…殺された復讐はさせてもらう…!」
小猫は無意を睨みつけ、最期の叫びを上げた。
「発射あ!!」
砲身が光り、轟音が響いた。リニアレールガンが発射され、天井が破壊された音だった。
「どこを…。!!」
吹っ飛ばされた天井の破片が部屋に降りそそぐ。その巨大な破片は通路も塞いでいく。
「これでいい…お前の進路と、退路を断つ事さえ出来れば…!」
小猫は攻撃的に笑むと、がくんと身体の力を抜いた。
無意は思わず声を上げる。
「貴様ら…! かはっ。」
無意の身体を痛みが襲う。次には焼けるような毒の苦しみが来た。
無意の腹には、彼が自分の拳を傷つける為に使ったナイフが刺さっていた。ナイフを持っていたのは、ジュリーの手だった。
驚きに目を見開く無意に、ジュリーは鋭く笑んで見せた。
「…お前の血に濡れたナイフだ…毒を持つ本人には効かないというのは、迷信だからな…!」
「く…あ…!」
無意の身体がその場に崩れたのをを確認し、ジュリーも倒れた。
「…エリーと、ライラ…あの二人…。これで、少しは、あいつらの…。」
「…頑張って…先輩…。」
学園世界では夜が明けようとしていた。
生徒達はまだ眠りについていたが、突然周囲を揺るがす轟音が響き、皆慌てて飛び起きた。
「うわあっ!!」
「何だ!?」
生徒達が窓の外を見ると、学園の敷地の一角に巨大な穴が開いていた。
「地面が…!?」
「な、何が起こった…!?」
生徒は驚き、混乱した。
生徒会寮の廊下をシャーリーは走る。エリーとライラの部屋の前で止まり、ドアを叩いた。
「エリー! ライラ! 大変な事が…!!」
「斜里君。」
不意に呼ばれ、シャーリーがバッと振り向くと、傷だらけの田村が立っていた。
「田村先生!? 一体…!!」
シャーリーが驚きと戸惑いを隠せずにいると、田村はシャーリーに真摯な眼差しを向けた。
「斜里君、皆を集めて。…話さなければいけない事があるわ。」
都庁の昏い道を走っていた、エリーの足が不意に止まった。気付いたライラも立ち止まる。
「…エリー?」
エリーは目を見開いて、微かに震えて立っている。
ライラはエリーを見、しばし黙ってから言い放った。
「後、一〇秒だけ待ってやる。それでもお前動かなかったら、その足斬り飛ばす。」
「…ライラ。」
睨むライラに、エリーは前を向いたまま、掠れた声で口を開く。
「…オレら、今、やってる事は。」
「やらなきゃいけない事だ。誰かがいずれ。」
ライラは言い切り、続ける。
「お前、今の聞こえたんだろ? お前はあの人達が賭けてくれた命、踏みつけて戻る気か?」
ライラは睨みを深くし、言葉を吐く。
「…お前、あの時オレを踏みつけなかった。お前がオレを生かしたんだ。だからオレは、今お前なんかとこうしてんだ。その責任、どう取ってくれる訳だ?」
カグヤはエリーとライラを見守るように黙っている。ライラは更に続けた。
「…それと、お前なら解るだろ。これから来る奴らに、そんな状態見せる気か! 学園始末屋!!」
ライラの叱咤に、エリーは唇を結ぶとまた駆け出す。ライラとカグヤも再び走り出した。
To Be Continued
部屋に踏み込んだ途端、皆は強い敵意を感じ、思わず立ち止まる。
部屋の中心に小さな体躯の少年がいた。敵意を放つ少年は呟くように言い放つ。
「…全ては、都庁の為に。」
「…こいつもか?」
ライラが問うと、カグヤは頷く。
「都庁防衛システムの、一人。『
「黙れ、裏切り者。お前に名を呼ばれるだけで虫酸が走る。」
無意はカグヤに吐き捨て、エリー達を蔑むように見た。
「都庁に仇なすモノは許さない。お引き取り願おう。」
無意の声をかき消すように銃声が連続で響いた。後ろからエリーの背中が叩かれる。気付いたカグヤは走り出した。
エリーとライラはカグヤに続く。エリーは背中の痛みを感じながら、顔を歪ませ先へ走っていった。
無意は三人の背中を見ながら、顔をしかめて舌打ちをする。
「輝夜…あの裏切り者が…。」
「確かにあいつは、お前達にとっては裏切り者だろうが…。」
「何か言われ続けるの、腹立つっすね。」
エリーの背中を叩いたジュリーと、マシンガンを撃った小猫は言い返した。
ジュリーは無意を射抜くように見た。
「…お前には、祈ってもらう。」
ジュリーは一歩踏み出し、無意に突進する。小猫は後ろからマシンガンで援護射撃をし、無意の動きを封じた。
きり、と歯噛みする無意の眼前に出たジュリーは、無意の頭を鷲掴み、呟く。
「祈れ。」
ジュリーのもう一つの能力「断罪」…相手が持つ悪意に応じてダメージを与える能力を発動する時の言葉だ。
だが、無意は何も堪えた様子は無い。
「え、何も、起こらない…?」
小猫は思わず戸惑う。ジュリーは冷静に無意を見下ろした。
「…断罪の力が効かない…。お前には悪意が無いという事か…。」
ジュリーは無意の頭を掴んだまま腰を落とすと、思い切り拳を撃ち出す。無意のみぞおちにめりこみ、身体を吹っ飛ばした。
「うわ、ジュリー会長強かったんだ…。」
小猫が目を丸くする。
無意は痛みに顔を歪ませ、ジュリーを睨め付けながら起き上がる。ジュリーは無意に向かい、はっきりと口を開く。
「…都庁に対する純粋な妄信を抱いている…都庁の為なら何をするも厭わないか。…お前は危険だな。エリーとライラを追わせる訳にはいかない。」
「…小鳥姉ちゃん? …解った。」
小猫はマシンガンを手放す。人格交代し、今度は小鳥が無意を見据えた。
「…下がっていてください、ジュリー会長。会長の力が効かない以上、彼には物理攻撃しか効かないと思います。」
「そうだな。…だがオレは下がっていろというのは納得がいかない。あまり甘くは見てもらいたくないモノだな。」
「…では、何があっても自己責任で。」
「解っているさ。」
小鳥の言葉にジュリーは笑んで返すと、無意に視線を移した。
無意はふらつきながら立ち上がると、憎々し気に二人を睨みつけた。
「…都庁防衛システムを、甘く見るな!!」
無意は叫び、右手を握りしめた。太ももに付けていた小さなナイフを左手で引っ張り出し、自分の拳に切りつけた。無意の拳が自らの血に濡れ、真っ赤に染まる。
無意はナイフを捨て、思い切り踏み出す。ジュリーに迫り、赤い拳を撃ち出した。ジュリーが軽くかわした時、血に濡れた拳が身体を掠めた。
無意は背後に殺気を感じる。振り向いた時には跳び上がった小鳥が腕を振り下ろしていた。無意は黙って小鳥の腕を受け止める。小鳥の腕に無意の血が付く。
無意は後ろに跳び、ジュリー達から距離を取った。
「これで終わりだ。」
無意が呟いた次の瞬間、ジュリーと小鳥の身体を焼けるような痛みが襲った。
「なっ…!?」
「う…っ!」
痛みの中心は、無意の血が付いた部分だった。
無意は膝をついたジュリーと小鳥を、蔑むように見下ろした。
「私の身体から流れ出た血は、全てを葬る毒…。」
「…身体の力が…!」
「…苦しい…。」
ジュリーと小鳥は苦しみ、身体を倒した。
「全ては、都庁の為に。」
無意は遠くから、冷徹に二人を見やっている。もはや何もする事は無いと言うように。
無意の毒は、急速にジュリーと小鳥を蝕んでいく。血が付いた部分は爛れ、身体中が痛み、呼吸もやっとの状態になっていった。
「…小鳥っ…。」
ジュリーが苦痛に顔を歪ませながら、小鳥を呼ぶ。倒れている小鳥は身体中の痛みに耐えながら、ジュリーに意識を向ける。
地面に崩れながら、ジュリーは小鳥を見ていた。
「…一瞬だけでいい、隙を作れっ…。」
「…え…?」
「…ここで終わるなら…せめて、役目は果たしたい…!」
ジュリーが息も絶え絶えで発した言葉を聞き、小鳥はやっとの思いで身体を起こし、応えた。
「…はい…!」
立ち上がった小鳥は無意に向かい、思い切り駆け出した。
「あああああっ!!」
「最期に無謀か…。」
小鳥は飛び上がり、無意に手刀を繰り出す。無意は身体をずらしてかわし、小鳥の胸に思い切り掌底を喰らわせた。
小鳥は身体を吹っ飛ばされながら、呟いた。
「…小猫君…あれ…小春日がくれたモノ、全部暗記したよね…?」
十一月。
倉狩小春日による、学園占拠事件が終わった後。
目覚めたクラガリ姉弟に、田村は言った。
「…小春日から、貴方達に渡せと言われて預かっているモノがあるの。」
田村の言葉に、クラガリ姉弟は大いに戸惑った。
「あの人と、私達は…。どうして…?」
「あいつなりに、何か思うところがあるのかもしれないわ。」
田村はどこか痛むように笑むと、クラガリ姉弟に一通の封筒を渡した。
寮の自室に帰り、姉弟は封筒の中身を見た。
分厚い封筒に入っていた便せんには、沢山の文字や数字の羅列があった。
最後にはこう書かれていた。
「この世界には実在しない、銃火器の仕様だ。何か力が及ばない事があった時にでも使え。」
小鳥は一瞬ふ、と笑んだ。
「うん…なら、大丈夫…!」
小鳥の身体は地面に叩き付けられ、動かなくなった。無意は顔を歪ませる。
「…無様だな。」
「お前には言って欲しくないな。」
背後に気配を感じ、無意は驚き振り向く。眼前には、僅かの間に忍び寄っていたジュリーが立っていた。
ジュリーはあらん限りの力で、怒声を上げた。
「…元生徒会長を、オレの後輩を、舐めるなあ!!」
ジュリーは無意の身体を思い切りホールドした。
「離せ貴様!」
「祈れ!」
ジュリーは「断罪」能力の叫びを上げた。
「何かは知らないが、私にお前の力は…。」
無意が言った次には、ジュリーの身体のあちこちが裂け、血が噴き出した。
「なっ…!?」
「そうだ…オレは、自分自身の悪意に力を使った…!」
激痛に耐えながら、ジュリーは無意を睨む。
無意はジュリーの身体を振りほどこうとするが、ジュリーの血に濡れた身体は解けない。無意は必死にもがき、逃れようとした。
「クソッ…離せ…っ!」
「詠唱…完了っ…いくぞ…『リニアレールガン』!!」
倒れていたクラガリ姉弟の身体が叫び、出現させたのは巨大な黒い砲台だった。無意は驚愕に目を見開く。
「貴様、死んだ筈…!」
「小鳥姉ちゃんを…殺された復讐はさせてもらう…!」
小猫は無意を睨みつけ、最期の叫びを上げた。
「発射あ!!」
砲身が光り、轟音が響いた。リニアレールガンが発射され、天井が破壊された音だった。
「どこを…。!!」
吹っ飛ばされた天井の破片が部屋に降りそそぐ。その巨大な破片は通路も塞いでいく。
「これでいい…お前の進路と、退路を断つ事さえ出来れば…!」
小猫は攻撃的に笑むと、がくんと身体の力を抜いた。
無意は思わず声を上げる。
「貴様ら…! かはっ。」
無意の身体を痛みが襲う。次には焼けるような毒の苦しみが来た。
無意の腹には、彼が自分の拳を傷つける為に使ったナイフが刺さっていた。ナイフを持っていたのは、ジュリーの手だった。
驚きに目を見開く無意に、ジュリーは鋭く笑んで見せた。
「…お前の血に濡れたナイフだ…毒を持つ本人には効かないというのは、迷信だからな…!」
「く…あ…!」
無意の身体がその場に崩れたのをを確認し、ジュリーも倒れた。
「…エリーと、ライラ…あの二人…。これで、少しは、あいつらの…。」
「…頑張って…先輩…。」
学園世界では夜が明けようとしていた。
生徒達はまだ眠りについていたが、突然周囲を揺るがす轟音が響き、皆慌てて飛び起きた。
「うわあっ!!」
「何だ!?」
生徒達が窓の外を見ると、学園の敷地の一角に巨大な穴が開いていた。
「地面が…!?」
「な、何が起こった…!?」
生徒は驚き、混乱した。
生徒会寮の廊下をシャーリーは走る。エリーとライラの部屋の前で止まり、ドアを叩いた。
「エリー! ライラ! 大変な事が…!!」
「斜里君。」
不意に呼ばれ、シャーリーがバッと振り向くと、傷だらけの田村が立っていた。
「田村先生!? 一体…!!」
シャーリーが驚きと戸惑いを隠せずにいると、田村はシャーリーに真摯な眼差しを向けた。
「斜里君、皆を集めて。…話さなければいけない事があるわ。」
都庁の昏い道を走っていた、エリーの足が不意に止まった。気付いたライラも立ち止まる。
「…エリー?」
エリーは目を見開いて、微かに震えて立っている。
ライラはエリーを見、しばし黙ってから言い放った。
「後、一〇秒だけ待ってやる。それでもお前動かなかったら、その足斬り飛ばす。」
「…ライラ。」
睨むライラに、エリーは前を向いたまま、掠れた声で口を開く。
「…オレら、今、やってる事は。」
「やらなきゃいけない事だ。誰かがいずれ。」
ライラは言い切り、続ける。
「お前、今の聞こえたんだろ? お前はあの人達が賭けてくれた命、踏みつけて戻る気か?」
ライラは睨みを深くし、言葉を吐く。
「…お前、あの時オレを踏みつけなかった。お前がオレを生かしたんだ。だからオレは、今お前なんかとこうしてんだ。その責任、どう取ってくれる訳だ?」
カグヤはエリーとライラを見守るように黙っている。ライラは更に続けた。
「…それと、お前なら解るだろ。これから来る奴らに、そんな状態見せる気か! 学園始末屋!!」
ライラの叱咤に、エリーは唇を結ぶとまた駆け出す。ライラとカグヤも再び走り出した。
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