序章
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ここ最近は日中は厳しい寒さが少し和らいできたように感じる。九尾の事件から半年以上過ぎた。しかし未だにあの夜の恐ろしい空気を夢に見ては浅い眠りを繰り返す日が続いている。
里は徐々に復興が進んで、日があるうちに歩いていると新しく建てられた店で商いを再開していたり、私とそう変わらないくらいの子供がじゃれながら走る姿も見られるようになった。
顔岩が見下ろすこの辺りは九尾による被害が少なく、アカデミーや火影邸、病院など主要な機関はもう従来通りの機能を取り戻している。
ここ最近はずっと里の蔵書を閲覧できる図書館に通いつめていた。なんせ私には忍術全般において基礎知識がなさすぎる。何気なしに使っているチャクラとはなんたるか、基本的な操作、術を発動させる条件、クナイや手裏剣の握り方。読みやすそうな児童書やアカデミーで使われているらしき教科書、あるいは子育て雑誌なんかにも目を通した。
最初のうちは理解できないことも、体感的にピンとこないことも多かった。本を読んでは練習して、分からないところをまた調べて、そのうちに納得できるようになってきたのだった。
帰る家は相変わらず、主に身寄りのない子供を保護しているプレハブである。あの九尾の災害があった当初はたくさんいた子供は、気付けばだいぶ少なくなっていた。
最初は、忍として戦った両親が迎えに来たり、あるいは親戚が見つかったりしてあるべき家に帰っていった。この時点でこの施設の半分以上は減っていたように思う。
その次に養子などとして引き取られていった子供が多い。特に幼い五歳までの子供は引き取られやすいようで、現在この屋根の下に保護されている中では私が一番最年少である。近頃、施設に働きに来る大人たちに売れ残っていると噂されていることは気にしないようにしている。
ある日の夕食の時間。
この施設では、施設の中でも一番大きな部屋に子供を集めて三食の提供を行っている。
頭数が減り、自分とその周囲にいる人間の顔を見渡していて、その子に目が留まる。
髪を高い位置で結び、何より目を引く鼻のところに横一線傷がある男の子である。今の私、もうすぐ五歳からみればかなりお兄さんのように見える。その風貌にピンときて一つ作戦を立てた。
「ねえ、あの、お兄ちゃん、」
トレーに自分の食事をもらって、目的の人物に声をかけた。すでに食べ始めていた彼は、声をかけられてこちらを向いた。
「ん?おれ?」
「そう。ご飯一緒に食べてくれない?」
彼はなんで?という風に少し首を傾げて、周りを見回したあと「まあ、いいけど、」と頷いてくれた。もっと嫌がられるかとも心配してはいたのだが、杞憂だったようだ。
隣の席に座って、まずは何を話すべきか。取り敢えず、戴きますと手を合わせる。用意されている箸は手の大きさに合わないので、仕方なく子供用フォークで白米を食べる。特に話題は浮かばない。
年下の立場から、十歳くらいにみえる彼に振る話題って何が適切なんだ?となりに座っておきながら何も喋ることができないまま、どことなく気まずい空気の中で白米だけを食べていた。
「なあ、あのな、飯っていうのは順番に食べるんだぞ。白米ばっかじゃおかずが残るだろ。」
「え、っと。」
「ほら、よく見てろ。こうやって、めし…、さかな…、汁…。真似してみな。」
指摘を受けて、左手に支えていた茶碗を置く。他の皿は全く減っていないのに、もう茶碗の底の半分が見えている。視線を受けながら言われた通りに魚に汁にと"三角食べ"をすると、彼もまた自分の食事に戻った。
当然、先に食べていた彼はパンッと手を合わせて少しわざとらしく「ごちそうさまでした!」と食べ終えてしまう。
今日、この時間は折角のチャンスなのだ。彼との接点は終わらせたくない。
「急いで食べるから、待って。置いて行かないで…。あ、」
椅子から腰を浮かせた彼を引き留めようとして、持っていたフォークを落としてしまった。
二人の間で一瞬だけ時が止まったようだ。
「分かった、待つから、落ち着いてたべな。」
彼は小さくため息をついて、フォークを取り替えてくれた。そして席について待つ姿勢をとってくれたのだった。
「ありがとう。私、うゆうっていうの。お兄ちゃんの名前は?」
「うみの、イルカ。」
「イルカ…お兄ちゃんね。」
彼の面倒みの良さに気付く。少し照れ臭そうに下唇が出ている。その様子に、さっきまでの緊張は解れて、するすると話題が浮かんでくるようになった。
里は徐々に復興が進んで、日があるうちに歩いていると新しく建てられた店で商いを再開していたり、私とそう変わらないくらいの子供がじゃれながら走る姿も見られるようになった。
顔岩が見下ろすこの辺りは九尾による被害が少なく、アカデミーや火影邸、病院など主要な機関はもう従来通りの機能を取り戻している。
ここ最近はずっと里の蔵書を閲覧できる図書館に通いつめていた。なんせ私には忍術全般において基礎知識がなさすぎる。何気なしに使っているチャクラとはなんたるか、基本的な操作、術を発動させる条件、クナイや手裏剣の握り方。読みやすそうな児童書やアカデミーで使われているらしき教科書、あるいは子育て雑誌なんかにも目を通した。
最初のうちは理解できないことも、体感的にピンとこないことも多かった。本を読んでは練習して、分からないところをまた調べて、そのうちに納得できるようになってきたのだった。
帰る家は相変わらず、主に身寄りのない子供を保護しているプレハブである。あの九尾の災害があった当初はたくさんいた子供は、気付けばだいぶ少なくなっていた。
最初は、忍として戦った両親が迎えに来たり、あるいは親戚が見つかったりしてあるべき家に帰っていった。この時点でこの施設の半分以上は減っていたように思う。
その次に養子などとして引き取られていった子供が多い。特に幼い五歳までの子供は引き取られやすいようで、現在この屋根の下に保護されている中では私が一番最年少である。近頃、施設に働きに来る大人たちに売れ残っていると噂されていることは気にしないようにしている。
ある日の夕食の時間。
この施設では、施設の中でも一番大きな部屋に子供を集めて三食の提供を行っている。
頭数が減り、自分とその周囲にいる人間の顔を見渡していて、その子に目が留まる。
髪を高い位置で結び、何より目を引く鼻のところに横一線傷がある男の子である。今の私、もうすぐ五歳からみればかなりお兄さんのように見える。その風貌にピンときて一つ作戦を立てた。
「ねえ、あの、お兄ちゃん、」
トレーに自分の食事をもらって、目的の人物に声をかけた。すでに食べ始めていた彼は、声をかけられてこちらを向いた。
「ん?おれ?」
「そう。ご飯一緒に食べてくれない?」
彼はなんで?という風に少し首を傾げて、周りを見回したあと「まあ、いいけど、」と頷いてくれた。もっと嫌がられるかとも心配してはいたのだが、杞憂だったようだ。
隣の席に座って、まずは何を話すべきか。取り敢えず、戴きますと手を合わせる。用意されている箸は手の大きさに合わないので、仕方なく子供用フォークで白米を食べる。特に話題は浮かばない。
年下の立場から、十歳くらいにみえる彼に振る話題って何が適切なんだ?となりに座っておきながら何も喋ることができないまま、どことなく気まずい空気の中で白米だけを食べていた。
「なあ、あのな、飯っていうのは順番に食べるんだぞ。白米ばっかじゃおかずが残るだろ。」
「え、っと。」
「ほら、よく見てろ。こうやって、めし…、さかな…、汁…。真似してみな。」
指摘を受けて、左手に支えていた茶碗を置く。他の皿は全く減っていないのに、もう茶碗の底の半分が見えている。視線を受けながら言われた通りに魚に汁にと"三角食べ"をすると、彼もまた自分の食事に戻った。
当然、先に食べていた彼はパンッと手を合わせて少しわざとらしく「ごちそうさまでした!」と食べ終えてしまう。
今日、この時間は折角のチャンスなのだ。彼との接点は終わらせたくない。
「急いで食べるから、待って。置いて行かないで…。あ、」
椅子から腰を浮かせた彼を引き留めようとして、持っていたフォークを落としてしまった。
二人の間で一瞬だけ時が止まったようだ。
「分かった、待つから、落ち着いてたべな。」
彼は小さくため息をついて、フォークを取り替えてくれた。そして席について待つ姿勢をとってくれたのだった。
「ありがとう。私、うゆうっていうの。お兄ちゃんの名前は?」
「うみの、イルカ。」
「イルカ…お兄ちゃんね。」
彼の面倒みの良さに気付く。少し照れ臭そうに下唇が出ている。その様子に、さっきまでの緊張は解れて、するすると話題が浮かんでくるようになった。
