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アカデミーにはもうもはや通っているだけという状態になっていた。今以上の教育を得るなら、授業としてではなく教師陣に直接手解きを受けた方が良いだろう。普段なら昼休みに友人たちと食事を摂るが、断って職員室へ向かう。
教師陣が集まる一室の扉を引こうとして、中から聞こえてくる会話に手を止めた。
「イタチは優秀すぎる生徒でしたね。」
「いや、もう。彼に教えることなんてありませんでした。」
「六年在学制度が決まったばかりだったのに例外が排出されるのがあまりにも早い。」
「仕方がないですよ、誰もが認めざるを得ませんでしたから。」
それを聞いて真っ先に胸中に湧き上がったのは、劣等感だった。
いや、そんな筈はない。
精神年齢で言えば私はもう大人になっているはずだし、実年齢なら彼のほうが一つ年上、家柄にも差がある、比べるにはそもそもの基準があまりにも違うのだから。
心の内側に限った話では、彼は守るべき子どもである。
自分の中にある焦りに気付いたことで感情がゆっくりと凪いでいくのが分かった。忍者として心を封じるような凪ぎ方ではなく、これは。
戸を引くため持ち上げた腕から力が抜けた。
授業を終えて図書館へ急ぐ。読み終わった本を返却して、また別の歴史書を借りる。ほぼ毎日本を持ち出しているので、貸出記録をつけるカードはもう何枚も更新していて、この図書館を担当する司書にはすっかり借りる本の系統を覚えられていた。
町中を歩くとたまに見知った顔とばったり出くわすこともある。
「うゆうさん!」
「あれ、サスケくん。久し振りだね。」
走り寄っては、うん!と頷いた大きい頭を撫でる。とても愛嬌がある。私の周りにはサスケくらいの幼い子がいないので、これくらいの子特有の距離の近さに圧倒されてしまう。
「今日はお母さんとお買い物かな?」
「ううん、母さんじゃなくて兄さんと一緒に来たんだ。」
「サスケ、突然走り出すな。危ないだろう。」
店から少し慌てて出てきたイタチと目が合う。職員室で聞いた会話が頭を過ぎったけれど、それは私だけの問題である。久しぶりに会えた友に自然と眉が下がった。
「久しぶり。元気そうで何よりだよ。」
「ああ。うゆうも。」
「今日はイタチ、非番なの?」
「そうだよ!買い物を終えたら一緒に修行するんだ。」
サスケが存在をアピールするかのように小さくジャンプした。
「良かったね。前に私と一緒に修行したとき、イタチに見てもらうんだって言ってたもんね。」
「うん!ねえ、うゆうさんも一緒に修行しようよ。」
「ええ、でも二人が良いんじゃない?」
兄弟で過ごせる時間が少ないのを残念がっていたのだから、せっかくの休日に水を挿してもいけないだろう。そういった意味を込めてイタチを見ると、サスケもそう言っているし一緒に来ないか、と言われてしまった。なんだか彼の弟への甘さを垣間見た気がする。弟の話をするときの彼は目尻がずっと優しいのだ。
一旦二人と別れて荷物を置きに施設に帰り、うちはの集落内で待ち合わせをする。駆けて行けば二人はまだ到着していないようだった。手持ち無沙汰になって少しだけ集落の中を歩きたくなった。
木ノ葉の一角にあるこの集落は昔ながらの建築様式で建てられた家が多く、里の中央とは纏う雰囲気が違う。この場所は背筋を伸ばすような清廉な空気はあるがどこか懐かしさと心を落ち着かせる不思議な土地だと思う。
目指す場所もなく歩いていたのに導かれるように立派な鳥居の前に辿り着いた。ここ南賀ノ神社には初めて訪れたが知っている。歴史書にも名があるような有名な神社だ。
不思議と心拍数が上がる。このとき頭の中にはすっかり待ち合わせのことは抜け落ちていて、石造りの階段をゆっくり登った。
本殿を前に短く息を吐く。
この感覚は、あのときと同じだ。九尾を目の前にしたときの。記憶がグツグツと燃えて脳を焦がそうとする。どうして、どうして今なのだろう。この場所に何か所縁でもあるというのか。
「ーーーい、おい!うゆう!」
肩を引かれてやっと意識が戻る。
「あ、あ、イタチ?」
「声を掛けたのに反応が無いなんて、何かあったのか?」
「……ちょっと白昼夢でも見てたのかも。でもなんともないよ。」
「うゆうさん、大丈夫?」
「サスケくんも、心配かけてごめんね。少しぼんやりしてただけで本当に大丈夫なの。」
息を落ち着けても頭に手を当てた私の様子にイタチは僅かに顔を顰める。
「サスケ、うゆうを家に送ってくるから家で待っててくれるか。」
「え!俺も一緒にいく!」
「すぐ戻るから、な。」
「二人とも、本当に大丈夫だってば。修行しに行こうよ。」
「駄目だよ、ひき始めが大事って母さんも言ってた!」
「そういう事だ。うゆう、行こう。」
でも、と言葉を続けようとした私の手を取ったのはサスケだった。ずっと背の低いこの子の手を振り払うことなんてできない。大人しくついていくと、サスケは振り返って眩しく笑った。
教師陣が集まる一室の扉を引こうとして、中から聞こえてくる会話に手を止めた。
「イタチは優秀すぎる生徒でしたね。」
「いや、もう。彼に教えることなんてありませんでした。」
「六年在学制度が決まったばかりだったのに例外が排出されるのがあまりにも早い。」
「仕方がないですよ、誰もが認めざるを得ませんでしたから。」
それを聞いて真っ先に胸中に湧き上がったのは、劣等感だった。
いや、そんな筈はない。
精神年齢で言えば私はもう大人になっているはずだし、実年齢なら彼のほうが一つ年上、家柄にも差がある、比べるにはそもそもの基準があまりにも違うのだから。
心の内側に限った話では、彼は守るべき子どもである。
自分の中にある焦りに気付いたことで感情がゆっくりと凪いでいくのが分かった。忍者として心を封じるような凪ぎ方ではなく、これは。
戸を引くため持ち上げた腕から力が抜けた。
授業を終えて図書館へ急ぐ。読み終わった本を返却して、また別の歴史書を借りる。ほぼ毎日本を持ち出しているので、貸出記録をつけるカードはもう何枚も更新していて、この図書館を担当する司書にはすっかり借りる本の系統を覚えられていた。
町中を歩くとたまに見知った顔とばったり出くわすこともある。
「うゆうさん!」
「あれ、サスケくん。久し振りだね。」
走り寄っては、うん!と頷いた大きい頭を撫でる。とても愛嬌がある。私の周りにはサスケくらいの幼い子がいないので、これくらいの子特有の距離の近さに圧倒されてしまう。
「今日はお母さんとお買い物かな?」
「ううん、母さんじゃなくて兄さんと一緒に来たんだ。」
「サスケ、突然走り出すな。危ないだろう。」
店から少し慌てて出てきたイタチと目が合う。職員室で聞いた会話が頭を過ぎったけれど、それは私だけの問題である。久しぶりに会えた友に自然と眉が下がった。
「久しぶり。元気そうで何よりだよ。」
「ああ。うゆうも。」
「今日はイタチ、非番なの?」
「そうだよ!買い物を終えたら一緒に修行するんだ。」
サスケが存在をアピールするかのように小さくジャンプした。
「良かったね。前に私と一緒に修行したとき、イタチに見てもらうんだって言ってたもんね。」
「うん!ねえ、うゆうさんも一緒に修行しようよ。」
「ええ、でも二人が良いんじゃない?」
兄弟で過ごせる時間が少ないのを残念がっていたのだから、せっかくの休日に水を挿してもいけないだろう。そういった意味を込めてイタチを見ると、サスケもそう言っているし一緒に来ないか、と言われてしまった。なんだか彼の弟への甘さを垣間見た気がする。弟の話をするときの彼は目尻がずっと優しいのだ。
一旦二人と別れて荷物を置きに施設に帰り、うちはの集落内で待ち合わせをする。駆けて行けば二人はまだ到着していないようだった。手持ち無沙汰になって少しだけ集落の中を歩きたくなった。
木ノ葉の一角にあるこの集落は昔ながらの建築様式で建てられた家が多く、里の中央とは纏う雰囲気が違う。この場所は背筋を伸ばすような清廉な空気はあるがどこか懐かしさと心を落ち着かせる不思議な土地だと思う。
目指す場所もなく歩いていたのに導かれるように立派な鳥居の前に辿り着いた。ここ南賀ノ神社には初めて訪れたが知っている。歴史書にも名があるような有名な神社だ。
不思議と心拍数が上がる。このとき頭の中にはすっかり待ち合わせのことは抜け落ちていて、石造りの階段をゆっくり登った。
本殿を前に短く息を吐く。
この感覚は、あのときと同じだ。九尾を目の前にしたときの。記憶がグツグツと燃えて脳を焦がそうとする。どうして、どうして今なのだろう。この場所に何か所縁でもあるというのか。
「ーーーい、おい!うゆう!」
肩を引かれてやっと意識が戻る。
「あ、あ、イタチ?」
「声を掛けたのに反応が無いなんて、何かあったのか?」
「……ちょっと白昼夢でも見てたのかも。でもなんともないよ。」
「うゆうさん、大丈夫?」
「サスケくんも、心配かけてごめんね。少しぼんやりしてただけで本当に大丈夫なの。」
息を落ち着けても頭に手を当てた私の様子にイタチは僅かに顔を顰める。
「サスケ、うゆうを家に送ってくるから家で待っててくれるか。」
「え!俺も一緒にいく!」
「すぐ戻るから、な。」
「二人とも、本当に大丈夫だってば。修行しに行こうよ。」
「駄目だよ、ひき始めが大事って母さんも言ってた!」
「そういう事だ。うゆう、行こう。」
でも、と言葉を続けようとした私の手を取ったのはサスケだった。ずっと背の低いこの子の手を振り払うことなんてできない。大人しくついていくと、サスケは振り返って眩しく笑った。
