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九尾の襲来からもうすぐ四年が経とうとしている。施設長につけてもらう修行の数々は忍者として確実に力となり、アカデミーでの授業はすっかり物足りないものになってしまっていた。
自己流の修行で伸び悩んでいた体術と忍具のスキルはここにきて飛躍的に伸びた。それでも施設長を相手にした組手で一本も取れないのは、踏んだ場数の違いなのだろうか。
知識を蓄え、実践を繰り返し、全てが足りないような気がして恐ろしくなる。持久力も筋力も、チャクラ量も技術も速さも、それに覚悟も。焦ってはいけない。時代や環境を比べてもいけない。
日々がむしゃらに取り組んでいたある日。
「そういえばうゆう、いつも忙しくしてるみたいだが、墓参りは行っているのか?」
「はか?」
「両親の墓だよ。……まさか、」
信じられない、といった視線を一身に受け、そういわれれば今日まで一度も行ってないことに気付いた。
両親を亡くした日からもう四年も経つ。もうすぐ彼らと過ごした時間と同じだけの時間が過ぎてしまうのだ。大切な人であったことには変わりないのに、顔もうまく思い出せなくなってきている。
自分のことで精一杯になっていたけど、そういえば三人で住んでいた部屋がどうなったのか、二人の遺品がどうなったのか、知らない。たしか被害が大きい方の区画だったはずなので瓦礫と一緒くたに処分されてしまったのかもしれない。
「いや、俺が悪かった。あのときお前はまだ五歳にもならん子供だったからな。里もひとり一人丁寧に葬儀をする余裕はなかった。」
「両親にも墓があるんでしょうか。慰霊碑に名が刻まれるだけなのかな。」
「自分に頓着しないやつだとは思っていたが、肉親さえ気に留めないとはな……。よし、分かった。明日時間を取って墓参りをしに行こう。」
こんなに時間を空けて今更な気もするが、忍者になる覚悟を決めたことくらい報告しておかなければそれこそ本当に親不孝だろう。明日どんな顔をしたらいいのか、今のうちに考えておこう。
翌日、アカデミーの授業を終えて正門を出ると施設長が待っていた。よく一緒に話す女友達に手を振ってから早足で駆け寄った。
両親は殉職した忍者たちの共同墓地にあるらしく、向かう道中花を買い、前を行く背を追う。
「両親のことは覚えているのか?」
「まあ、はい。断片的にですが。両親が揃ったときにはよく鍋をしました。」
「いい思い出じゃないか。」
共同墓地には同じ形の墓石が並び、それぞれ別の名前が彫られている。花が生けられているところもあれば、薄く土埃を纏うものもあった。
いざ、目的の墓石の前に立つと不思議な気持ちになる。夫婦だからか、名字のあとに二人の名前が重なるように彫られている。そういえば彼らは生前とても仲のいい夫婦だったことを思い出す。
いままで顔を出さなかったこと、怒っているだろうか。心配していただろうか。両親の訃報を聞いても涙さえ流さなかった子供を許すだろうか。
別人として生きていた記憶が上書きされ家族の絆というものが薄れた気になっていたが、それはただの思い込みである。だって今こんなにも二人に話がしたい。
しゃがんで触れた墓石は無機質な温度をしていた。
ただ一言「忍者になるよ。」とだけ報告をして振り返る。あまり施設長を待たせてもいけない。場所は覚えたので次は一人でも来れる。
墓地を出るタイミングで目の前から目立つ髪の青年が歩いてくるのを見た。彼のまとう雰囲気にどうも肩が張る。そんな様子に気付かず、施設長が思わず、といった風に青年に声をかけた。
「なあ、君はもしかして、カカシくんか?」
「……。失礼、どちら様でしょうか。」
「おっと、そうだよな。君の父には世話になっていてな、君とも一度だけ会ったことがある。」
「はあ。そうでしたか。」
私から六歩先に立つ彼はまだ成人もしていないような年齢だろうに、不相応だと思ってしまうくらい暗い目をしているように思えた。彼がまとう冷ややかな雰囲気に長も何かを察したのか、一つ言葉を飲み込んだようだ。
「用が無いようなら、失礼します。」
通り過ぎる。私に見向きもせず、長の影を踏み奥へ。
ひとこと、挨拶をすることもできなかった。全ての言葉を拒否されているかのように感じて、どうにも寂しい気持ちになる。
彼の背中を見送った施設長も、瞳に影を落とした。
自己流の修行で伸び悩んでいた体術と忍具のスキルはここにきて飛躍的に伸びた。それでも施設長を相手にした組手で一本も取れないのは、踏んだ場数の違いなのだろうか。
知識を蓄え、実践を繰り返し、全てが足りないような気がして恐ろしくなる。持久力も筋力も、チャクラ量も技術も速さも、それに覚悟も。焦ってはいけない。時代や環境を比べてもいけない。
日々がむしゃらに取り組んでいたある日。
「そういえばうゆう、いつも忙しくしてるみたいだが、墓参りは行っているのか?」
「はか?」
「両親の墓だよ。……まさか、」
信じられない、といった視線を一身に受け、そういわれれば今日まで一度も行ってないことに気付いた。
両親を亡くした日からもう四年も経つ。もうすぐ彼らと過ごした時間と同じだけの時間が過ぎてしまうのだ。大切な人であったことには変わりないのに、顔もうまく思い出せなくなってきている。
自分のことで精一杯になっていたけど、そういえば三人で住んでいた部屋がどうなったのか、二人の遺品がどうなったのか、知らない。たしか被害が大きい方の区画だったはずなので瓦礫と一緒くたに処分されてしまったのかもしれない。
「いや、俺が悪かった。あのときお前はまだ五歳にもならん子供だったからな。里もひとり一人丁寧に葬儀をする余裕はなかった。」
「両親にも墓があるんでしょうか。慰霊碑に名が刻まれるだけなのかな。」
「自分に頓着しないやつだとは思っていたが、肉親さえ気に留めないとはな……。よし、分かった。明日時間を取って墓参りをしに行こう。」
こんなに時間を空けて今更な気もするが、忍者になる覚悟を決めたことくらい報告しておかなければそれこそ本当に親不孝だろう。明日どんな顔をしたらいいのか、今のうちに考えておこう。
翌日、アカデミーの授業を終えて正門を出ると施設長が待っていた。よく一緒に話す女友達に手を振ってから早足で駆け寄った。
両親は殉職した忍者たちの共同墓地にあるらしく、向かう道中花を買い、前を行く背を追う。
「両親のことは覚えているのか?」
「まあ、はい。断片的にですが。両親が揃ったときにはよく鍋をしました。」
「いい思い出じゃないか。」
共同墓地には同じ形の墓石が並び、それぞれ別の名前が彫られている。花が生けられているところもあれば、薄く土埃を纏うものもあった。
いざ、目的の墓石の前に立つと不思議な気持ちになる。夫婦だからか、名字のあとに二人の名前が重なるように彫られている。そういえば彼らは生前とても仲のいい夫婦だったことを思い出す。
いままで顔を出さなかったこと、怒っているだろうか。心配していただろうか。両親の訃報を聞いても涙さえ流さなかった子供を許すだろうか。
別人として生きていた記憶が上書きされ家族の絆というものが薄れた気になっていたが、それはただの思い込みである。だって今こんなにも二人に話がしたい。
しゃがんで触れた墓石は無機質な温度をしていた。
ただ一言「忍者になるよ。」とだけ報告をして振り返る。あまり施設長を待たせてもいけない。場所は覚えたので次は一人でも来れる。
墓地を出るタイミングで目の前から目立つ髪の青年が歩いてくるのを見た。彼のまとう雰囲気にどうも肩が張る。そんな様子に気付かず、施設長が思わず、といった風に青年に声をかけた。
「なあ、君はもしかして、カカシくんか?」
「……。失礼、どちら様でしょうか。」
「おっと、そうだよな。君の父には世話になっていてな、君とも一度だけ会ったことがある。」
「はあ。そうでしたか。」
私から六歩先に立つ彼はまだ成人もしていないような年齢だろうに、不相応だと思ってしまうくらい暗い目をしているように思えた。彼がまとう冷ややかな雰囲気に長も何かを察したのか、一つ言葉を飲み込んだようだ。
「用が無いようなら、失礼します。」
通り過ぎる。私に見向きもせず、長の影を踏み奥へ。
ひとこと、挨拶をすることもできなかった。全ての言葉を拒否されているかのように感じて、どうにも寂しい気持ちになる。
彼の背中を見送った施設長も、瞳に影を落とした。
