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地面に木の枝で描かれた円は直径にして両手を広げたくらい。その内側に立ち手裏剣を握る。
課題は樹に括られた複数の的に、的確に忍具を当てること。狙うべき的は四つあるが、そのどれもが違う向き、高さ、奥行きに設定されている。忍具の軌道を考え投擲のタイミングや角度、体制、風向き、すべてを考慮に入れなければならない。瞼の裏でシュミレーションを行い、呼吸を整える。
まずは狙いやすい比較的正面向きの二つを抑える。残るは真横を向いた的と、真下を向いた的。ただ投げるだけでは刺さらないため、二つの手裏剣をそれぞれ違う角度で投げてぶつけてみせた。スコン、と短く音が立つ。
「驚いたな、まさかこれもクリアするとは。正直想像以上だ。」
離れて後ろで見学していた施設長が小さく呟いた。
的に刺さった手裏剣を観察すると、最初の二つはほぼ中央に刺さっている。しかし横向きと下向きの二つは枠内とはいえ中央からは外れているし、少し引っ張れば簡単に外すことができるほど刺さりが甘い。
「まだ完璧に狙えてはいないんです。それに深く刺さってないですし。」
「いや、そもそも全ての的に当てられるとは思っていなかった。お前はまだアカデミーに入学して一年も経たない。平均的な技術なら横並びにした的に当てられるかどうか、だろうな。」
筋力と持久力は後々身に付くものだ。いまは自分の体の使い方や、指先の感覚、それにチャクラコントロールなんかに重きを置くほうがいい。施設長の指導はどれをとっても的確なものだった。
アカデミーで会得する初等忍術はあらかた修得済み、動きながらの身体強化のチャクラコントロールも最近になって安定してきた。チャクラの総量に不安はあるものの、このまま鍛えればきっと習得難易度の高い形質変化を伴う忍術も会得できるだろう。
「うゆう、お前はきっと忍者としての素質がある。十年前……、戦時ならもうアカデミーだってすぐにでも卒業するくらいの実力だ。だがな、」
そこで施設長は目を伏せる。まつ毛の影が瞳に落ちて真っ黒になった。一体何を思い出しているのか。
「これから平和な時代になる。わざわざ死ににいくような任務も減るだろう。……お前は人を殺さずに生きる道も、当然あるんだ。」
「施設長は、忍にならなければならなかったんですか?」
「俺の親たちも戦時に生きる忍者だったからな。きっと期待されていただろう。そしてそれに応えた。忍者になるという選択肢しかなかったと感じていたんだ。」
私達の世代は、戦火の空気がやっと落ち着いてきた変革の時代に生まれた命だ。私が忍者になれば、求められるのは戦争の終結ではなく国の安定のための働きだろう。
最初に忍者修行を始めようと思ったきっかけは、自分の身を守るためだ。九尾という圧倒的な力を目の前にしたことで輪郭を持った本能。それと、うっかり思い出してしまった前世の記憶を守るためでもある。
だが、次第に、この火の国で関わりを持った人たちが大切に思えるようになったのだ。例えばアカデミーのクラスメイトや教師たち。兄イルカもそうだし、施設長も、うちは一族も。火影様のいう"火の意思"というものが今なら分かる気がする。
「私はやっと火の国木ノ葉隠れに住むひとりとして、生きる覚悟を決めたんです。」
「……。そうか。なら、俺から言う事はもうないな。」
大きな手が髪の毛をかき混ぜる。
この覚悟を口にするのは初めてで、心臓がバクバクと鳴る。顔を上げなくてもいいのは都合が良かった。
課題は樹に括られた複数の的に、的確に忍具を当てること。狙うべき的は四つあるが、そのどれもが違う向き、高さ、奥行きに設定されている。忍具の軌道を考え投擲のタイミングや角度、体制、風向き、すべてを考慮に入れなければならない。瞼の裏でシュミレーションを行い、呼吸を整える。
まずは狙いやすい比較的正面向きの二つを抑える。残るは真横を向いた的と、真下を向いた的。ただ投げるだけでは刺さらないため、二つの手裏剣をそれぞれ違う角度で投げてぶつけてみせた。スコン、と短く音が立つ。
「驚いたな、まさかこれもクリアするとは。正直想像以上だ。」
離れて後ろで見学していた施設長が小さく呟いた。
的に刺さった手裏剣を観察すると、最初の二つはほぼ中央に刺さっている。しかし横向きと下向きの二つは枠内とはいえ中央からは外れているし、少し引っ張れば簡単に外すことができるほど刺さりが甘い。
「まだ完璧に狙えてはいないんです。それに深く刺さってないですし。」
「いや、そもそも全ての的に当てられるとは思っていなかった。お前はまだアカデミーに入学して一年も経たない。平均的な技術なら横並びにした的に当てられるかどうか、だろうな。」
筋力と持久力は後々身に付くものだ。いまは自分の体の使い方や、指先の感覚、それにチャクラコントロールなんかに重きを置くほうがいい。施設長の指導はどれをとっても的確なものだった。
アカデミーで会得する初等忍術はあらかた修得済み、動きながらの身体強化のチャクラコントロールも最近になって安定してきた。チャクラの総量に不安はあるものの、このまま鍛えればきっと習得難易度の高い形質変化を伴う忍術も会得できるだろう。
「うゆう、お前はきっと忍者としての素質がある。十年前……、戦時ならもうアカデミーだってすぐにでも卒業するくらいの実力だ。だがな、」
そこで施設長は目を伏せる。まつ毛の影が瞳に落ちて真っ黒になった。一体何を思い出しているのか。
「これから平和な時代になる。わざわざ死ににいくような任務も減るだろう。……お前は人を殺さずに生きる道も、当然あるんだ。」
「施設長は、忍にならなければならなかったんですか?」
「俺の親たちも戦時に生きる忍者だったからな。きっと期待されていただろう。そしてそれに応えた。忍者になるという選択肢しかなかったと感じていたんだ。」
私達の世代は、戦火の空気がやっと落ち着いてきた変革の時代に生まれた命だ。私が忍者になれば、求められるのは戦争の終結ではなく国の安定のための働きだろう。
最初に忍者修行を始めようと思ったきっかけは、自分の身を守るためだ。九尾という圧倒的な力を目の前にしたことで輪郭を持った本能。それと、うっかり思い出してしまった前世の記憶を守るためでもある。
だが、次第に、この火の国で関わりを持った人たちが大切に思えるようになったのだ。例えばアカデミーのクラスメイトや教師たち。兄イルカもそうだし、施設長も、うちは一族も。火影様のいう"火の意思"というものが今なら分かる気がする。
「私はやっと火の国木ノ葉隠れに住むひとりとして、生きる覚悟を決めたんです。」
「……。そうか。なら、俺から言う事はもうないな。」
大きな手が髪の毛をかき混ぜる。
この覚悟を口にするのは初めてで、心臓がバクバクと鳴る。顔を上げなくてもいいのは都合が良かった。
