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兄と呼んで慕うイルカはアカデミーを卒業してしばらく経つ。忍者のことについて学校で習うこと以上は詳しく知らないのだが、実際に一緒に過ごした時間から伺える彼の性格は忍者としては少々甘すぎるように感じる。
今は数年前まであった他国間で戦争のような大きな争いはなく情勢は比較的落ち着いている。下忍のこなす任務の範囲内であればそこまで不安になる必要もないだろうが、一歩里外に出れば暗躍する外部の敵と出会い頭…、なんて可能性は捨てきれない。
私の思い浮かべる忍像というのは、感情に振り回されることがなく、里や国へ絶対の忠誠心があり、自他共に死という選択肢を常に視野に入れている。ザックリとこんな感じ。
施設の合併に伴い収容対象の見直しがされ、同室だったイルカは今は里が運営する集合住宅の一室に住んでいる。
大体週に一度彼の部屋を訪れては、学校で課される宿題をこなしたり、掃除をしたりして過ごすようにしている。施設の門限と、深夜に散歩して迷惑をかけた前科があるため夕方には帰らなくてはならない。下忍であっても結構忙しいのかこうして通ってみても会えるのは月にイチ、二度ほどだった。
取り敢えず難しくもない宿題をすぐ終わらせ、街の本屋で見つけた「チャクラと印の相互関係」というちょっと小難しく専門性のある図書を捲る。
忍者学校に入学したばかりの子供には、扱えるチャクラ量と形質変化を生み出すほどのコントロールには制限がある。これは技術の問題というよりも成長に伴う体細胞の状態が大きく関係していることは既に調べている。天性のセンスがあるとか、物心つく前からチャクラに関する修行をつけていたとか、特殊な例を除けばの話ではある。閑話休題。
パタパタと通路を駆ける足音が聞こえた。どうやら今日は会える日らしい。本を閉じて気配を消す。
ガチャ、と鍵が空いた。
「お、うゆう、来てたのか。」
「お邪魔してます。」
「玄関に靴が置いてあるから分かるけど、なんで毎度気配消して待ってるんだ?」
「忍者は気配を殺して潜むべし、でしょ?」
イルカは素直で真面目な性格なので、いつ訪問しても部屋が目に見えて散らかっていることはない。しかし一点気になっていることがある。それは食事についてだ。
この部屋の合鍵を渡されてしばらく通ってから気がついたのだが、どうやらほぼ毎食弁当や惣菜で済ませているらしく、炊飯器はあるのに生米がなかったりゴミ箱には空の容器が詰め込まれていたりする。
忍者なら自分の体の管理くらい出来るようになるべき、と思うのだが、彼も幼いうちに両親を亡くしてしまった子供である。前世であれば中学生未満の年齢で独り暮らししているのだから注意するよりはさり気なく指導したいと思っている。
「今日は一緒に夜ご飯食べようよ。」
「それはいいな!あ、でもお前は門限があるだろ。」
「施設長にお願いしてみる。イルカお兄ちゃんも一緒についてきてよ。」
「仕方ないな。」
呆れた風な物言いでも、どこか嬉しさを滲ませる目尻が少し下がる。兄のこの表情は私の心にしっかりと根を張っている。自覚した頃にはもうすっかり大切な存在になってしまっていた。意識の外側で私の表情もきっと解けてるのだ。
今は数年前まであった他国間で戦争のような大きな争いはなく情勢は比較的落ち着いている。下忍のこなす任務の範囲内であればそこまで不安になる必要もないだろうが、一歩里外に出れば暗躍する外部の敵と出会い頭…、なんて可能性は捨てきれない。
私の思い浮かべる忍像というのは、感情に振り回されることがなく、里や国へ絶対の忠誠心があり、自他共に死という選択肢を常に視野に入れている。ザックリとこんな感じ。
施設の合併に伴い収容対象の見直しがされ、同室だったイルカは今は里が運営する集合住宅の一室に住んでいる。
大体週に一度彼の部屋を訪れては、学校で課される宿題をこなしたり、掃除をしたりして過ごすようにしている。施設の門限と、深夜に散歩して迷惑をかけた前科があるため夕方には帰らなくてはならない。下忍であっても結構忙しいのかこうして通ってみても会えるのは月にイチ、二度ほどだった。
取り敢えず難しくもない宿題をすぐ終わらせ、街の本屋で見つけた「チャクラと印の相互関係」というちょっと小難しく専門性のある図書を捲る。
忍者学校に入学したばかりの子供には、扱えるチャクラ量と形質変化を生み出すほどのコントロールには制限がある。これは技術の問題というよりも成長に伴う体細胞の状態が大きく関係していることは既に調べている。天性のセンスがあるとか、物心つく前からチャクラに関する修行をつけていたとか、特殊な例を除けばの話ではある。閑話休題。
パタパタと通路を駆ける足音が聞こえた。どうやら今日は会える日らしい。本を閉じて気配を消す。
ガチャ、と鍵が空いた。
「お、うゆう、来てたのか。」
「お邪魔してます。」
「玄関に靴が置いてあるから分かるけど、なんで毎度気配消して待ってるんだ?」
「忍者は気配を殺して潜むべし、でしょ?」
イルカは素直で真面目な性格なので、いつ訪問しても部屋が目に見えて散らかっていることはない。しかし一点気になっていることがある。それは食事についてだ。
この部屋の合鍵を渡されてしばらく通ってから気がついたのだが、どうやらほぼ毎食弁当や惣菜で済ませているらしく、炊飯器はあるのに生米がなかったりゴミ箱には空の容器が詰め込まれていたりする。
忍者なら自分の体の管理くらい出来るようになるべき、と思うのだが、彼も幼いうちに両親を亡くしてしまった子供である。前世であれば中学生未満の年齢で独り暮らししているのだから注意するよりはさり気なく指導したいと思っている。
「今日は一緒に夜ご飯食べようよ。」
「それはいいな!あ、でもお前は門限があるだろ。」
「施設長にお願いしてみる。イルカお兄ちゃんも一緒についてきてよ。」
「仕方ないな。」
呆れた風な物言いでも、どこか嬉しさを滲ませる目尻が少し下がる。兄のこの表情は私の心にしっかりと根を張っている。自覚した頃にはもうすっかり大切な存在になってしまっていた。意識の外側で私の表情もきっと解けてるのだ。
