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アカデミーに入学して半年。あっという間に過ぎた。ここでの授業形式は前世の記憶にあるような学校とさして変わらない。けれどまだ終戦してさほど時間が空いていないからか、あるいは九尾の天災を目の当たりにしたからか、生徒たちは幾分緊張感を持った姿勢で授業に望んでいると思う。かく言う私も、ここから忍者としての人生になるのかと思うと背筋も伸びる。
卒業するまでに、命の守り方も戦い方も意義も大義名分も、しっかり頭に叩き込まなくては。この里の子供たちが憧れるカッコイイ忍者像は私の中には無い。クナイを投げる、手裏剣を投げる。これはただ生きるだけなら必要のない動作だ。相手と明確に敵対し、殺意を向ける行為だ。命の交換、正義の押しつけ、自身の生存のための行為。生きる中で迷いさえ生じないほどに、強くならなくては。
アカデミーの帰り道、誰かと一緒に帰ることはほとんどない。教室では誰とでも会話して誰との仲も悪くない位置にいるので、クラスメート全員と上手くやれている。ただ授業が終わった後に一緒に過ごすほど親友とも言える人間はいない。それはわざわざ私から縁を結んだイルカや、たまたま友になったイタチとは違い、クラスメートと必要以上につるむ価値を見出だせないこと。あるいは変に重ねた精神年齢のせいかもしれない。
道の先に見知った顔を見つけて、手を振った。
「イタチ!久しぶり。」
「ああ。半年くらい経ったか?」
「あのときは私がアカデミー入学前だったから、それくらいだね。」
お礼をしにお菓子を持っていった日以来、施設の合併と移転や、アカデミー入学準備なんかで会う機会がなかった。それと、移転した先はうちはの居住区とは遠くなってしまったのだ。
彼の額で光を反射している鉢金を見る。学校に通うようになってすぐ、たった一年で卒業していった天才の話は耳に入っていた。彼だろうとは分かっていたが、こうして見ると実感が形を持つ。
「これから任務?」
「いや。今日は早く終わって解散したところだ。」
「そうなの。」
その割にはきれいな格好をしている。シャツにもズボンにも、土どころか埃さえ付着した様子はない。
下忍の請け負う任務の範囲であれば、里の外に出ることはあまり無い。戦時中なら分からないが、施設長の言っていた、平和になったという言葉がそうなのだろう。
「今日少し時間ある?」
「オレか?」
問題ない。と首肯を貰い、安堵する。しかし任務終わりであるしあまり時間を取るのも悪いだろう。うちはの居住区の方へ一緒に歩いていくことにした。
「今年からアカデミーに通っているんだったな。」
「うん。クラスメートもいい子達が多くて、なんだかんだ充実してるよ。」
「それは良かったな。」
前にもらったお菓子は美味しかった。最近弟がよく喋るようになった。
実践授業はためになるが座学や忍術は物足りなさがある。下忍になってどんな任務をするのか。
お互いがぽつぽつ話題を上げあって、まるで平和そのもののような道を歩いていく。特にイタチに対して用事はなく、強いて言えば移転前の施設にいた頃使っていた慣れた森で鍛錬に励むため。もうすぐ道が別れてしまう。
「一つ聞いてもいい?」
「なんだ、改まるな。」
「イタチはどうして忍者になるの?」
身近にいる忍者といえば、まず真っ先にイルカが浮かぶ。彼は立派な両親に憧れたから、忍者を目指したのだと言っていた。クラスメートたちも親が忍者だから、という理由が多い。
一方で私が忍者を志す理由は、自身の身を守るだけの力をつけること。それと自立して生活できるだけの金銭を得ること。もちろん忍者をしていた両親の記憶もあるが、里のために命を賭して戦う、というのはどうにもしっくりと来ない。
隣にいるのは、たった一年でアカデミーを卒業した先輩忍者だ。そして名家の長男でもある。
「なんだろうな。理由を上げるなら、弟の為かな。」
「そっか。」
「そういえば授業に将来の夢を発表するっていうのがあったな。うゆうはなんて言ったんだ?」
「それが、すぐに浮かばなくて。ちょっと悩んでいたところなの。」
里のために、国のために、と口で言うのは簡単だ。それらの先に目指すべきものは何だろうか。この先にある動乱の時代に、確固たる目的を持つべきだ。
「何を成そうとして忍になるかは、自分で考えたほうがいい。他人の意見を参考にして得られるものは、理由としては軽いだろう。」
「分かってる。もっと、自分がブレないような芯を見つけないと。」
イタチがこちらに向き直った。
「気付いてるなら大丈夫さ。」
「うーん。」
眉間によったシワを指摘するように、イタチの指先が触れる。
「修行しに行くんだろう?」
「ああ、付き合ってくれてありがとう。フガクさんによろしく伝えてほしい。」
「分かった。気をつけて。」
この先はうちはの集落。まだ幼い背中にあるうちはの家紋に問いかけられているように感じた。
卒業するまでに、命の守り方も戦い方も意義も大義名分も、しっかり頭に叩き込まなくては。この里の子供たちが憧れるカッコイイ忍者像は私の中には無い。クナイを投げる、手裏剣を投げる。これはただ生きるだけなら必要のない動作だ。相手と明確に敵対し、殺意を向ける行為だ。命の交換、正義の押しつけ、自身の生存のための行為。生きる中で迷いさえ生じないほどに、強くならなくては。
アカデミーの帰り道、誰かと一緒に帰ることはほとんどない。教室では誰とでも会話して誰との仲も悪くない位置にいるので、クラスメート全員と上手くやれている。ただ授業が終わった後に一緒に過ごすほど親友とも言える人間はいない。それはわざわざ私から縁を結んだイルカや、たまたま友になったイタチとは違い、クラスメートと必要以上につるむ価値を見出だせないこと。あるいは変に重ねた精神年齢のせいかもしれない。
道の先に見知った顔を見つけて、手を振った。
「イタチ!久しぶり。」
「ああ。半年くらい経ったか?」
「あのときは私がアカデミー入学前だったから、それくらいだね。」
お礼をしにお菓子を持っていった日以来、施設の合併と移転や、アカデミー入学準備なんかで会う機会がなかった。それと、移転した先はうちはの居住区とは遠くなってしまったのだ。
彼の額で光を反射している鉢金を見る。学校に通うようになってすぐ、たった一年で卒業していった天才の話は耳に入っていた。彼だろうとは分かっていたが、こうして見ると実感が形を持つ。
「これから任務?」
「いや。今日は早く終わって解散したところだ。」
「そうなの。」
その割にはきれいな格好をしている。シャツにもズボンにも、土どころか埃さえ付着した様子はない。
下忍の請け負う任務の範囲であれば、里の外に出ることはあまり無い。戦時中なら分からないが、施設長の言っていた、平和になったという言葉がそうなのだろう。
「今日少し時間ある?」
「オレか?」
問題ない。と首肯を貰い、安堵する。しかし任務終わりであるしあまり時間を取るのも悪いだろう。うちはの居住区の方へ一緒に歩いていくことにした。
「今年からアカデミーに通っているんだったな。」
「うん。クラスメートもいい子達が多くて、なんだかんだ充実してるよ。」
「それは良かったな。」
前にもらったお菓子は美味しかった。最近弟がよく喋るようになった。
実践授業はためになるが座学や忍術は物足りなさがある。下忍になってどんな任務をするのか。
お互いがぽつぽつ話題を上げあって、まるで平和そのもののような道を歩いていく。特にイタチに対して用事はなく、強いて言えば移転前の施設にいた頃使っていた慣れた森で鍛錬に励むため。もうすぐ道が別れてしまう。
「一つ聞いてもいい?」
「なんだ、改まるな。」
「イタチはどうして忍者になるの?」
身近にいる忍者といえば、まず真っ先にイルカが浮かぶ。彼は立派な両親に憧れたから、忍者を目指したのだと言っていた。クラスメートたちも親が忍者だから、という理由が多い。
一方で私が忍者を志す理由は、自身の身を守るだけの力をつけること。それと自立して生活できるだけの金銭を得ること。もちろん忍者をしていた両親の記憶もあるが、里のために命を賭して戦う、というのはどうにもしっくりと来ない。
隣にいるのは、たった一年でアカデミーを卒業した先輩忍者だ。そして名家の長男でもある。
「なんだろうな。理由を上げるなら、弟の為かな。」
「そっか。」
「そういえば授業に将来の夢を発表するっていうのがあったな。うゆうはなんて言ったんだ?」
「それが、すぐに浮かばなくて。ちょっと悩んでいたところなの。」
里のために、国のために、と口で言うのは簡単だ。それらの先に目指すべきものは何だろうか。この先にある動乱の時代に、確固たる目的を持つべきだ。
「何を成そうとして忍になるかは、自分で考えたほうがいい。他人の意見を参考にして得られるものは、理由としては軽いだろう。」
「分かってる。もっと、自分がブレないような芯を見つけないと。」
イタチがこちらに向き直った。
「気付いてるなら大丈夫さ。」
「うーん。」
眉間によったシワを指摘するように、イタチの指先が触れる。
「修行しに行くんだろう?」
「ああ、付き合ってくれてありがとう。フガクさんによろしく伝えてほしい。」
「分かった。気をつけて。」
この先はうちはの集落。まだ幼い背中にあるうちはの家紋に問いかけられているように感じた。
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