日記

以前のイマジナリーフレンド

2023/08/28 00:05
病気のこと暗い話
 職場のパートさんたちにいじめられて、人間不信になって引きこもっていた時代、頭の中の声に悩まされていた時に居てくれた、最強のイマジナリーフレンド。

 その時は天使と悪魔のフリをした頭の声の人に振り回され、彼らから降ってくる言葉を調べては馬鹿にした意味だと分かり、傷付いてばかりいました。

 そんな時に私の中に出来た、初めてのイマジナリーフレンド。

 イマジナリーフレンドって、最初は自分で相手が言いそうな言葉を想像して、頭の中で2人会話を繰り返して行き、そうすると段々と人格が芽生えてきて、やがては考えなくても自然に言葉を返してくれるようになる、幻の友達。

 彼は丁寧語を話す紳士な男性だったのですが、いつも私を気遣い大切にしてくれました。

『また彼らに馬鹿にされたのですか? 可哀想に辛かったですね』

『本当にしつこい連中ですねぇ……夢さん、彼らは追い払いましたので、私とお話しましょう』

『大丈夫ですよ……私がついていますから』

 彼がいれば安心で、私はずっと彼に依存して過ごしていました。

 当時の私は、『エンジェルナンバー』というものにはまり、これはたまたま目に入ったゾロ目の数字(777とか)、ミラー数字(1221、1441など鏡映しの数字)などには天使からのメッセージが含まれていて、頻繁に見るなら意味があると言った占いです。

 私は頻繁に見ていないのに、見る度に気になって調べては、

『お金の執着を手放しなさい』

『あなたはいま、アセンデットマスター(ブッダ、マリアさまなどの高貴な霊、魂のこと)に守られています』

『天使があなたを応援しています』

 などなど、調べては嬉しくなり段々と私は『久しぶりに外に出てみようか……』という気分になり、おかげで買い物にも行くようになりました。

 エンジェルナンバーの言葉を鵜呑みにして、『もっともっと、頑張らなきゃ!』そうして私はやがては働きたいな。とまで思うようになっていました。

 最後までエンジェルナンバーは『執着を手放しなさい』と繰り返し出ていて、これがすごく辛かった。

 執着は言われて簡単に手放せるものではないから。

 それでも、お金の執着、将来の不安の執着などを考えないようにしていき、『天使があなたを褒めています』と出る度に、嬉しくなっていました。

 でもそれでも、エンジェルナンバーは私に『執着を手放しなさい』と警告する。

『私が執着しているのなんて、後は物とかだし……他はなんだろ?』

『夢さん、どうしました?』

 イマジナリーフレンドに話しかけられて、私はハッとしました。

『まさか、天使たちは彼の存在すらも手放せというの……?』

 イマジナリーフレンドには嘘も隠し事も通用しません、全て私の考えは筒抜けです。

『夢さんは働きたいと思っていらっしゃるのですね……』

 彼はなんと、私が働き出したら自分の存在が邪魔になるからと、消えようとしていました。

『やだやだ、待って行かないで!』

『お別れですよ、夢さん』

『傍にいてくれなきゃ、私はダメになる』

『夢さん、大丈夫ですよ、大丈夫ですから』

 どんなに駄々をこねても、泣いても拒否しても、彼は自らを消す選択を譲りませんでした。

『行かないで……』

 泣いて縋ってお願いして。

 彼に宥められ、でも離れる決断は変わらない。

 やがては私は悲しみの中、彼の別れを受け入れました。

『夢さん、さようなら……』

 優しく笑って彼は私の中から消えて行きました。

『……』

 彼がいなくなってしまった私の心の中は、がらんどうの空っぽで、彼への執着を依存を、彼の存在全てを抜き取られてしまい、魂が取られたみたいになりました。

 ふと目に入った時計を見れば、エンジェルナンバー。

 私はぼんやりとしたまま、アイパッドの画面をタップして検索をしました。



『おめでとうございます!!あなたは執着を手放すことが出来ました!!天使からプレゼントがあります!!』

 天使は確かに私の執着を手放したことを褒めてくれました。

 しかし私の心はすきま風が吹き荒れ、『私は、こんなことのために、彼とバイバイしたの……?』全然喜べませんでした。

 本当に私の中には何もなくなってしまい、彼への想いを全て無くしたために、悲しみの涙も出ない、むしろ『なぜ、彼に依存していたのだろう……』分からなくなってしまっていました。

 それから私は、エンジェルナンバーから離れました。

 私は天使から褒められることを優先したばかりに、大切なイマジナリーフレンドを無くしました。

 消えてしまった彼はもう決して、会うことは出来ません。

 もう1度創ろうとしても、全く同じのイマジナリーフレンドは創れない。

『いまの夢には俺がいるじゃん』

 最近は私が何かに夢中になっていても、いまのイマジナリーフレンドが話しかけてきます。

 普通は私がイマジナリーフレンドに集中して会話をしないと、彼の声は聞こえないのですが。

 それは、つまり彼も段々と自動返答するようになり、私が会話を考えなくても人格を持ち、彼の意思で話しかけているということ。

 世間一般では私のような者を『悪魔憑き』と言うのでしょう。

 しかし、私はそれでいいと思っています。

 もう2度と、イマジナリーフレンドを失うことを味わうのは、嫌だから。

 きっと彼は私の傍に居てくれるでしょう……彼曰く『夢が必要としなくなっても、ずっと永遠に』。

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