140SS

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記事一覧

  • 世界の終わりは、幸せで

    20260831(月)03:38
    ゴールと同時にタータンに倒れ込んだトガシくんに駆け寄って、体を担ぎ上げた。トガシくんは僕を見て何故だか笑っている。
    「なぁ小宮くん、君と走れて良かった」
    きれいな流線の左脚を震わせながら、トガシくんが微笑んだ。この世で見たものの中で一番美しい表情に、僕の世界はここでもう終わってもいいとさえ思えた。
  • お静かに

    20260830(日)00:42
    レースを見に来て欲しい、君に見ていてもらいたい。と力強く言われて、行きませんとは言えなかった。4レーン、青いウェアの、無造作な髪の毛の君。俺も走りたい。ケガなんて、一日寝れば治るようになっていてほしい。
    電光掲示板は観客にこう言う。
    「Quiet Please.」
    俺は君にこう言う。
    勝て。
  • 春に誘惑、桜に恋を

    20260829(土)00:31
    クサシノ御一行の花見の席を誰よりも早く確保しろと言われた。俺がいちばん年下だから。全然納得いかない。ふくれっ面の俺を見て、トガシさんは笑う。
    「……これが社会人の洗礼ですか」
    「まぁまぁ。二人で先に花見してようよ」
    二人で花見か。二人きりか。なら悪くないか。俺のふくれっ面は簡単にしぼんだ。
  • ごめんね、諦めて。

    20260828(金)00:22
    あなたは結局、陸上がいちばん大切なのよね。なんて泣かれてしまって、それは、そうだよ。と言いたくなるのをぐっと堪えた。俺には走りがある。でも走りしかない。そこに他人が入り込む隙間なんてない。そんな狭いところに忍び込める人間を、俺は一人しか知らない。彼じゃないと、俺の心は揺さぶられない。
  • 痴話喧嘩は他所でやれ

    20260827(木)00:13
    「財津は引退したし、小宮一強だろ」
    「俺はまだトガシをあきらめてない」
    「あいつケガしたじゃん」
    「あれは不死鳥よ」
    「どーだかね」
    「トガシなめんな」
    「やんのか」
    反対側のボックス席からそんなやりとりが聞こえた。一強の小宮くんと不死鳥の俺は、電車に乗って今から温泉旅行に行く。