Crazy 4
目が回る。
吐き気がする。
全身痛くて耐えられない。
立ってるのもやっとなのに、頭が今にも割れそうだ。
ああ、違う。
頭はとっくに割られてる。
本当、心底嫌な奴だ。
見せた隙はほんの一瞬。
瞬きよりも短いってのに、あいつは目敏く突いてきた。
一気に間合いを詰めてからの、間髪入れない兜割り。
お陰で割れた頭からは、血だの脳だのが溢れてる。
畜生、あいつはどこ行った。
おかしな木の根の残骸だらけの周りをざっと見てみると、遠くの方にできたばかりの、崩れた小高い岩山がある。
そうだった、さっきあいつをブッ飛ばして、あそこにめり込ませてやったんだ。
地面のとこにはたっぷりと、赤い血溜まりができている。
こりゃ脚の一本は貰ったな。
脳天割ったお返しだ。
大声で笑ってやろうとしたが、喉が潰れて声が出ない。
ガラガラ、ガラガラ、うがいみたいに、変な音しかしやしねぇ。
吐いて捨てた血反吐にも、肉やら骨やら混じってる。
触ってみれば首は裂け、喉仏もお 釈 迦 と来た。
後一歩間違えば——
いいや、ナシだ、ナシ。
『もしも』の話なんて嫌いだね。
今立ってんのは俺。
ダウンしてんのはあいつの方だ。
いっつも偉そうにしやがって、気味がいいったらありゃしねえ。
重い体を引き摺って、岩山の方へ歩いてく。
エボニーとアイボリーを腰にさして、魔剣 を杖の代わりにして。
……クソ、腕の腱が斬られてる。
いつの間にこんなのやりやがった?
昔っからこういうとこが、めちゃくちゃ陰険な奴なんだ。
根暗で、自己中で、頭でっかちで、その癖思い切りだけは異常にいいから、いっつも事態が面倒になる。
で、そのケツを拭かされんのは、結局いっつも俺の役目。
そう、いつだって俺なんだ。
「あ゙ー……ゴホッ、あ゙ー、あー、あー……」
一旦止まって、地面に向かって息を吐く。
喉が少しマシになって、空気が音に変わるようになった。
多分腱や頭の方も、もう少しでくっつくだろう。
OK、これならやれそうだ。
そしてそれは、む こ う も 同じらしい。
顔を上げて、岩山を見る。
ぴくりともしないで、黙りこくった石っころの山。
胸いっぱいに息を吸って、喉の限り怒鳴ってやる。
「ヘイ!ゲホゲホッ……随分ゆっくり休んでるじゃねえか !あ゙あ、そうか!お前昔からブレイク好きだったもんなあ !?」
喉からいろんなもんが飛んで、足元にビチャビチャ飛び散った。
ブーツにも多少ついちゃいるが、どうせこの一月でグチャグチャだ。
今更気にしたって仕方無え。
岩山とじっと睨めっこして、耳をすませてひたすら待つ。
目に入った血や脂で、視界は真っ赤に曇ってる。
心臓のビートはうるせえし、手のグリップも死んだままだ。
だけどとにかく体の方は、熱くて熱くて堪らない。
(来い来い来い来い……)
ガラッと微かな音が聞こえた。
血溜まりに石が一つ落ちる。
「けっ。何だよ……しぶてぇ奴っ……かはっ」
柄を何とか握り込んで、魔剣 を前に構えてやった。
タイミングが少しずれて、岩山がガラガラ崩れだす。
顔がニヤけるのが止まらない。
石がどんどん崩れてって、下から間抜け顔が見えてくる。
顰めっ面した、クソ兄貴の。
「いい格好じゃねえか!イカしてるぜ ?バージル!」
「黙れ」
やっと出てきたバージルは、ぼろぼろで脚も歪んでる。
絶対痛くてヤバいだろうに、痩せ我慢して澄ましてる。
いいね、いいね、ノってきた。
こうでなくっちゃ楽しくない。
「おお、おっかない。怒っちゃイヤだぜ、オニイチャン」
「気色の悪い声を出すな。胸糞悪くて反吐が出る」
「反吐だって?それじゃあ俺とお揃いだ 」
「『双子』だと ?何を当たり前のことを……」
「違ぇよ、このタコ。ったく、人の話聞かねえ野郎だな」
剣先を上げて煽ってやれば、バージルも閻魔刀を構えてきた。
いい歳こいてチョロいよな。
でもな、こっちは放ったらかしにされた挙句、散々待たされまくったんだ。
魔界 での時間はたかが一月。
そんなんじゃ欲求不満は治らねえ。
四十年分利息も込みで、きっちり落とし前はつけて貰う。
そうだとも、こっちにゃそれだけの権利がある。
無いだなんて言わせるもんか。
「なあバージル、知ってるか?最近石頭 の綴りが変わったんだ。V-E-R-G-I-Lって綴るんだと」
「そうか。それなら今度辞書をくれてやる。子供用のイラスト付きを。おまけでビデオもつけてやろう」
「それなら息子の孤児院 に送ってやれよ。ちび達きっと喜ぶぜ」
「…………構えろ」
バージルが腰を低くして、閻魔刀の柄に手をかけた。
神経がビリビリ焼かれまくって、反射で仰け反りそうになる。
ああ、これだよこれ。
これじゃなきゃ。
狂っちまうような、この感覚。
「あー……バージル。やる前に一つ教えといてやる」
「なんだ」
「フ ラ フ ラ し て た お前は知らないだろうが……」
「早く言え」
「VHS はもう、売ってないんだ」
「…………」
バージルのこめかみに、ぶっとい青筋がビキッと浮く。
こりゃ完全にキレただろう。
「ははっ」
思わず笑っちまった瞬間、バージルの一閃が喉元に届く。
どうやら俺とバージルの喧嘩は、まだまだ終わりそうもない。
吐き気がする。
全身痛くて耐えられない。
立ってるのもやっとなのに、頭が今にも割れそうだ。
ああ、違う。
頭はとっくに割られてる。
本当、心底嫌な奴だ。
見せた隙はほんの一瞬。
瞬きよりも短いってのに、あいつは目敏く突いてきた。
一気に間合いを詰めてからの、間髪入れない兜割り。
お陰で割れた頭からは、血だの脳だのが溢れてる。
畜生、あいつはどこ行った。
おかしな木の根の残骸だらけの周りをざっと見てみると、遠くの方にできたばかりの、崩れた小高い岩山がある。
そうだった、さっきあいつをブッ飛ばして、あそこにめり込ませてやったんだ。
地面のとこにはたっぷりと、赤い血溜まりができている。
こりゃ脚の一本は貰ったな。
脳天割ったお返しだ。
大声で笑ってやろうとしたが、喉が潰れて声が出ない。
ガラガラ、ガラガラ、うがいみたいに、変な音しかしやしねぇ。
吐いて捨てた血反吐にも、肉やら骨やら混じってる。
触ってみれば首は裂け、喉仏も
後一歩間違えば——
いいや、ナシだ、ナシ。
『もしも』の話なんて嫌いだね。
今立ってんのは俺。
ダウンしてんのはあいつの方だ。
いっつも偉そうにしやがって、気味がいいったらありゃしねえ。
重い体を引き摺って、岩山の方へ歩いてく。
エボニーとアイボリーを腰にさして、
……クソ、腕の腱が斬られてる。
いつの間にこんなのやりやがった?
昔っからこういうとこが、めちゃくちゃ陰険な奴なんだ。
根暗で、自己中で、頭でっかちで、その癖思い切りだけは異常にいいから、いっつも事態が面倒になる。
で、そのケツを拭かされんのは、結局いっつも俺の役目。
そう、いつだって俺なんだ。
「あ゙ー……ゴホッ、あ゙ー、あー、あー……」
一旦止まって、地面に向かって息を吐く。
喉が少しマシになって、空気が音に変わるようになった。
多分腱や頭の方も、もう少しでくっつくだろう。
OK、これならやれそうだ。
そしてそれは、
顔を上げて、岩山を見る。
ぴくりともしないで、黙りこくった石っころの山。
胸いっぱいに息を吸って、喉の限り怒鳴ってやる。
「ヘイ!ゲホゲホッ……
喉からいろんなもんが飛んで、足元にビチャビチャ飛び散った。
ブーツにも多少ついちゃいるが、どうせこの一月でグチャグチャだ。
今更気にしたって仕方無え。
岩山とじっと睨めっこして、耳をすませてひたすら待つ。
目に入った血や脂で、視界は真っ赤に曇ってる。
心臓のビートはうるせえし、手のグリップも死んだままだ。
だけどとにかく体の方は、熱くて熱くて堪らない。
(来い来い来い来い……)
ガラッと微かな音が聞こえた。
血溜まりに石が一つ落ちる。
「けっ。何だよ……しぶてぇ奴っ……かはっ」
柄を何とか握り込んで、
タイミングが少しずれて、岩山がガラガラ崩れだす。
顔がニヤけるのが止まらない。
石がどんどん崩れてって、下から間抜け顔が見えてくる。
顰めっ面した、クソ兄貴の。
「いい格好じゃねえか!
「黙れ」
やっと出てきたバージルは、ぼろぼろで脚も歪んでる。
絶対痛くてヤバいだろうに、痩せ我慢して澄ましてる。
いいね、いいね、ノってきた。
こうでなくっちゃ楽しくない。
「おお、おっかない。怒っちゃイヤだぜ、オニイチャン」
「気色の悪い声を出すな。胸糞悪くて反吐が出る」
「反吐だって?
「
「違ぇよ、このタコ。ったく、人の話聞かねえ野郎だな」
剣先を上げて煽ってやれば、バージルも閻魔刀を構えてきた。
いい歳こいてチョロいよな。
でもな、こっちは放ったらかしにされた挙句、散々待たされまくったんだ。
そんなんじゃ欲求不満は治らねえ。
四十年分利息も込みで、きっちり落とし前はつけて貰う。
そうだとも、こっちにゃそれだけの権利がある。
無いだなんて言わせるもんか。
「なあバージル、知ってるか?最近
「そうか。それなら今度辞書をくれてやる。子供用のイラスト付きを。おまけでビデオもつけてやろう」
「それなら息子の
「…………構えろ」
バージルが腰を低くして、閻魔刀の柄に手をかけた。
神経がビリビリ焼かれまくって、反射で仰け反りそうになる。
ああ、これだよこれ。
これじゃなきゃ。
狂っちまうような、この感覚。
「あー……バージル。やる前に一つ教えといてやる」
「なんだ」
「
「早く言え」
「
「…………」
バージルのこめかみに、ぶっとい青筋がビキッと浮く。
こりゃ完全にキレただろう。
「ははっ」
思わず笑っちまった瞬間、バージルの一閃が喉元に届く。
どうやら俺とバージルの喧嘩は、まだまだ終わりそうもない。
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