おはよう

ぺち。
すうっと、瞼越しに光が広がった。

ぺちぺち。

頬に何か、平たいものが触れては離れる。

ぺちぺちぺち。

速度を増す音に、ダンテは漸く目を開けた。昨日カーテンをいい加減に閉めたせいだろう。
目の前の天井にはいつもより明るく、はっきりと陽の光に照らされていた。
ダンテがむくりと起き上がると、ずる、と何かがずり落ちた。

ぺちぺちぺちぺち。

「わかったわかった。もう起きるって」
ダンテはうんと伸びをすると、頭を掻きながら膝の上に目を移す。
するとそこに『いた』のは、凶悪な目つきをした巨大なペンギンのぬいぐるみだった。
いや、ぬいぐるみだと思われたそれは、ダンテと目が合うや否や、両手……もとい両羽をぴっと高く掲げる。
どうもこの謎の物体は、生きているらしい。
ダンテはその姿に苦笑すると、ペンギンの脇腹の辺りに両手を差し込み、ぺちぺちと軽く叩いてやった。
ペンギンはそれが気に入ったのか、胸を膨らませ、ふんふんと鼻を鳴らしてみせる。
その得意気な様子に、ダンテは思わず声を漏らして笑った。
そしてペンギンの銀の羽毛が逆立つ頭を撫で、寝ぼけ眼のままこう囁いた。



「——おはよう、バージル」
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