Scar, Curse, Perdition
日付:08??/2004
実験#:131
探索#:-
種類:対話記録
実験時間:14分51秒
概要:
この記録は、基軸宇宙の財団におけるSCP-****と、宇宙-234の財団の代理人であるダンテ・■■■■(宇宙-234におけるSCP-****の同位体、以下代理人)の、人型収容サイト-06-3における曝露実験を書き起こしたものです。
曝露は全五回を予定されており、これはその第一回目に位置付けられたものでした。
【記録開始】
セルの中央に、木製の椅子が二つ向かい合わせで置かれている。
SCP-****と代理人は、それぞれに着席し、会話を開始する。
SCP-****:
へえ、本当に俺なんだな。
代理人:
ああ、こっちの方が歳はいってるがな。
お前、まだウロボロスとやり合ってないだろ?
SCP-****
ウロボロス?
この前アンブレラ社と提携した?
代理人:
何だって?
こっちじゃそんなことになってるのか?
また痺れる展開なことで……
SCP-****:
あー……
取り合えずその話は聞かなかったことにする。
厄介な話は聞きたくない。
代理人:
賢明だ。
……しかし、どの宇宙でも反応が薄いな。
映画やドラマじゃ、パラレル・ワールドの自分に会ったらもっと驚くもんなのに。
SCP-****:
現実は小説より奇なり。
この程度で一々驚いてちゃ、俺らの稼業は務まらない。
だろ?
代理人:
ははっ。
他の宇宙の俺達も、毎回同じ台詞を言うよ。
SCP-****:
げ、マジかよ。
もっと捻りゃよかったな。
代理人:
それも皆言ってたぜ。
SCP-****:
おいおい、勘弁してくれ。
代理人:
ははは、残念だったな。
SCP-****:
ったく……
と言うか、あんた、宇宙……ええと、234だったか?
そこの財団でエージェントの真似事やってんだったな。
代理人:
ああ、そうだ。
SCP-****:
それじゃあこうやって色んな宇宙に行ったりするのか?
代理人:
まあな。
SCP-****:
へえ、これまでどれくらい行った?
代理人:
ん-、ざっと三百……おっと、これは禁則事項だ。
SCP-****:
はっ、どこの財団も渋いところは変わらないな。
代理人:
そう言うなよ。
元々お互い知ってることや、今回の件でこっちとそっちの財団で共有した内容なら話ができる。
SCP-****:
ふうん。
例えば?
代理人:
まあ、当たり前だが、同じ宇宙は一つもないってことなんてのはお互いじってることだな。
同じ部分や似通ったところはあっても、どの宇宙も少しずつ違ってる。
SCP-****:
本当、当たり前のことだな。
他に珍しいとか、面白いとかって話はないのか?
代理人:
んー、珍しい……
ああ、そうか。
そうだったな。
SCP-****:
お、いいのがあったか?
代理人:
ああ、とびっきりのが。
SCP-****:
聞かせろよ、エージェント・ダンテ。
代理人:
もちろん。
とは言っても、ここ宇宙のことだよ。
SCP-****:
ここの?
代理人:
ここでは——
[42秒の沈黙]
代理人:
ここでは、お前とバージルが一緒に生きてる。
SCP-****:
え?
代理人:
……たとえば、宇宙-[編集済み]。
その宇宙じゃ、俺は子供の頃にムンドゥスに殺されて、その十年後、反魔帝勢力の盟主になったバージルも、トリッシュの同位体に殺された。
SCP-****:
……
代理人:
それから宇宙-[編集済み]。
レッドグレイブの家が襲われた時、バージルはムンドゥスに攫われた。
散々拷問を受けた後魔帝軍の将軍に|挿《す》げられて、悪魔と人間との戦争の中、俺だけを人間界へ帰して死んじまった。
宇宙-[編集済み]なんかじゃ、テメンニグルの天辺で、俺とバージルは相打ちになって死んだんだ。
アーカムの野郎が、レディを手にかけたから誰も俺達を止められなかった。
結果、人間界は魔界に呑まれて……それっきりだ。
SCP-****:
……あんたの、宇宙は。
代理人:
俺はきっちり殺したさ。
マレット島のあの場所で。
心臓を突いて、首を落として。
ガッツのあるやつだったからな。
二度と復活しないように、イフリートの火で燃やし尽くしたよ。
だからアミュレットに気付いて、手を伸ばした時にはもう……
それで、この様さ。
代理人は手袋を取って見せる。
手は焼け爛れ、所々骨組織が覗いている。
代理人:
トリッシュに頼んで、このままにしてある。
俺とバージルを繋ぐのは、もうこれしかないからな。
SCP-****:
……そうか。
代理人:
俺が見て来た宇宙じゃ、子供の頃以外で、俺とバージルがお前達みたいに、一緒に生きている世界なんて他にはなかった。
俺達も含めて、な。
SCP-****:
…………
代理人:
俺とバージルの未来に、こんな形があり得たのかって……それがわかった時、少しだけ……救われたような、気がした。
SCP-****:
…………
代理人:
こっちの勝手な思い込みだけどな。
SCP-****:
…………
代理人:
……悪い。
何だか湿っぽくなったな。
今の話は忘れてくれ。
SCP-****:
……わかった。
代理人:
恩に着るよ。
……おっと、もうこんな時間か。
そろそろお開きにしようか。
俺も次の仕事がある。
SCP-****:
……ああ。
代理人:
話せてよかった。
ありがとな。
SCP-****:
こっちこそ。
あんたとは、またゆっくり話したい。
今度はピザとビールを頼んでおくよ。
代理人:
そう言って貰えると嬉しいね。
SCP-****:
……なあ。
代理人:
うん?
SCP-****:
…………バージルと、会うか?
代理人:
……
SCP-****:
今月、こっちのサイトに収容されたんだ。
身体も、元に戻った。
まだ話したりはできないけど……あんたが望めば、財団だって——
代理人:
……遠慮しとくよ。
SCP-****:
…………
代理人:
会えばきっと、未練になる。
それに……
代理人が立ち上がる。
代理人:
————俺の兄さんは、もうどこにもいない。
SCP-****:
あ……
代理人:
お前が謝ることじゃないさ。
さて、俺はもう行くよ。
SCP-****:
…………すまない。
代理人:
おいおい、何で顔してるんだ。
お前にそんな顔させるために、この宇宙に来た訳でも、話をした訳でもない。
言ったろ?
この宇宙のお前とバージルを見て、俺は救われたんだよ。
SCP-****は無言のまま俯き、膝の上の手を握り締める。
代理人:
お前達はそれでいい。
気負う必要だってない。
代理人がSCP-****の目の前に跪き、その手をSCP-****の手へと重ねる。
SCP-****が、代理人の顔を見る。
代理人:
お前とバージル、ふたりで生きていけばいいんだよ。
きっと、他の宇宙でそれが叶わなかった俺達も、そう望んでる。
だからどうか——
代理人が、SCP-****の手を強く握る。
代理人:
————どうか、幸せに。
【記録終了】
実験#:131
探索#:-
種類:対話記録
実験時間:14分51秒
概要:
この記録は、基軸宇宙の財団におけるSCP-****と、宇宙-234の財団の代理人であるダンテ・■■■■(宇宙-234におけるSCP-****の同位体、以下代理人)の、人型収容サイト-06-3における曝露実験を書き起こしたものです。
曝露は全五回を予定されており、これはその第一回目に位置付けられたものでした。
【記録開始】
セルの中央に、木製の椅子が二つ向かい合わせで置かれている。
SCP-****と代理人は、それぞれに着席し、会話を開始する。
SCP-****:
へえ、本当に俺なんだな。
代理人:
ああ、こっちの方が歳はいってるがな。
お前、まだウロボロスとやり合ってないだろ?
SCP-****
ウロボロス?
この前アンブレラ社と提携した?
代理人:
何だって?
こっちじゃそんなことになってるのか?
また痺れる展開なことで……
SCP-****:
あー……
取り合えずその話は聞かなかったことにする。
厄介な話は聞きたくない。
代理人:
賢明だ。
……しかし、どの宇宙でも反応が薄いな。
映画やドラマじゃ、パラレル・ワールドの自分に会ったらもっと驚くもんなのに。
SCP-****:
現実は小説より奇なり。
この程度で一々驚いてちゃ、俺らの稼業は務まらない。
だろ?
代理人:
ははっ。
他の宇宙の俺達も、毎回同じ台詞を言うよ。
SCP-****:
げ、マジかよ。
もっと捻りゃよかったな。
代理人:
それも皆言ってたぜ。
SCP-****:
おいおい、勘弁してくれ。
代理人:
ははは、残念だったな。
SCP-****:
ったく……
と言うか、あんた、宇宙……ええと、234だったか?
そこの財団でエージェントの真似事やってんだったな。
代理人:
ああ、そうだ。
SCP-****:
それじゃあこうやって色んな宇宙に行ったりするのか?
代理人:
まあな。
SCP-****:
へえ、これまでどれくらい行った?
代理人:
ん-、ざっと三百……おっと、これは禁則事項だ。
SCP-****:
はっ、どこの財団も渋いところは変わらないな。
代理人:
そう言うなよ。
元々お互い知ってることや、今回の件でこっちとそっちの財団で共有した内容なら話ができる。
SCP-****:
ふうん。
例えば?
代理人:
まあ、当たり前だが、同じ宇宙は一つもないってことなんてのはお互いじってることだな。
同じ部分や似通ったところはあっても、どの宇宙も少しずつ違ってる。
SCP-****:
本当、当たり前のことだな。
他に珍しいとか、面白いとかって話はないのか?
代理人:
んー、珍しい……
ああ、そうか。
そうだったな。
SCP-****:
お、いいのがあったか?
代理人:
ああ、とびっきりのが。
SCP-****:
聞かせろよ、エージェント・ダンテ。
代理人:
もちろん。
とは言っても、ここ宇宙のことだよ。
SCP-****:
ここの?
代理人:
ここでは——
[42秒の沈黙]
代理人:
ここでは、お前とバージルが一緒に生きてる。
SCP-****:
え?
代理人:
……たとえば、宇宙-[編集済み]。
その宇宙じゃ、俺は子供の頃にムンドゥスに殺されて、その十年後、反魔帝勢力の盟主になったバージルも、トリッシュの同位体に殺された。
SCP-****:
……
代理人:
それから宇宙-[編集済み]。
レッドグレイブの家が襲われた時、バージルはムンドゥスに攫われた。
散々拷問を受けた後魔帝軍の将軍に|挿《す》げられて、悪魔と人間との戦争の中、俺だけを人間界へ帰して死んじまった。
宇宙-[編集済み]なんかじゃ、テメンニグルの天辺で、俺とバージルは相打ちになって死んだんだ。
アーカムの野郎が、レディを手にかけたから誰も俺達を止められなかった。
結果、人間界は魔界に呑まれて……それっきりだ。
SCP-****:
……あんたの、宇宙は。
代理人:
俺はきっちり殺したさ。
マレット島のあの場所で。
心臓を突いて、首を落として。
ガッツのあるやつだったからな。
二度と復活しないように、イフリートの火で燃やし尽くしたよ。
だからアミュレットに気付いて、手を伸ばした時にはもう……
それで、この様さ。
代理人は手袋を取って見せる。
手は焼け爛れ、所々骨組織が覗いている。
代理人:
トリッシュに頼んで、このままにしてある。
俺とバージルを繋ぐのは、もうこれしかないからな。
SCP-****:
……そうか。
代理人:
俺が見て来た宇宙じゃ、子供の頃以外で、俺とバージルがお前達みたいに、一緒に生きている世界なんて他にはなかった。
俺達も含めて、な。
SCP-****:
…………
代理人:
俺とバージルの未来に、こんな形があり得たのかって……それがわかった時、少しだけ……救われたような、気がした。
SCP-****:
…………
代理人:
こっちの勝手な思い込みだけどな。
SCP-****:
…………
代理人:
……悪い。
何だか湿っぽくなったな。
今の話は忘れてくれ。
SCP-****:
……わかった。
代理人:
恩に着るよ。
……おっと、もうこんな時間か。
そろそろお開きにしようか。
俺も次の仕事がある。
SCP-****:
……ああ。
代理人:
話せてよかった。
ありがとな。
SCP-****:
こっちこそ。
あんたとは、またゆっくり話したい。
今度はピザとビールを頼んでおくよ。
代理人:
そう言って貰えると嬉しいね。
SCP-****:
……なあ。
代理人:
うん?
SCP-****:
…………バージルと、会うか?
代理人:
……
SCP-****:
今月、こっちのサイトに収容されたんだ。
身体も、元に戻った。
まだ話したりはできないけど……あんたが望めば、財団だって——
代理人:
……遠慮しとくよ。
SCP-****:
…………
代理人:
会えばきっと、未練になる。
それに……
代理人が立ち上がる。
代理人:
————俺の兄さんは、もうどこにもいない。
SCP-****:
あ……
代理人:
お前が謝ることじゃないさ。
さて、俺はもう行くよ。
SCP-****:
…………すまない。
代理人:
おいおい、何で顔してるんだ。
お前にそんな顔させるために、この宇宙に来た訳でも、話をした訳でもない。
言ったろ?
この宇宙のお前とバージルを見て、俺は救われたんだよ。
SCP-****は無言のまま俯き、膝の上の手を握り締める。
代理人:
お前達はそれでいい。
気負う必要だってない。
代理人がSCP-****の目の前に跪き、その手をSCP-****の手へと重ねる。
SCP-****が、代理人の顔を見る。
代理人:
お前とバージル、ふたりで生きていけばいいんだよ。
きっと、他の宇宙でそれが叶わなかった俺達も、そう望んでる。
だからどうか——
代理人が、SCP-****の手を強く握る。
代理人:
————どうか、幸せに。
【記録終了】
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