リーンゴーン、という鐘の音が鳴り響く。私はゆっくり体をベッドから起こしてあくびをする。

『ふぁあぁ…みんなー、朝だよ！起きてー！』

私はベッドから飛び起きると隣の部屋に行く。

『アーサー！ギル！トニー！フラン！朝だよ！』

隣の部屋のドアを開けて一人ずつ起こしていく。まずは寝起きのいいアーサーとギルからだ。

「ふぁあぁ…あ…んだよ、ヒロイン…」
「もう朝か…goodmorning…ヒロイン…」

『はいおはよ、アーサー、ギル。』
「ん…朝からうるせぇな…」
『はいはい、服着替えて着替えて。』
「ばっばかお前がいるのに着替えられっかｙ…『もー！フーラーンー！トニー！おっきっなっさっい！』

アーサーが赤い顔をして私に何か言おうとしていたけどそれどころじゃない。むしろ問題児二人を起こすのが朝一番体力を使うことだ。

「ん～、もう…いやや…あと5分…ちゃうねん…ちゃうねんって…」
『トーニーイー！起きないとロヴィが頭突きしてくるｙ…「はらへったぞコノヤロー！！」Σぐっふぅ！！？」
『…あー…』

私がそう言い終わる前に3歳の弟、ロヴィがトニーの腹部に頭突きしてきた。私は暴れまわるロヴィを抱っこして挨拶する。

『おはよ、ロヴィ♬』
「ちぎ…ヒロイン、Buongiorno。」

発音のいいイタリア語で私に挨拶してから私のほっぺたにキスしてくれるロヴィ。私もロヴィのほっぺたに軽くキスして挨拶するとアーサーとギルがおい！と叫んで、トニーは跳ね起きて俺にも俺にも！と言ってくる。あんたたちは着替えなさい、とピシャリと言い放つとロヴィを床に下ろして残り一人フランを起こしにベッドに近づく。

「すー…すー…」
『フラン、朝だよー。起きてー。』

色素の薄い金髪にホントのフランス人形みたいに綺麗な寝顔。私が声をかけるもののフランはすやすや寝息を立てている。

ーグイッ

『うわっ！？』
「「「「ヒロイン！？」」」」

ベッドに引きずり込まれた私をアーサーたちが驚いて名前を呼ぶ。ベッドに引きずり込まれたと思えば引きずり込んだ張本人にものすごい力で抱き締められる。

『フラン……ホントは起きてるでしょ！離して！』

私がそういうとフランは悪びれる様子もなく瞼を開いて青い目の中に私が捕らえられる。

「Bonjour、ヒロイン。今日も可愛いな。」
『バカ言ってないで早く起きなさい、お父さんに怒られるよ。』
「オイコラフランシスさっさとヒロインを離しやがれ殺すぞ…！！」
「やぁだこわぁーい！アーサー、今日も立派な眉毛だこと！」
「んだとコルァ！『はいストーップ！』

朝から喧嘩を始めそうなフランシスとアーサーに脳天チョップを喰らわせた私はロヴィの靴紐を結び直して抱っこして食堂へ向かう。私の後を追うようにギルとトニーもついてくる。

食堂へ向かうとそこにはお父さんや弟妹たちがいた。

「おはようございます、ヒロインさん、ロヴィーノ君。」
『お父さん！』

私がお父さんと慕う男性は本当の父親ではない。でもこの孤児院に捨てられていた私をここまで大きく育ててくれた。優しくてカッコ良くてお料理も上手で大好き。私はお父さんの腰に腕を絡めて抱きつく。お父さんは頭を優しく撫でてくれる。

「ヒロインさん、今日も可愛らしいですね。」
『お父さん恥ずかしいよー…』
「ヒロインー、抱っこ！抱っこしろちくしょー！」
『うん。』
「あ！何抱きついてんだよ！」
「ちぎ！？」
「ほぉ？俺の子分いじめようなんざ百万年早いわ眉毛がその毛一本残らず抜き取ったろかい。」
「はぁ？やんのかペドトマト野郎お前のピーむしりとって……『ストーップ！今日朝食前にこれで二回目だよ！？』

私がそういうとアーサーとトニーはしぶしぶはぁい、と返事をする。お父さんは上品に着物の袖で口元を隠しながら笑う。

「おやおや。アーサーさんもトニーさんもいい加減にしないとヒロインさんに嫌われてしまいますよ？」
「うっ…」
「それは…嫌や…」

お父さんの鶴の一声でアーサーとトニーは大人しく自分の席へと戻った。私はロヴィを席に座らせてから辺りをキョロキョロ見渡す。

『あれ、フェリちゃんたちは？』
「おや…まだ起きてらっしゃらないようですね。ヒロインさん、申し訳ないのですが呼んできてもらえますか？」
『はぁい。』
「俺もいく！俺もいく！」

ロヴィがそういうのと同時にロヴィのお腹の虫がぐう～と音を立てた。私はロヴィの頭を撫でて優しく微笑む。

『だぁめ。もうお腹すいたよーってロヴィのお腹の虫さんが鳴いてるからお父さんのお手伝いしててね。これはロヴィ君にしか出来ない重大任務だ！頼りにしているぞ！』
「ヒロインが…俺をたよりに………まっ、まかせとけこのやろー！俺は兄ちゃんだからな！」
『ふふふ、お願いね。』

私はそう言い、フェリたちの部屋に向かった。

「………ヒロインさんは本当に子供たちの気持ちがよくわかる優しい子ですねぇ。爺感動します。」
「オイコラ爺、ヒロイン盗撮してんじゃねーよ。」

油断も隙もない爺である。