大人びた女の子
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*大人びた女の子
私が夏休みということもあって、普段は仕事でいろんなところを転々とするパパと共にホテルにいた。と言っても、パパはお仕事だから実際私はホテルにいるかたまにふらりと外に出てみたり。パパが過保護だからあまり遠くには行かないようにしているけれど。
(今日は、いるのかな……)
ここのホテルに来てから数日経って慣れてきたころ、ホテルの廊下を歩いている中学生ぐらいの女の子を見つけた。金色の髪をしていたから、外国に住んでいるのだろうか。身長を見ると私と同い年ぐらいに見えるけれど、雰囲気は大人びているからもしかしたら少しだけ年上なのかもしれない。
何度か見かけたことがあったのだけれど、ここ数日は見かけていない。もしかして、もうホテルにはいないのだろうか。そんなことを考えながら廊下を歩いていると、ふいにとんっと誰かに後ろからぶつかられて考え事をしていた私はそのはずみでその場にこける。
「っと、すまない。考え事をしていた」
「あ……」
差し出された手の先に見えた金髪。それは、私が探していた彼女で。その手を取って立ち上がれば、彼女は少しほっとしたような表情で微かに笑みを浮かべる。
「怪我はないか?」
「ないよ。ごめんね、私も考え事してたの」
「そうか…。なら良かった」
私も次から気を付けて歩く、そう言って去ろうとする彼女の腕を掴めば、彼女は驚いたように私を見る。
「ねぇ、名前教えて?このホテルで私ぐらいの年の人っていないから友達になりたいって思ってたの!」
「……確かに、見ないな」
「でしょ?だからお話しできたらって思ってたの」
自分の名を名乗って彼女の名前を尋ねれば、フッ、と笑ってメアリー、と答えた。言葉遣いに似あわないって言ったらおかしいかもしれないけれど、強めの口調で彼女は綺麗に笑みを浮かべる姿にギャップを感じた。
「メアリーは、外国に住んでるの?」
「あぁ。訳があって日本のホテルを転々としてるがな」
「私と一緒!私は夏休みの間だけだけれど、パパの仕事の都合でいろんなところを転々としてるの」
父親と一緒なのか、と少し驚いたようにメアリーに尋ねられて、コクリと頷く。一緒、と言っても仕事ばっかりで部屋に戻って来ても私が寝ていることの方が圧倒的に多いし、朝だって一言二言話したらもう仕事に行ってしまうのだけれど。
「…立ち話より、座って話せるところに移動しよう」
「いいの?」
「あぁ。ちょうど私も退屈していたところだ」
確かここは下にカフェがあっただろう。思い出すように彼女がそう言ったのを見て、頬を緩める。外国に住んでる友達なんて今までいなくて、ワクワクしながら前を歩く彼女を見た。
+ + +
「え、じゃあもうあんまり長くここにはいないの?」
「恐らくな。まだハッキリとは言えないが…」
「残念…。せっかく仲良くなれると思ったのに」
私もメアリーもここのカフェは使ったことがなくて知らなかったけれど、どうやらここのカフェはケーキバイキングを売りにしているらしい。どうせなら、とケーキバイキングにしてここぞとばかりに私はケーキを食べているけれど目の前に座るメアリーはよくそんなに食べられるな、とコーヒーを呑みながら話す。どうやら彼女はもうあまり長くここにいる予定は無いらしい。
「私もひと段落するまでは日本にいる予定だ。もしも加奈がホテルを転々としているならまた会えるだろう」
「ホントに?」
「あくまで可能性、だがな」
次会うときにまで、私も連絡先を交換しておけるようにしておこう。まるで私のお母さんのようにメアリーは微笑みながら言う。一応夏休みの間は私もホテルを転々としているだろうし、彼女も県外にいきなり行くことはほぼ無いと思う、と言ってくれた。それまでに絶対パパに携帯を買ってもらうことにしよう。
「私も、携帯使えるようにする」
「使えるのか?」
「機械苦手なわけじゃないから多分大丈夫!なんか、メアリー私のお母さんみたい」
面倒見のいいところとかが、そんな感じに見える。見た目以上に大人びているからなのだろうか。それとも、彼女の少しだけ男勝りな口調からなのか。私の言葉にメアリーはフッ、と口角を上げて私を見る。
「もしも、変な薬か何かで私が加奈の親ぐらいの年齢になったらどうする?」
「うーん…。意外にメアリー突拍子もないこと言うね」
「もしも、と言っただろう?」
「ん。でも、お母さんよりも友達、かな?あ、友達みたいなお母さんっていいかも」
「加奈が娘だったら、お転婆で手を焼きそうだな」
女の子らしくて、いいとは思うが。そんなことを言ったメアリーを見ながら私はケーキを口に運ぶ。あまり自分で言うのもアレだけれどそれなりに成績はいいし素行も悪くないつもりなんだけど。そうメアリーに言えばそういうことじゃない、と一蹴されてしまった。まぁ、メアリーみたいに大人びてるわけではないと思うけれど。
「まぁ、もしもの話だ。あまり気にしなくていい」
「そのもしもが起きても、友達?」
「あぁ。さすがに母親になるのは嫌がられそうだからな」
「ふふふっ、良かった!」
あまりに非現実的であり得ないことだけれど、メアリーがあまりにも真面目に話すから本当にそんなことが起きてしまいそうな気もする。けれど、友達でいられるならそれでいい気がした。とりあえずは、メアリーがこのホテルを去るまではアタックし続けることにしよう。
2016.10.14
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